クラフト★ビア★マンさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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寄生獣(3)
岩明均 / アフタヌーン
悲しすぎるバトル
2
こんなに悲しいバトルは他に見たことがない。
心理学のテーマで、子供が親から自立する際に、親を殺す夢を見るというのがあるが、
主人公新一は高1にして、現実にそれをせざるを得ない状況に追い込まれる。
寄…生獣のテーマの一つにある「心の穴」がぽっかり空く、あまりにもつらい描写。
クライマックスの見開きのところは、思わず声が出る。
何年たっても忘れられない。頭に張り付いて離れないです。 続きを読む投稿日:2014.02.19
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3月のライオン 5巻
羽海野チカ / ヤングアニマル
勝負の世界よりも残酷な現実
8
厳しい棋士の世界と、あたたかい川本家とのやりとりのバランスで成り立っていたと思っていた物語の構造が大きく崩れる第 5巻。
ある意味で、ルールが明確な勝負の世界よりも残酷で救いのない”いじめ”を正面か…ら描いており、胸が張り裂けそうになります。
確かだと思っていたものが足元から崩れていくのに、対処療法しか見つからずどんどん物事が悪化していく様子は、絶望的な気分になり、本当につらい。
羽海野チカさんの作品は本作が初めてで、「なんか少女マンガみたいなかわいらしい絵を書く人」というくらいの印象だったのですが(失礼)、
本巻を読んで私は白旗を上げました。
すさまじい本気がこもった作品です。この作家は、本物です。 続きを読む投稿日:2014.02.10
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プラネテス(1)
幸村誠 / モーニング
驚異の画力で迫る傑作SF
4
デビュー作とは思えない驚異の画力。
フィクションであるがゆえに、むしろSFに必要なリアリティが圧倒的で、ぐいぐいと物語に引き込まれる。
「かっこいいエリート宇宙飛行士」の話ではなくて、デブリ(宇宙ゴミ…)回収業者の一社員という設定の主人公「ハチマキ」が宇宙を舞台に夢に向かって突き進み、苦しみながら前に進んでいく様は、自分と重なって、読む手が止まらなくなる。 続きを読む投稿日:2013.12.16
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監獄学園(1)
平本アキラ / ヤングマガジン
確かな画力に吹き出す青春エロバカ真剣コメディ
1
タイトルと書影、ヤンマガ連載ということもあり、なんとなくバカでエッチなよくあるマンガだと思ってました。
その割に各地で評判がよく、絵もうまそうだったので試しに読んでみると、一気に最新刊まで読みつくして…しまった。
どこかで見たことある男子向けコミックの定番の「女子風呂のぞき」から始まったかと思えば、いきなり監獄に入れられ、女王様キャラの裏生徒会副会長に踏みつけられることに快感を覚えたり、偶然女子のトイレシーンを見てしまったりと、1巻目だけでもいろいろ出てきて飽きさせない。
エッチな描写は(あまり)下品さがなくて、なんというか、女子が見ても笑える感じ。
ただのバカなコメディかと思いきや、脱獄に至るまでの状況の変化に臨機応変に対応していく(そこそこ)複雑なパズル的なストーリー、男同士の友情や裏切り、結束していく姿など、青春ものの描写、男という生き物のばかばかしいまでの性欲に対するサガ、それにとまどう女子の過剰反応という性についてのもやっとした箇所を高度な笑いに高めていく(そしてちゃんとエロい)技術力と、実はマンガとしての総合力はかなり高い。
ローファイなゆるいヘタウマ系のギャグ漫画とは一線を画した、確かな画力のせいで思わず吹き出してしまうところ多数。
学長のダンディさと南米美女の尻にかける情熱のギャップ、放置プレイに極度に弱いアンドレのドM、オタクなのによく考えるとかなり行動力のあるガクトなど、巻を重ねるごとに魅力を増すキャラにも目が離せなくなってきた。
案外、数年後でもギャグ漫画の名作として語られているのではないかなぁ。
稲中が好きな人は間違いなく笑えます。 続きを読む投稿日:2013.11.25
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アドルフに告ぐ(1)
手塚治虫 / 手塚プロダクション
手塚治虫後期、社会派の最高傑作
4
手塚治虫の代表作というと火の鳥や鉄腕アトム、ブラックジャックなどがまずイメージされるのが一般的だが、本作もそれに負けない傑作。
コミック誌でない週刊文春に連載されていたこともあり、社会派な作品で、時代…のうねり、人生のままならなさ、複雑でパズルのように展開される人間関係と、大人を唸らせる手塚治虫後期の真骨頂が味わえる。
70年代の作品の奇子、きりひと賛歌などのエロ・グロの濃いものとは異なり、三人の主人公による卓越したストーリーテリングを中心とした作風は、浦沢直樹の「モンスター」を思わせ、先を読ませない。
火の鳥はSF、ファンタジー、歴史ものの要素が濃いが、こちらは現代を舞台にした社会派作品のなかでは手塚治虫の最高傑作だと思う。
しっかりしたコミックを読みたい方はぜひ。間違いないです。
続きを読む投稿日:2013.11.09
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七つの大罪(4)
鈴木央 / 週刊少年マガジン
アクションアクションアクション!からのラブ(まさかの)
3
七つの大罪も4巻目、ということでこれまでのパターンとは違い、明らかに主人公たちより強い敵「聖騎士ギーラ」が初めて出てきます。
2巻~3巻の敵が、卑劣な手やトリックで攻めてきたのに対して、戦闘で純粋に強…いガチなタイプ。
しかも、主人公たちの技を知り尽くしていて、明らかに劣勢。
圧倒的な強さを誇る聖騎士ギーラの前に、どうなるやら・・・
というアクション盛りだくさん、驚きも盛りだくさん、な巻で相変わらずハイテンションで面白いですが、
本巻は、巻末の番外編にやられました。
まさかの一番縁のなさそうな「強欲の罪のバン」のピュアなラブストーリー。
短編だけど大事な部分がしっかり書かれていて感情移入しました。
しかも巻の前半で「?」だったセリフの回答になってる。
やっぱり鈴木央(なかば)というこの漫画家、マンガ超うまいです。 続きを読む投稿日:2013.10.30