レビューネーム未設定さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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黒博物館 スプリンガルド
藤田和日郎 / モーニング
めちゃくちゃおもしろい
4
作者の鬼才っぷりがあふれる1冊。
18世紀のイギリスを舞台に、怪人「バネ足ジャック」の謎とそれにまつわる人々のお話。
登場人物の造形もいいし、絵も相変わらず大迫力。
(1)となっていますが、この巻だけ…で物語が完結するので読後感もスッキリ。
続きを切望します。
続きを読む投稿日:2014.08.29
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嘘つきアーニャの真っ赤な真実
米原万里 / 角川文庫
ノンフィクションでありながら良くできた小説を読んでいるような感覚
13
ロシア語の通訳者として活躍し、少女時代をプラハで過ごした著者が大人になって少女時代の友人に会いに行くというストーリー。
と書くとほのぼのした話のようだが、政権を追われた為政者の家族や、空爆下のボスニア…に暮らすかつての大統領の娘など、かなり激動の人生を歩んでいるクラスメイトをテレビ局の力によってようやく探し当てるのだ。
東欧という日頃なじみのない場所、様々な国から集まったクラスメイトの豊かな個性、そしてソ連という国が存在していた時代という、現代の日本からはかけ離れた世界がこの作品の中に描かれている。
文章は軽妙洒脱でユーモアがあり(時々下ネタもあり)、ぐいぐいと惹きこまれる。とても面白い。
作者自身もそうだが、外国の人々は自己表現に優れている。故に彼女らは物語の登場人物の様でもあり、逆にそこから感じられるリアリティもある。
米原氏の作品を読むと、いつも世界の広さを感じる。その国で実際に過ごした人が語るからこそ、その国の魅力を身近に感じられる。自分も行ってみたいと憧れてしまう。
自分にとって米原氏の作品で語られる外国は、実在するファンタジーの世界に他ならない。
続きを読む投稿日:2014.06.26
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黒警
月村了衛 / 朝日新聞出版
黒の中の黒
1
黒、という色は闇の色だ。黒社会、黒孩子という言葉があるように、ヤミで存在するもの、腐敗したもの、異端者といった存在の象徴とされる。
主人公は妻に逃げられ、運も悪く、腐った警察組織の中で流されているよう…な、腑抜けを絵に描いたような男である。
それが中国人組織の偽ブランド品売買の捜査に関わる中で、警察の大物と中国裏社会との癒着に気付いていく。
これまでの主人公ならどうすることもできない、というより何もしなかっただろう。
しかし、腐れ縁のヤクザの死や、中国人組織のリーダー沈との関わりが彼を奮い立たせていく。そして、主人公と沈は組織の中にある悪に対する裏切り者、黒に対する黒になってやろうと誓いを立てる。
「機龍警察」もそうだが、作中に出てくる警官たちは誰も彼も善良な正義感などではなく、鬱屈した思いを抱えている。しかし、そこから抑えようもなく湧き上がる、己の正義たることを渇望する心があって、そこがとても人間らしいと思う。
後ろ盾もない現場の一捜査員が、裏社会と警察の大物を向こうに回して何が出来るのか。
「やってやったぜ!」という読後の爽快感に痺れる作品だった。 続きを読む投稿日:2014.05.25
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ヴィンランド・サガ(14)
幸村誠 / アフタヌーン
世界の大きさを感じた
4
誰も悲しむことのない世界を作るため、いまや王となったクヌートに進言するために殴られても殴られても倒れないトルフィン。
「俺に敵なんかいない」、その言葉に世界の大きさを感じた。
「プラネテス」の主人公で…あるハチマキの姿にも感じたことだが、世界は大きく、自分もその一部であるということ。故に彼らは何者も恐れずに立っていられるのだと、そう思った。
トルフィンの生き方に触れて、クヌートは正しい王となり、オルマルは男となった。
大きな重力を持つ星に惹かれた星々が周囲を巡るように、あたかもそれがそうなるべき道に乗ったようだった。
感動した。
…と思ったら最後にユルヴァに全部持っていかれた。もう、おもしれえなぁ! 続きを読む投稿日:2014.04.07
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ちはやふる(22)
末次由紀 / BE・LOVE
思わず叫んだラスト!
2
また良い所で続くなあ! と思わず叫んでしまった。
素晴らしくドキドキして、残りページ数をにらみながら読み進めた。楽しくて読み終わるのがもったいなくて仕方がなかった。
大舞台に立つ主役と、彼ら彼女らを支…える人々の思いがそれぞれあって、誰を贔屓にしていいやら迷ってしまう。
そしてどシリアスな場面をことごとく壊していく周防名人の笑いの才能がツボ。
早く続きが読みたい! 続きを読む投稿日:2014.03.27
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昭和元禄落語心中(1)
雲田はるこ / ITAN
変わり者だからこそ素敵な人々
12
落語、文楽、歌舞伎…そういったものを扱っている作品が好きだ。理由は簡単、カッコイイからだ。
こういう今は廃れたもの、流行でないものに励もうとする人はおおむね独自のプライドや生き方を持っている。その道を…定めている姿勢が格好いいのだ。
この作品の中でヒロイン(?)が「女になんか生まれたくなかった」と嘆く。女は噺家になれない。しかし、彼女の勤め先の女将はそれを馬鹿だねと笑うのだ。
「生まれちまったらそれが定めさ」と。
男女平等というのは、それぞれの世界に踏み入って肩を並べることではなく、適材適所に在って凛と立つことなのだなあと思う。男の世界に踏み入るときにも、男になろうとはせずに女として生きるべきなのだと。
とにかく男も女もカッコイイのがこの作品の魅力なのだ。 続きを読む投稿日:2014.03.25