夏星さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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夏への扉
ロバート・A・ハインライン, 福島正実 / ハヤカワ文庫SF
今でいうライトノベル的展開が微笑ましい
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●感想
SF好きな人にしたら「名作を現代エンタメ小説と一緒にするな」と怒られてしまうかもしれないが、やはり学生時代読んでいて親しみやすさを感じたのはその物語の展開にあった。
SFの古典的名著とか金字…塔とか超大作とか、読んだことのない人にとっては読むのに少しばかり勇気が必要な、そして実際、レビューの筆者も最初のページをめくるのにはなかなか勇気が必要だった本作。
だが、本作にそんなものは必要なかった。これから購入を検討されている方にはどうか肩肘なぞはらずに今月発売されたエンターテイメント小説を読む気分で読んでほしいと思う。 続きを読む投稿日:2016.10.15
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脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める
築山節 / NHK出版
一つ一つが納得できる「言われてみれば」の習慣
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何か頭がぼんやりする、言い間違いや物忘れが多い気がするといった人はこの本は役立つだろう。
紹介されている15の習慣は難しいものではなく簡単で「なるほど、これは頭の働きを良くしてくれそうだ」と思える。…15全てを習慣づける必要はなく二つ三つ試してみるだけでもかなり違うと思う。 続きを読む投稿日:2016.10.09
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うつを鍼灸で治す
齋藤剛康 / SBクリエイティブ
軽度うつをテーマとした一般の人向けの鍼灸本
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東洋医学の鍼とお灸での治療を分かりやすく簡単に紹介している。
東洋医学というと気の流れ、陰陽論、五行論など、漫画かゲームでしか聞かない単語や考え方があり、現代西洋医学に慣れ親しんだ現代日本人にはハー…ドルが高く感じるかもしれない。しかし、この本は東洋医学的な考え方を噛み砕いて紹介している。その上、鍼灸院の相談する時のアドバイス、セルフケアの方法なども載せられているので一般の人が東洋医学に触れる第一歩に適した本だと思う。
●購入を考えている方へ
東洋医学、特に鍼灸での経絡治療などは人によっては眉唾もののように感じる人もおられると思う。そのこと自体は個人的には構わないと考えている。むしろ常に苦言を呈されているほうが鍼灸学の研究発展に有益とすら思う。問題は逆に東洋医学にオリエンタルな神秘性を過剰に抱いている人だ。鍼やお灸は万能な霊薬などではなくできること、できないことがあることを頭に入れて読まれることをおすすめする。 続きを読む投稿日:2016.10.04
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虐殺器官
伊藤計劃 / 早川書房
読後には暗い高揚感、あるいは居心地の悪さを感じるだろう
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全編通して語られるのは重苦しくも目が離せない物語だ。
その為、サッパリとしたハリウッド映画のような小説を期待してこの本を読もうとすることはオススメしない。(このタイトルでそのような人はいないだろうが)…
●感想
本作は主人公の一人称視点で物語が進む。文体は海外文学を翻訳したような独特な雰囲気と日本的な言い回しが融合し不思議な味がある。社会科学系の単語や思想が練り込まれ一人称でありながら硬く難解な文体という印象をも与える。
読み終えて感じたのは「だから一人称であったのか」というものだった。主人公・米軍大尉クラヴィス・シェパードの思想や行動を米軍大尉クラヴィス・シェパードの目を通して読者は感じるからこそ、この小説はより際立ったものになった。
読んでいる間は作中の重いテーマをより直接体感させるからこその一人称だと考えていた。しかしそれだけではなかった。物語の主人公の思想や行動が必ずしも読者にとって「正しい」こととは限らない。
