レビューネーム未設定さんのレビュー
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58
このユーザーのレビュー
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愛されたがりの嘘つき
野原滋, 香林セージ / B-PRINCE文庫
愛されたがりの嘘つき
野原滋, 香林セージ
しっとり切ないストーリー
2
シリアスとコミカルが交差するいつもの独特な作風とは打って変わって、最初から最後まで驚くほどしっとり切ない話でした!
記憶喪失物です。いろんな作家さんが競っているこのテーマ。読み比べるのも楽しみの一…つです。
記憶を蘇らせようとする行為は、目の前の存在を否定することにもなってしまうのが辛いです。記憶喪失物は、そういう切なさが大きいですね。
一番のポイントは二人?の朝倉が互いに相手を嫉妬するところ。自分の知らない自分にジェラシーというのは、かなりのツボでした。
記憶喪失があったからこそ、朝倉も椎名も今までの関係を見つめなおし反省して、改めて相手への愛に向き合えることができたのが伝わってきて、とても甘くてやさしいエンディングでした。
こういう、キュンとくるストーリーも上手い作家さんだなと、改めて感じました。 続きを読む投稿日:2014.08.20
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明日屋商い繁盛 (1)
ARUKU / RuTiLe
予測不能の展開
2
絵柄で食わず嫌いだった作家さん。深く反省しています。
やっぱり絵柄は苦手だし、魑魅魍魎とした話は好物だけどあんまりBLぽくないし…と、気乗りせずに読み始めたんですが。
涙腺決壊でした。
1話完結のエ…ピソードがどれも切なくて、心の琴線に触れるものばかりでした。絵柄も読んでるうちに気にならないばかりか、他じゃだめかも、とまで気持ちが変化してしまいました。
とにかく、先が読めない!予測不能な展開で、話に引き込まれるどころか吸い込まれ。
曖昧な舞台設定、時代設定なんですよね。現代なのか一昔前なのか。
出てくる妖怪たちも怖い存在ではあるけれど、どこからどうして彼らが秋緒の元にやってくるのかが謎です。中にはかわいいのも混ざっていて、心なごみます。
そして、客は愛する人に心を残したままあの世に逝ってしまった人たちです。そのうちの「硯」「旗」「鞠」「刀」は、心に残る話でうるっとしてしまいました。
暗く沈む話ばかりじゃなくて、ユーモアも忘れていないところがいいです。
秋緒は辛さをまだ乗り越えていないようですが、明るさもあるし正直で相手が人ならざるものでも、何とか力になってあげようとする気持ちに温かさがあります。
そしてそんな秋緒を支える同居人?の自称からかさおばけのキッカ。謎の男なんですが、ちゃらくみせてしっかり秋緒を護っているんです。天宮と瓜二つってところも、ますます謎めいていて気になります。
予測不能で、ものすごく今後の展開に期待大。話の運び方が光ってる作家さんです。 続きを読む投稿日:2014.06.20
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今夜、きみと星につなごう
川琴ゆい華, 小鳩めばる / フルール文庫 ブルーライン
切なくて甘い恋人ごっこから始まる恋物語
2
いつも強烈にクセのあるキャラを登場させてくる作家さんですが、今回はなんと淫乱なコールボーイと偽って後に引けなくなる、健気でちょっと抜けてる総務課勤務のハネちゃんという男子が主人公です。このハネちゃんが…、とてもかわいかったです。なぜ、コールボーイ?しかもなぜ自らHが大好き設定にしてしまった?その嘘で完璧通せると思ってるようですが、どう見たって詰めが甘くてバレバレなところにクスッとさせられちゃいます。
結局ハネちゃんは嘘を嘘で塗り固めて、大宮に自分の恋心を告げることができなくなってしまいます。
まぁ、その嘘も大宮の会社での立場とか彼の身を案じてのことなので、読んでいて不思議と不快感がないんですよね。それだけ、ほんと一途なんです。
やっぱり受の性格のよさというのは大事です。どれだけ大宮のことが好きか読んでいてひしひしと伝わってきました。
大宮がとても明るくてやさしくて、ハネちゃんのことを大切にしていてキュンとさせられました。
あと、ハワイの話がよかったです。新婚旅行はハワイと言っていた大宮の言葉にものすごくショックを受けていましたからねw
とてもスイートな話でした。 続きを読む投稿日:2014.12.05
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人魚姫の弟
