naotanさんのレビュー
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旅猫リポート
有川浩 / 文藝春秋
号泣必至の猫小説
0
タイトルから、旅好きの猫があちこち放浪しながら、訪れた街を面白おかしく紹介していくエッセイ風の小説だと思っていました。
実際に旅していたのは、猫だけでなく、飼い主であるサトルと一緒の2人旅。
サト…ルはとある事情で猫が飼えなくなり、大切に育ててきた愛猫の、新しい飼い主を探しに行くのです。
ヤバイと思ったときにはもう遅く、旅の終着点まで涙腺が緩みっぱなしになりました。
すべての猫好きにおススメしたいハートフルな一冊。 続きを読む投稿日:2017.05.15
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読書について
ショーペンハウアー, 鈴木芳子 / 光文社古典新訳文庫
ショッキングな読書術
10
読書というと、何となく知的なイメージがあります。
もちろん、娯楽として読書を楽しむ人も多いけれども、履歴書に書かれる“無難な趣味ナンバー3”に読書が入ることは間違いありません。
しかし、仕事や家事の合…間をぬって、せっせと読書に励む私たちに、ショーペンハウアーは言うのです。本を読むことは何も考えていないことに等しいと。
「絶えず本を読んでいると、他人の考えがどんどん頭に流れ込んでくる。これは自分の頭で考える人にとってはマイナスにしかならない。」
えええええー!?
まるで今までの読書を否定されたような文章に自尊心を傷つけられながらも、それじゃあ何を読めばいいのか、どう読めばいいのか、ショーペンハウアー先生は教えてくれます。
これからの読書時間をより有意義にものにするために、読んでおきたい一冊。 続きを読む投稿日:2016.10.03
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野蛮な読書
平松洋子 / 集英社文庫
衣食「読」住
12
タイトルからイメージした言葉は乱読。手当たり次第に本を読みまくる話かと思いきや、そこには同じ本を何度も繰り返し、大切に読む人の姿がありました。
思わず「野蛮」の意味を調べると、「文化の開けていないこと…、教養のないこと」とあります。いや、むしろ著者の教養の高さがいやらしいほどにおってくるのですが……。
本書には、読書と同じくらい食べ物の話が出て来ます。
美味しいものを貪り食うように、面白い本を貪り読む。
食べなければ生きていけないように、書を読まないと死んでしまうんじゃないかと思わせるほど、本能の赴くままに読書する、その様子を「野蛮」と評したのかな、と理解しました。 続きを読む投稿日:2016.07.28
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テロ
フェルディナント・フォン・シーラッハ, 酒寄進一 / 東京創元社
決断の重み
9
ハイジャックされた旅客機を独断で撃ち落とした軍人は有罪か無罪か?
白熱教室のサンデル教授が好みそうなテーマで裁判の模様を伝える戯曲です。
安易に殺人=悪と結論付けたり、感情論に訴えて赦すのでもなく、最…終的な決断を読者に委ねる1冊。
テロは無縁なものと切り捨てずに、もし自分が当事者だったらどうするか?を考える機会になりました。 続きを読む投稿日:2016.07.19
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オーブランの少女
深緑野分 / 東京創元社
少女は生きる、したたかに。
11
美しい花々が咲き乱れる園、オーブランに集められた少女たちには、何一つ不自由のない暮らしが約束されています。ただひとつ、外の世界に出られないことを除いては。
カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』にも…似た雰囲気を持つ物語の中で、彼女たちは自分の将来に不安を覚え始めます。誰が何のためにこの楽園を作ったのか、果たして真相はーー?
表題作ほか、それぞれに異なる時代と場所を生きる少女たちの謎を描いた短編集。
どれも印象的で、一度読んだら忘れられない作品になりそう。 続きを読む投稿日:2016.05.31
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書店主フィクリーのものがたり
ガブリエル ゼヴィン, 小尾 芙佐 / 早川書房
好きな本に囲まれていればしあわせ?
14
読書好きなら一度は憧れる書店主。本書を手にする読者は、思い思いの“書店主像”を頭に思い描いてページをめくることと思います。そして私は、自分が想像していたのとは全く異なる主人公を目の当たりにして幻滅する…のでした。
フィクリーは高学歴を鼻にかけた男やもめ。好き嫌いが激しいために好みの本しか扱わず、遠路はるばる営業に来た出版社の担当をけんもほろろに付き返します。そんな彼の店から大切にしていた稀覯本が盗まれて……
「ザマアミロ」と私が思ったかどうかはさておき、盗まれた稀覯本と引き換えに店頭に捨て置かれた幼女が、フィクリーと島の人々との関係を徐々に変えて行きます。
人生は良いことばかりではなく、事件や悲しい出来事もあるのですが、最後はじぃんと心が温まります。
本と人との結びつきについて、考えるきっかけを与えてくれる一冊です。 続きを読む投稿日:2016.03.22