作中に虐殺の仕掛け人ジョン・ポールが「自分は正気だ」と述べ、後半で主人公もジョンと同じく「正気」であるように振る舞っている。だが一般的社会通念で彼らは「正気」と呼べただろうか。
彼らは重い決断を下し、それを自ら背負ったと語る。本当に彼らは正気だったのだろうか。驚くほど冷静に彼らは狂っていたように思えた。この小説を無理矢理一言で言うなら狂人の一人称小説だ。そして読者は「正気とは何か」「狂気とは何か」と自問させられてしまう。
他にも様々なテーマが織り込まれており、その一つ一つを抽出して自分なりの解答を考えるのが本作の楽しみでもある。
●購入を検討されている方へ
合う合わないはもちろんあるだろう。普段、こういった重たい作風を読まない人は胃もたれをおこさせることも理解している。だが、そこをあえて分かって胃もたれして欲しいと願う。それぐらい魅力的な作品だ。 続きを読む投稿日:2016.10.02
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仮面病棟
知念実希人 / 実業之日本社文庫
大人が読むにはつらい
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ミステリーって書くの難しいんだなぁ、と考えさせられる作品。
本作には大きく二つの謎がある。一つはあらすじにある通り「病院の秘密」。もう一つは犯人の正体などの「事件の真相」。
●病院の秘密
この…「病院の秘密」は秘密とも言えない。ニュースやサスペンスを少しでも見ていたら、読者はかなり前半部分で予想できてしまう。医師である主人公がすぐにそれに思い至らないのは違和感があった。その違和感がまず読者を醒めさせてしまう。その違和感を引きずったまま物語後半で秘密を知り、ようやく読者の喉に引っかかった小骨を外してくれる……とはならない。
●事件の真相
違和感はまだ続く。「病院の秘密」を予想すると大雑把にではあるが事件の背景にも見当がついてしまう。元々登場人物も少ないので読者は怪しい人物に思い至り、その言葉や行動に注目しているとその疑惑を確信へと変えてくれる。ご丁寧にその手伝いをしてくれるのが主人公である。主人公は病院の秘密やピエロの強盗犯の目的などかなり色々なことに疑問を投げかけて考え込むが、なぜか「事件の真相」部分のある事柄に対してだけは無条件で信じ込み疑問すら抱かない。読者にはむしろそれが際立って感じてしまう。
●総評
単に小説として読むなら最後まですんなり読める。文章もほんの少し気になる部分があったが全体として差し支えない。
ただ、本格ミステリーかと聞かれたら違うと答える。もちろん本作はミステリーとして形にはなっている。謎や真相といったものもある。しかし、肝心のミステリーとして重要な謎の部分が読者にはすぐに想像がついてしまった。普段、そんなにミステリーを読まないのに! 本作を先に読んだ知人に途中で予想を話したら「9割あってる」と言われて逆に驚いたことが本作で一番の驚きだった。
そんな読者が簡単に答えが分かってしまう謎の部分に主人公が自分で集めた状況証拠を前にして「どういうことなんだ」と思い悩んでいる姿には失望の色を隠せない。
また、感情描写がおざなりで主人公が不自然に患者の女性に入れ込んだり、なんら根拠のない自分に都合のいい妄想をしたりするのは失礼ながらお猿さんかな、と思った。ピエロの強盗犯が作中で「浅慮で異性に弱い」とされていたがこれは主人公の先生にもそのままあてはまる。
●購入を検討している方へ
色々と好き勝手な事を書いたが、息が詰まるほどの緊迫感や複雑な謎、重厚な人物背景といった小説に少し疲れた、たまには適度に軽い物をと考えている方やまったくミステリーを読んだことのない中高生の方は読んでもいいと思う。とにかく変に期待せずに「そんなに言うなら俺が良い所見つけてやるよ」といった気持ちで読んで「言う程ひどくなかったぞ」と思ってくれたらと思う。
続きを読む投稿日:2016.09.10
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世界の中心、針山さん
成田良悟, ヤスダスズヒト, エナミカツミ / 電撃文庫
この著者は群像劇がうまい
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書籍説明に針山さんのことが書かれているが彼は脇役にすぎない。モブの扱いであり申し訳程度に名前が出てくる程度だ。
短編自体はいろいろな話があり、ハッピーエンドもあれば救われない話もあり雑多な群像劇が好…きな人にはおすすめできる。 続きを読む投稿日:2016.07.22