suzukiさんのレビュー
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世界は「使われなかった人生」であふれてる
沢木耕太郎 / 幻冬舎文庫
表現力にあふれている映画評
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ノンフィクション作家、沢木耕太郎氏が「暮しの手帖」に連載していた映画評コラムからよりすぐった30編。
「使われなかった人生」とは、自分にも有り得たかもしれないと思わせ、鑑賞中に感情移入したり、鑑賞後に…思いを馳せることができるような、映画で描かれる登場人物の生き様のことのようです。
扱う題材が幅広いのと、コラムを書いた時系列が前後しているためか、沢木氏の多彩で豊かな表現力に圧倒されました。
紹介されている映画があまり魅力的でなくても、沢木氏の巧みな文章のせいで興味を持ってしまったりします。
もし学生時代に戻ることができたら、本書をお手本に読書感想文などをしたためたいものであります。
続きを読む投稿日:2017.01.27
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世界でもっとも強力な9のアルゴリズム
ジョン・マコーミック, 長尾高弘 / 日経BP
IT社会は数学が支えている
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計算機科学の世界で根幹を成している8つのアルゴリズム+コンピュータでできないことの証明1件について、コンピュータになじみがない人でも理解しやすいような表現で解説している本です。
コンピュータ科学や、…その恩恵であるインターネット社会が数学に支えられていることがよくわかります。
いずれのアルゴリズムもシンプルで美しく、数学の良問の模範解答を読んでいるような爽快感がありますので、数学に興味がある方にもオススメです。 続きを読む投稿日:2016.03.30
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宇宙はなぜこのような形なのか
NHK「コズミックフロント」制作班 / 角川EPUB選書
謎だらけで壮大な宇宙のロマン
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空間的にも時間的にも人知を超える壮大なスケールを持つ宇宙。
宇宙に関して、現在の人類の科学では解明できていないことが多いのですが、謎だらけの宇宙に挑む科学者たちの執念を感じる研究活動について、
物理学…「解き明かされる宇宙の仕組み」、
天文学「見えてきた宇宙の姿」、
生物学「生命から宇宙を見る」、
工学「ポスト・シャトル時代の宇宙開発」
の4つの切り口から解説しています。
前半の2章で宇宙の壮大さに触れ、後半の2章にて、宇宙には地球外生命体は必ずいるだろう、そして月面基地の実現はそう遠くないだろうと思わせられ、ロマンを感じました。 続きを読む投稿日:2016.02.16
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ヤマケイ文庫 くう・ねる・のぐそ
伊沢 正名 / 山と溪谷社
糞土師による屋外排泄の経典
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糞土師を名乗る菌類写真家、伊沢正名氏による野糞の経典です。
師が如何にしてライフワークとしての野糞を確立し、野糞千日行という偉業を達成するまでに至ったかを、
反骨精神とユーモアに溢れる筆致で活き活き…と綴っています。
その他、尻拭きの観点から野山の葉っぱを評価するコーナーや、
野糞が土に還される様子の調査レポートなど、
水洗便所が当たり前になってしまった現代日本人には想像もつかない視点から生まれる各コンテンツが秀逸です。
日本では野糞は軽犯罪法違反であり、軽々しく及ぶべき行為ではありませんが、
草深い茂みでついついしゃがんでみたくなってしまう程の魅力に溢れた名著だと思います。 続きを読む投稿日:2016.01.18
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終末のフール
伊坂幸太郎 / 集英社文庫
終活のツール
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小惑星が3年後に衝突して人類滅亡必至という設定の世界で生きる人々を8つの短編によるオムニバス形式で描いています。
衝突がわかってからの混乱や、回避の可能性の模索が一段落した時期が舞台で、穏やかに終末に…向かうような雰囲気が感じられ、宗教書のようなありがたさを醸しています。
希望を捨てない人や諦観してしまった人など、様々。
それぞれの生き様に共感したり、共感はしないけど気づきを得たり。
自分の人生の終わりが垣間見えた場合にどう考えて、行動するか。
そういう思考実験の一助となるでしょう。
ちなみに、著者の「フィッシュストーリー」を原作とする映画に、本作の設定が取り入れられ、映像化もされています。 続きを読む投稿日:2016.01.08
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プリズム
貫井徳郎 / 東京創元社