わたあめさんのレビュー
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「かわいい」論
四方田犬彦 / ちくま新書
小さいけれど、力は抜群
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日本のkawaii文化が注目される中、日本人にとっての「かわいい」とは何かを追究したもの。
二年ほど前、渋谷の山種美術館で若冲展が開催されたおり、その告知ポスターには〈kawaii〉の文字があり…ました。若冲は自身が持つその独特な世界観から、自分の絵が評価されるのは千年後であると周囲に言っていたと伝えられる人物。色鮮やかで、どこかポップさを感じる彼の芸術は、たしかに〈kawaii〉。美術作品のそういった評価を全面的に押し出すのは、この時代のある一定層にそれがきちんと通じるからでしょう。面白いことだと思います。
個人的に最も印象に残った部分は、ポケットモンスターに登場する人気キャラクター、ピカチュウがなぜかわいいと評価されるのか、というところ。日本が何によって近代国家となったかという問いをもって、筆者は以下のようなことを述べています。
日本の産業は自動車や電気製品といった物を構成する小さな部品で世界へ進出した。つまり、見た目は小さいけれど、その物体が持つ力はとてつもないものを秘めている、というのが日本の技術の一端。ピカチュウもそれと同じ。
小さくてかわいい、けど、戦うととてもつよい!
―――いわゆるギャップ萌えというものでしょうか。見た目によらず、といった、人々の想像を裏切る展開が、日本人の思う〈かわいい〉のひとつである……というのが筆者の意見。なるほど、一理あるかもと私は思いました。
kawaiiで溢れる日本国。その国に生きるものとして、日々多用する言葉でありながら、実はとってもとらえ難いのが〈かわいい〉という言葉。内容に賛否あれど、参考として一読してみても面白いかと思います。 続きを読む投稿日:2016.08.10
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星の王子さま
サンテグジュペリ, 小島俊明 / 中公文庫
何をもって大人なのか
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幼い頃、星の王子様は実在の人物だと思っていた。
あれから数年たってもう一度読み直し、やはり王子様は実在の人物でいいのだと思った。星空を見上げて、そのどこかに王子様がいると思ったら…どこかに、まだ見…ぬ美しい花が咲いていると思ったら、私にとって、頭上の星はただの風景ではなくなる。不毛かもしれないけど、そういうことが大切なことなんだよ、と王子様は言っている気がします。
大人になって大切なことが見えなくなるかと言えば、決してそんなことはないと思います。同様に、子どもだから見えない、ということもないでしょう。
何をもって大人とするのか、何をもって子どもとするのか。もしかすれば、本当はそんな定義の垣根なんてなくて……そういった思考は、効率を求める社会に生きるうち、私たちが無意識に作り上げてしまったのかもしれません。
『星の王子様』は一般的に大人への批判書だと言われていますが、それだけでなく、これを読めば、誰だって幼い頃の自分に戻れるんだよ、という、振り返りの文学だとも思います。子どもだからこう、大人だからこう、といった考え自体、王子様からすればお笑い種なのかもしれません。 続きを読む投稿日:2016.08.10