
宇宙はなぜこのような形なのか
NHK「コズミックフロント」制作班
角川EPUB選書
謎だらけで壮大な宇宙のロマン
空間的にも時間的にも人知を超える壮大なスケールを持つ宇宙。 宇宙に関して、現在の人類の科学では解明できていないことが多いのですが、謎だらけの宇宙に挑む科学者たちの執念を感じる研究活動について、 物理学「解き明かされる宇宙の仕組み」、 天文学「見えてきた宇宙の姿」、 生物学「生命から宇宙を見る」、 工学「ポスト・シャトル時代の宇宙開発」 の4つの切り口から解説しています。 前半の2章で宇宙の壮大さに触れ、後半の2章にて、宇宙には地球外生命体は必ずいるだろう、そして月面基地の実現はそう遠くないだろうと思わせられ、ロマンを感じました。
0投稿日: 2016.02.16
ヤマケイ文庫 くう・ねる・のぐそ
伊沢 正名
山と溪谷社
糞土師による屋外排泄の経典
糞土師を名乗る菌類写真家、伊沢正名氏による野糞の経典です。 師が如何にしてライフワークとしての野糞を確立し、野糞千日行という偉業を達成するまでに至ったかを、 反骨精神とユーモアに溢れる筆致で活き活きと綴っています。 その他、尻拭きの観点から野山の葉っぱを評価するコーナーや、 野糞が土に還される様子の調査レポートなど、 水洗便所が当たり前になってしまった現代日本人には想像もつかない視点から生まれる各コンテンツが秀逸です。 日本では野糞は軽犯罪法違反であり、軽々しく及ぶべき行為ではありませんが、 草深い茂みでついついしゃがんでみたくなってしまう程の魅力に溢れた名著だと思います。
2投稿日: 2016.01.18
終末のフール
伊坂幸太郎
集英社文庫
終活のツール
小惑星が3年後に衝突して人類滅亡必至という設定の世界で生きる人々を8つの短編によるオムニバス形式で描いています。 衝突がわかってからの混乱や、回避の可能性の模索が一段落した時期が舞台で、穏やかに終末に向かうような雰囲気が感じられ、宗教書のようなありがたさを醸しています。 希望を捨てない人や諦観してしまった人など、様々。 それぞれの生き様に共感したり、共感はしないけど気づきを得たり。 自分の人生の終わりが垣間見えた場合にどう考えて、行動するか。 そういう思考実験の一助となるでしょう。 ちなみに、著者の「フィッシュストーリー」を原作とする映画に、本作の設定が取り入れられ、映像化もされています。
1投稿日: 2016.01.08
プリズム
貫井徳郎
東京創元社
真実は当事者のみが知る
芥川龍之介「藪の中」的な話。 すっきりしない読後感が苦手な方にはオススメしません。
0投稿日: 2016.01.08
いざ志願! おひとりさま自衛隊
岡田真理
文春文庫
自衛隊の顔が見える一冊
一般的な日本人にとっては、ニュースでのお堅いトピックや、映画やドラマなどのフィクションでたまにお目にかかる程度の自衛隊。 これを読むまでは、自分の中で自衛隊は漠然とした存在でした。 本書では、 予備自衛官の訓練で陸上自衛隊に通った、当時20代の女性であった著者が、わかりやすい、くだけた文体で内側から見た自衛隊について語っております。 泥臭くきつそうな訓練の様子や、訓練中の生活の描写を通じて、中の人の考え方、顔や体温などが伝わってくるようで、 自分の中での自衛隊に対する認識が、より具体的になったのであります。 一般人にとって、存在の是非について議論が尽きない自衛隊のことを考えることはなかなかないでしょうが、お世話になりたくないけど、お世話になったら頼りになりそうな自衛隊のことを知って、少し考えてみるいい機会になる一冊です。
1投稿日: 2016.01.07
知っておきたい「酒」の世界史
宮崎正勝
角川ソフィア文庫
アルコール越しに覗く人類の歴史
微生物を利用した発酵飲料であり、腐敗に強い酒は、人類の貴重な飲料として生活に密着し、また酔いによって精神に働きかけることから祭祀や、古代の政治とも深い関係がありました。 本書では、 現代日本でも手に入る世界各地の多種多様な酒類について、それぞれがどこで生まれ、どのように広がり、発展したのか、 そして大航海時代やアメリカ独立戦争など人類の歴史との関わりについて知ることができます。 著者による、食品の歴史についての本も読みましたが、食べ物や酒という切り口から人類の歴史を見ることで、歴史に関する理解に深みが出ると思うので、酒好きな方だけでなく歴史好きな方にもオススメの一冊です。
4投稿日: 2016.01.07
忍者丹波大介
池波正太郎
新潮社
戦国時代を舞台にしたスパイ小説
豊臣秀吉の死後、関ヶ原の戦いへ向かう戦国末期を舞台に、主人公である凄腕の忍者が活躍する時代小説。 忍者ものとは言っても、派手な忍術が登場するわけではなく、対立する徳川勢、石田勢とも地道な潜伏活動による情報戦を繰り広げる様がメインで、あたかもスパイ小説のようなリアリティ溢れる緊迫感に満ちています。 この小説では西軍諸将が魅力的に描かれていますが、これの続編である「火の国の城」でも加藤清正が魅力的に描かれていることで評判なので、続けて読むことをオススメします。
0投稿日: 2014.04.28
ガリア戦記
カエサル,近山金次
岩波文庫
もぐらたたき戦記
共和制ローマ末期の天才的将軍、ユリウス・カエサルが元老院への報告書として書いたもの。 報告書のわりには読み物として成立しており、カエサルの文才が垣間見られますが、やはり原文ではないので魅力が直に伝わってくるわけではなく、また馴染みのない地名やら人名やらがたくさん出てくるので、前半から中盤にかけては読み進めるのは大変かもしれません。 が、後半、ウェルキンゲトリクスが登場してからは、好敵手に対してカエサルも気分がのったのか、文章に勢いがでてきます。 全編を通して、際限なく反乱を起こすガリア人の土地をローマ人達が根気よく統治しようとする様子が描かれ、頭が下がります。
0投稿日: 2013.10.31
