
波のうえの魔術師
石田衣良
文春文庫
【ネタバレ含】事実は小説より・・ではないが
元早大生が証券取引法(現金融商品取引法)違反で捕まったというニュースを見てこの本を読んだことを思い出した。「マネーゲーム愛好会」なる投資サークルに所属していた彼らは在学中から虚偽の買い注文等で相場操縦をしていたらしい。小説内では取り付け騒ぎを起こして銀行株を引き下げて風説の流布で逮捕だった。2004年刊行のこの本も彼らは読んだことあるんだろうなと思うとなんだか不思議な気持ちになった。
0投稿日: 2014.10.27
不自由な心
白石一文
角川文庫
らしい作品
長編の方が好き。「小さい悪を殊更に断罪して巨悪をのさばらせてるのが現代社会だ」という様な凄く良いセリフが、もちろんそれだけ聞いたら良いセリフなんだけど、実は不倫がバレて、会社の先輩でもある嫁の兄貴にキレられた末に逆ギレした時のセリフだったりして人生の悲哀を感じる。笑
0投稿日: 2014.10.27
バカ親って言うな! モンスターペアレントの謎
尾木直樹
角川oneテーマ21
教員採用試験倍率の下降に驚いた
日本の社会問題についてプレゼンしなければならず、クラスメイトの半分は父、もしくは母親という状況から、聴衆ウケをあざとく狙いモンスターペアレントというテーマを選んだので尾木ママに頼りました。色々震えるエピソード満載でしたが、教員採用試験倍率(全国平均)が2000年の12.5倍から2006年の4.2倍という下落率に一番驚いたかも。。調べてみると2014年度は4.3倍と底を打ったかに見えるが、第2次ベビーブームに合わせ大量採用された50代の教員の退職により、新規採用需要は増える傾向とのこと。今後もわからんすね。
0投稿日: 2014.10.27
桐島、部活やめるってよ
朝井リョウ
集英社文庫
共同体の中での目に見えない、というか口には出さない上下
何者でもないから何者かに成りたいモラトリアムの話は、既に何者かだとあやふやに定義付けされてる大人たちを常に惹きつけるものですね。野球部の菊池宏樹の回が良かった。いいものをいいと、悪いものを悪いと、言えなくさせる共同体の空気感って、あるよね。その共同体の中で「下」に位置する人目線の話(映画部の話とか、片思いしてる女子の話とか)って学園ものにはちょっとありきたりな感じがして面白くなかったけど、逆に「上」に位置してる人間が抱える他者に対する羨望やもどかしさを書いたのは少なくて、面白いなと。
0投稿日: 2014.10.02
シンメトリー
誉田哲也
光文社文庫
ポップな姫川像
姫川シリーズの短編集。元々テンポ良く読めるシリーズでさらに短編集なのですぐ読んでしまった。「刑事である自分が、殺人を犯す可能性。そんなことは考えるまでもない、ありだ。」と、葛藤と狂気を内在させながらポップに仕上げられてる姫川像がファンを沢山作っているのだろうなぁと。読んだことない人はまずストロベリーナイトをー。いつか菊田はザコキャラから脱却するのだろうか。。。
1投稿日: 2014.09.23
もういちど生まれる
朝井リョウ
幻冬舎文庫
「若者の代弁者」たらしめてるもの
桐島と何者に続き3作目。他2作と同様に、登場する若者たちの、諦めとも呼べる冷静な(残酷な)観察眼がこの人を「若者の代弁者」たらしめてるのかなと思う。世の中と自分を観察する視点は、賢さからくるのだろうけれど正確で無慈悲で、自分たちを自分たちで生きづらくさせてるかの様に感じられる。だけど最後に、前時代的と言ってもいいかもしれない「情熱」みたいなものがにじみ出てくるのがこの人の本の魅力だと思った。年齢関係なくおすすめしたいです。あとジョージ朝倉のマンガは確かに面白い(文中に2回ほど出てきたので)。
0投稿日: 2014.09.23
それもまたちいさな光
角田光代
文春文庫
ラジオ
ラジオがキーの話。なんでもないことをだらだらと話すラジオを、大切な人や友人や、知らないタクシーの運転手なんかも聞いてたりして、どこかで繋がっていることに嬉しくなるという感覚が描かれる。なんだかほんわかして全体としていい話なんだけど、出てくる恋愛沙汰はこれぞ女性作家という感じで、どろどろしていて、反社会的で、救いがなくて、達観した諦観があって、とてもいい。
0投稿日: 2014.09.12
空中庭園
角田光代
文春文庫
正しさ
それぞれの立場から一つの家族が描かれる物語。立場が違えば物の捉え方って違うもんで、正しさってきっと結局、無いのだと思う。 そして多分年を取れば取るほど自分以外の正しさに気づいてしまうことが増えてしんどくなってくる。 そんな世の常。抗うためには自分を貫くことが大事なのではと思う。たとえ勘違いでもね。巻き込んでなんとなく正解にしてしまえ。 旅どきに読むにはトーンが暗いのでオススメしません。
0投稿日: 2014.09.12
対岸の彼女
角田光代
文春文庫
秀逸なタイトル
視界にあって、意識して憧れてしまうけどどこまでもたどり着けない様な遠さでもあり、お互いが存在を認め合ってコミュニケートさえすれば次の橋で会える気がする近さでもある。自分が向かってたはず、憧れてたはずのあり方も行く先もいつのまにかわからなくなっていつまでも行き着くことができないってゆーストーリーの本筋と、読者が感じるだろうもどかしさや悲哀を端的に表す対岸という秀逸なタイトル。素敵。女性主人公は嫌いじゃない。地の文の分析的語り口調が自然で、かっこつけとか変な諦観が無い様に感じられるので。おすすめ。
1投稿日: 2014.09.12
春を背負って
笹本稜平
文春文庫
幸福を測る万人共通の物差し
短編6編から成る山小屋経営者、亨の話。最後のゴロさんの言葉がいい。「幸福を測る万人共通の物差しなんてないー。いくら容れ物が立派でも、中身がすかすかじゃどうしようもない。ところが世の中には、人から幸せそうに見られることが幸せだと勘違いしてるのが大勢いるんだよ。」人の一面を切り取って勝ち負けを作ろうとするすべての人に。
1投稿日: 2014.09.12