犬飼のの, 笠井あゆみ / フルール文庫 ブルーライン
BL童話
2
表題作は人魚姫、「輪」シリーズはヘンゼルとグレーテルを題材にしたBL童話でした。
「暴君竜」に引き続き笠井あゆみセンセとの最強タッグが、エロスばかりではなく童話らしいロマンティックな仕上がりにもなって…いてステキでした。
「輪」シリーズは、ユリアスとテオの美形兄弟が酷い継母から逃れようとして青鬚の悪魔が棲む家に迷い込み、おいしそうな食事をうっかり食べてしまい…というドキドキ展開。
ユリアスの思い込みゆえの片恋に切なくさせられ、フェルナンのストレートな愛情に嬉しくなります。
フェルナンはとても好感度高い攻でした。
世間知らずなテオの初恋も甘くてよかったです。貞操の危機にはハラハラさせられたけど、そこへグッドタイミングで現れる王子…ってのはまさにおとぎ話の醍醐味。
お兄ちゃんたちのベッドを修理しなくちゃ!と考えたテオがとってもかわいかったです…w
表題作は、甘い雰囲気の中にも人魚姫の原作の、あの切なさが再現されていて引き込まれました。
すれ違いや誤解があっても二人の気持ちがブレることがなかったのがすごくよかったです。
童話では王子様は他のお姫様のことを好きになってしまいますが、ちゃんと真実に気づいてほしかったな~と切実に思っていたので、この展開にはほっとさせられました。
とは言え、二人とも愛の代償としていろんな苦難を強いられそれらを乗り越えています。
そんな中、どんなに酷い悪意に妨げられてもリトに一途だった王子はカッコよかったです!
めでたしめでたしの結末には、現実主義的にはツッコミはいりそうですが、なにしろおとぎばなしなので!
エロ的には人魚Hが新鮮でした…妄想しまくり。 続きを読む投稿日:2014.12.05
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罪の蜜
丸木文華, 笠井あゆみ / 講談社X文庫
ヤンデレの極み
2
丸木センセなのに、近親モノでも3Pでもないから「生温い?」と思ったらそうでもありません。相変わらずのダークでブラックな世界。病んでます…
舞台は美大系の予備校。天性の画才を持つ高校生の水谷×芸大を目…指し挫折したバイト講師の雄介。天才×凡人。
見てくれは美人で人当たりもいい雄介ですが、実はかなり歪んでます。芸術一家の中で唯一落ちこぼれ、自信を失いコンプレックスを抱き、絵を描くことも苦痛な日々を送っています。しかも、天賦の画才を羨ましく思い嫉妬している水谷に想われていることを知り、そのことに快感を感じて利用し鬱憤を晴らしているようなかなりのビッチ。自分が挫折した芸大に楽勝で進学し、絵が売れて超有名になってもまだ水谷は「好き」と言ってなついてくるのを、突き放さないけど最後まではやらせない。
そんな雄介が、いつどんな形で男としての矜持を捨てて「受」の立場に堕ちていくのかってことに、興味津々Sゴコロを刺激されました。
水谷が男っぽいけど健気ですごい年下わんこ攻なんです。なんですが!!
クライムサスペンス的な味付けで作品の奥行きがふかーく、おもーくなっていて読み応え満点になっています。終盤の大どんでん返しに衝撃。さすが、面白いです。
ストーリーは真っ黒なのにホワイトハートだし、イラストもご本人じゃなかったのでいろいろ気になったけど読後は期待以上の満足感。
Hがちょっと省エネ気味でねちっこいのが少なかったのが残念。ただ、少量でも相変わらず粘着系エロの質は保っています。煽られる喘ぎ声も健在。あれほど拒絶していた受がいやらしく豹変するのがツボ。もっとそこを読みたかった。 続きを読む投稿日:2014.07.09
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水に眠る恋
可南さらさ, 円陣闇丸 / リンクスロマンス
水に眠る恋
可南さらさ, 円陣闇丸
ボロ泣き…
2
何度読み返しても、涙腺にくる再会ラブストーリー。高校の同級生であり当時恋心を抱いていた二人が、受の裏切りで離別、誤解の解けぬまま9年後に偶然再会して、またすれ違うという、痛くてせつない話です。
泣ける…シーンが多すぎました。その中でも一番大泣きした箇所は、多分みんなと一緒のところだと思います…
男同士の恋に悩み、家族の反対に合い、つらい試練の後運命の恋をしっかりと受け止める、そういう根底にあってほしい葛藤する部分がすべてそろっているんですよね…苦しみ悩み、本当にこの恋でいいのかと、自身に問いかけて確信する過程がきちんと丁寧に描かれています。そして、絡みの甘さはバツグン。萌えます。
円陣闇丸センセの絵がぴったりはまっていて、これがまた素晴らしいです。
続きを読む投稿日:2013.12.13