hazu-haya-yuさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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えんじ色心中
真梨幸子 / 講談社文庫
手強い作家さん
15
真梨さんの作品を読むときは心してかかろう。
そう思わせるほど「フジコ」は衝撃的で、それから3年やっと辿り着いた3冊目がこのタイトル。
「フジコ」のようにドロドロの激情ではなく「えんじ色」はどちらかと…いうと沈殿、閉塞感。
こちらの方がよりダークな感じがしました。
話の発端となるのが16年ほど前に起こった「西池袋事件」、それが起きる以前と以後の現在に、
「僕」という小学生と、生活に窮するライターの「久保」、それに事件の公判の様子が挿まれて
物語はすすんでいきます。
プロローグがある人物の生い立ちの語りから入るので、それ以後二人の登場がどのように繫がって
いくのかが読み応え。
受験・家庭内暴力・派遣労働、崩壊していく人間関係に織り交ぜた宗教色が更に物語をリアリスティックに
している。宗教に傾倒する人間の側面が救いになっていない事が皮肉でもあり、
話に奥行きを出していたようにも感じる。
ほんとに手強い。
けれど読み終わったあとの、心の塵が洗い流されたような不思議な気分。何だろう。
やはり脱帽です。
続きを読む投稿日:2015.09.08
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伝説のファンドマネージャーが教える株の公式
林則行 / ダイヤモンド社
もて余した感のあと
5
整然と展開されているのですが、私の頭がついていききれませんでした。
最後は持て余した感じの読了。公式に代入する…が入っていききれなかったです。
読み終わったら、株式相場の乱高下。
それでもどこかで再…読の機会を持ちたいと思います。
続きを読む投稿日:2015.09.03
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顔のない男
北森鴻 / 文春文庫
してやられた!!
15
「顔のない男」というタイトルに惹かれて読んでみたら、香菜里屋や蓮杖那智シリーズとは趣の違う刑事もの。
それも息の合わないコンビなものだから、捜査を進めていく中での「何かが違う」「見落としてる」という台…詞に、読み手のこちらも
「えっ…もうトリックにかかったの?」「どこが、どこから」と行きつ戻りつ反芻しながら、二人の後を追いかけて読むはめに。やられました!
「顔のない男」…想像を掻き立てるタイトル通りの面白さ。
なので、ストーリーには触れないでおきます。
北森さんの作品は読破道半ばですが今のところこれが一番好きです。 続きを読む投稿日:2015.09.03
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日本のいちばん長い日(決定版) 運命の八月十五日
半藤一利 / 文藝春秋
ずっと残っていってほしい
15
既にいまから50年前に書かれていたことに驚きです。
聞き取りした話などは想像を交えて描写されているのでしょうが、胸に迫ってくるものがありました。
戦争を起こした主体者からの終戦という目線で、国民が草を…食むという角度からではありませんでした、それがなおさら戦争の怖さを感じさせました。当時はまだまだ戦争体験を語らない(語れない)戦争経験者が多かったと聞いていましたが、本作が今後も読み継がれていくことを願ってやみません。
続きを読む投稿日:2015.09.01
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閉鎖病棟
帚木蓬生 / 新潮文庫
心揺さぶられる
14
九州のとある精神科病院に治療入院している患者さんたちのお話です。
恥ずかしい話ですが「閉鎖病棟」という言葉と意味を初めて知りました。
入院形態にパターンがある事やどのような症状の人が入院するのかも知…りました。
著者が精神科医であると知り、裏打ちされたものがあるからこその物語の厚みだと感じました。
それぞれが重い過去を背負い、家族から疎まれ拒まれても明るく生きようとしている所で、事件は起きます。痛々しさとやさしさが織り合わされ章ごとに淡々と話は進みます。
私たちから見れば考えられない非日常がそこにありますが、そこで己の罪と生き方を問うていく文章に心を揺さぶられました。
生れ落ちること、生きること、死ぬこと、自由である事を考えさせられる話でした。
★5でも足りない読後感。
多くの方に読んでほしい1冊です。
続きを読む投稿日:2015.06.22
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南朝迷路
高橋克彦 / 文春文庫
複数のひも解き方
11
後醍醐天皇の流刑と隠し財宝に絡ませた歴史、偽装、過疎化というテーマが登場人物たちのキャラクターにより、読み応えのある展開になっていたと思います。
過疎について語る若者の言葉は今の時代でも言えてます。…言葉が地方再生に代わっただけかもしれませんね。
後醍醐天皇には権力闘争に敗れて島流しになった、くらいの知識しかなかったので逆に興味をそそられました。
捉え方で同じ事実が180度変わる…という一文が作中にありましたが、本当にそうだなあと感じています。何でもそうでしょうけど一面だけで捉えてはだめですね。
今までの歴史ミステリーとはひと味違った面白さでした。
続きを読む投稿日:2015.06.17