
緋色の十字章
マーティン・ウォーカー,山田久美子
東京創元社
フランスの片田舎で
事件云々よりもブルーノの生活描写、特に家を作っていく過程が好き。 地域に馴染んで、友人・知人を増やし、ちょっと法の解釈を変えて綿々と続く歴史の一部となっていく。 事件は陰惨だけど、それを覆い隠す生活がそこにある。
0投稿日: 2014.05.02
無人島に生きる十六人
須川邦彦
青空文庫
こんな遭難あっていいの?
作者が商船学校の先生から聞いたという体験談を書いた小説。 いや、もうこんなに爽やかな遭難小説は初めて読んだ。 遭難した16人がみな前向きで、争いもなく…いやむしろ結束して挙句遭難中なのに勉学すらも疎かにしないという、なにその古き良き日本人の美徳。 まるで修身小説(そんなジャンルがあるのかは知らないけど)のようだった。 いや、むしろおとぎ話。 読み易くて、分かりやすいので、小学生や中学生にもオススメかと。
3投稿日: 2013.12.23
ミステリガール
デイヴィッド・ゴードン,青木千鶴
ハヤカワ・ミステリ
映画好きなら分かるのかな?
ぼくが探偵助手となって最初の殺人事件を解決したのは、妻に捨てられて、いくらか正気を失った直後のことだった。」 この書き出しの一文がこの小説のすべてを表していると言っても過言ではない。かな? 結局のところ、デイヴィッド・ゴードンはおたくなんだな。 映画は香港電影以外サッパリわかんないんだよね。 なのでキチンとした評価はできないんだ。スマンスマン。 本筋はよくあるパターンだと思うので、とりあえず真ん中で。
0投稿日: 2013.12.23
二流小説家
デイヴィッド・ゴードン,青木千鶴
ハヤカワ・ミステリ文庫
何かを作る人間の矜持
いくつものペンネームを駆使してミステリ、SF、ヴァンパイア小説を手がける二流作家・ハリー。 連続猟奇殺人犯のためにポルノを書くのと引き換えに告白本の執筆を依頼されるのだが…。 二重三重に捻られたプロット。魅力的な登場人物。 殺人犯の過去の事件を浚うのかと思えば、新たな事件が発生し予想もつかない展開になっていく。 事件に振り回されつつ、小説家としての自分を内省するハリーに、時折挿入される彼の作品の一節。 これがまたよく出来ていて、続きが読みたい!なんて思ってしまう。 生きていくために心ならないものも書かなくてはならない二流小説家に、自分を重ねてみたりもした。 ちょうどそんな心境だっただけに、最後のハリーの決意に妙に胸を打たれた。 そんな個人的事情はさておいても、事件自体は悲惨ではあるのだけどとても面白い作品で、邦題の付け方もいいなと思った。
2投稿日: 2013.12.23
料理で読むミステリー 生活人新書セレクション
貝谷郁子
NHK出版
料理から入るミステリの世界の手引書
う〜ん。正直微妙だった。 取り上げている料理が「その作品でそれなの?」って感じで…。 実際に小説に詳しいレシピの載っている料理をいくつか混ぜてもよかったんじゃないかとも思う。 同じ料理に対する登場人物たちの食べ方、考え方の違いから性格、捜査、推理法に言及するなんてのを期待してたんだけどな。 でも登場する料理はみなおいしそうだし、貝谷さんのレシピが付いているのは親切。 この本にある料理を作って食べながら小説の世界に思いを馳せるそんな楽しみのための1冊。
0投稿日: 2013.12.23
特捜部Q―キジ殺し―
ユッシ・エーズラ・オールスン,吉田薫,福原美穂子
ハヤカワ・ミステリ文庫
重いけれど…」
