あっくんさんのレビュー
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獣の奏者 III探求編
上橋菜穂子 / 講談社文庫
上橋菜穂子による壮大なファンタジー長編第3弾
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前作から11年がたち、エリンはイアルと結婚、ジェシという息子に恵まれ、平穏な日々を過ごしていた。実は前作で一旦物語は完結していたそうで、少女だったエリンがいきなり母となり、ある意味風格も漂わせているこ…とにやや面喰らう。
王獣たちの繁殖、闘蛇を操った母の指笛など、残された謎は多く、それらに徐々にメスが入れられていく中、物語も新しい展開を見せていく。
真王と大公が結婚して以来の動揺はいまだ尾を引き、それにつけいって領土を拡大しようとする隣国との緊張が高まるなど、収束に向けての怒涛の展開が続いて読む手を止められない。
強大な戦力を有するがゆえに高まる緊張は現代の世界情勢にも通じるところがある。話し合いは話し合う相手が交渉のテーブルにつかなければ成り立たない、といった意味の一文は、現代の日本が置かれている立場にも通じていてハッとさせられた。 続きを読む投稿日:2016.06.28
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獣の奏者 IV完結編
上橋菜穂子 / 講談社文庫
上橋菜穂子による壮大なファンタジー長編第4弾にして完結編
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リョザとラーザの全面的な戦いが迫る中、エリンは王獣の訓練に明け暮れる。闘蛇と王獣が入り乱れる戦いがどんな結末を迎えるのか、伝説と掟の真相がいよいよ明かされる。
前作では完結した物語を再び立ち上げたこと…によるややとってつけた感がないわけではなかったが、本作の結末まで読み進めれば全てが収まるべきところに収まっていく感覚を味わえる。後半の2作ではエリンの息子・ジェシがいることで、一つの大きな歴史の流れを物語から感じることができる。現実の世の中もうまくいかないことやままならないことが多いが、それも含めて大きな流れの中で生かされているのだと、本作が語りかけてくれているようだ。
自らが心を通わせた生き物を戦いの道具として使うことの葛藤、生きるとはどういうことか、といった心の内面を丁寧に描き、生への讃歌を歌い上げているように感じた。 続きを読む投稿日:2016.06.28
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獣の奏者 外伝 刹那
上橋菜穂子 / 講談社文庫
上橋菜穂子による壮大なファンタジー長編の外伝
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本書は掌編を含む4つの物語から構成される。
作者が述べている通り、本編はもはや付け足すところのない一つの閉じた丸のように欠けるところのない作品であり、本作はいわば蛇足のようなものではあるが、本作によっ…て描かれるそれぞれの人物がより人間らしく生き生きと感じられてくるという点で、本編を補強する大事な作品である。
特に、冒頭で描かれるエリンの母ソヨンは本編では重要な役どころではあるものの、描かれ方は限定的であった。本作によってよりソヨンの思いが際立ってくる。
いずれの作品も「児童文学としての獣の奏者」ではなく、ある程度歳を重ねた大人に向けて描かれているように感じる。本編を含め、作品全体の懐の深さを感じることができる良作である。 続きを読む投稿日:2016.06.28