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一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテ
佐藤多佳子 / 講談社文庫
走りたい。力尽きるまで。
1
幼い頃から続けてきたサッカー。兄と比べて自分の才能のなさに落ち込み、見切りをつけてしまった…
そんな主人公の新二が幼馴染の連の「かけっこしようぜ」の言葉に誘われ、陸上部という新たな
スタートを切る。
…なんで俺の周りにはこんなにすごい奴ばっかりなんだろう、なんて思いながらもたゆまず努力を続けて、
いつしか自分も「すごい奴」らに並び立っていく…
呼んでいて泣き出したくなるような青春小説だと思う。
自分にも確かにあった、ひとつのことに打ち込んで、力尽きるまで走り抜けた過去。彼らにとってはそれが
「今」なのだ。
主人公が天才型の作品というのは多いけれど、この作品はそうじゃない。もちろん主人公の新二にも
恵まれた体格、神様からもらった才能はあるのだけれど、彼の本当の才能は不器用ながらもあきらめず、
努力し続けられるところ。
仲間と共に戦い、負けた試合が胸に苦しく、努力はタイムとなって報われる。本気の人間はすばらしい。
読み終わった後、無性に走り出したくなってしまうこと間違いなし。
まあ、かくいう自分は帰宅部だったのだけれど。 続きを読む投稿日:2013.09.26