未解決の重大事件を扱う特捜部Qの今回のターゲットは20年前に殴り殺された10代の兄妹の事件。 すでに自首してきた犯人が服役しているが、そこに納得できないものを感じたカールは上層部の妨害をものともせず捜査を続けるが…。 2作目も非常に面白かった。 暴力的な事件とそれにまつわる悲惨なエピソードをQのメンバーのやり取りが巧く緩和してくれている。 テーマは重いのに、ページを捲るのが嫌にならない。 作者の力量なんだろうなあと思う。 前作もそうだったけれど、今作にも非常に魅力的な女性が登場している。 暴力に身を委ねた果てにわが身に降りかかった厄災を、なお暴力で購おうとするキミーはやるせなくも惹きつけられてしまう。 そして彼女の復讐が果たされることをいつしか願っている自分に気づく。 一片の救いがあるのも前作と同じではあるけれど、内容が内容だけにそれがまた胸に突き刺さる。 いいなあ。 ああ、早く3作目が読みたい。
1投稿日: 2013.12.23
特捜部Q―檻の中の女―
ユッシ・エーズラ・オールスン,吉田奈保子
ハヤカワ・ミステリ文庫
未解決事件を追うコンビにハラハラ
殺人事件の捜査中に同僚を撃った犯人をみすみす取り逃がしてしまい自暴自棄になっていたカール警部補をもてあました上司は、未解決の重大事件を扱う特捜部Qを新設しその統率を彼に命じる。 部下は謎のシリア人・アサド一人。 二人が着手したのは女性議員の失踪事件。 やられた。 面白かった。 誘拐された女性議員の描写と現在の捜査過程が交互に進み、カールとアサドはその救出に間に合うのか、議員の孤独な戦いはどうなるのか、緊迫感十分だった。 自責の念に絶えず駆られているカールと対を成すようなアサドの明るさ。 この二人のバランスが非常に心地よく、はらはらするだけでない作品になっている。 犯人の目星は途中でついてしまうものの、これはそこを読むミステリではないので、じっくりとその先も楽しめる。 むしろそこから先の展開もいい。 実は意外と地味な捜査が続く警察小説でもあったりするんだけど、そういう印象を抱かせないほど巧いつくりになっている。 個人的にはデンマークの名前ってスウェーデンやアイルランドものほど覚えにくくなくて、登場人物紹介を一度も見返すことなくさくさく読めた。 ポケミスで450ページがあっという間だったよ。
1投稿日: 2013.12.23
中国黄金殺人事件
ファン・フーリック,大室幹雄
グーテンベルク21
ディー判事シリーズ第一作。
マー・ロンとタオ・ガン二人がディー判事の部下になるところから始まる。 そしてそこには遥か先に回収される伏線が…。 時代の中国の風俗が描かれていて興味深いのだけど、惜しむらくは作者手ずからのイラストが未収録なこと。 電書はこういうの確認できないから、読んだあとでがっかりきたよ。
1投稿日: 2013.12.23
中国湖水殺人事件
ファン・フーリック,大室幹雄
グーテンベルク21
タオ・ガン登場の巻
ディー判事一行が招かれた宴席で一人の娼妓が謎の言葉を残して殺された。 ディー判事は捜査を始めるが、更なる事件が起き…。 事件がいくつも(大体3件ぐらい)平行して起こるのがこのシリーズのパターン。大きな軸は街で密かに進行している重大な陰謀。 コレがそれぞれの事件とどう絡んでいくのか、あるいは絡まないのか。 ディー判事とマー・ロンとチャイ・タイの活躍にわくわく。 この話では後の重要な部下のひとりとなるタオ・ガンが初登場する。 いかにもなキャラクタたちなんだけど、いいよ。 あと月仙、かっこいい!
0投稿日: 2013.12.23
冬のフロスト 下
R・D・ウィングフィールド,芹澤恵
東京創元社
安定の面白さ
フロストが使えない部下に窮地に陥れられながらも彼を必死ですくい上げようとしているところがいい。 フロストも丸くなったものだ。 なんだかんだ言って捜査熱心だし部下思いだし上に諂わないし、いいやつなんだよな、フロスト。 下品だけどw しかしこれで残り一作か。 早く読みたいような、ずっと待っていたいような…。
0投稿日: 2013.12.23
