あきの書店さんのレビュー
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親鸞(しんらん) 激動篇(上) 【五木寛之ノベリスク】
五木寛之 / 講談社文庫
親鸞の魅力…読んでゾクゾクするほどです
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平安時代末期から鎌倉時代にかけて、戦乱が相次ぎ、飢餓や干ばつの広がりから庶民が生きる希望を持てなかった時代の話。そんなとき、仏の力で人々を救おうとした2人の僧侶。
南無阿弥陀仏を唱えれば極楽浄土へ行け…ると説いた法然と、その弟子で、阿弥陀仏を信じるだけで救われると説いた親鸞。上巻は幼児期から仏の道へ入る過程がフィクションを交えて面白く描かれ、下巻は親鸞が新潟へ流されるところで終わっています。
わたしも趣味で小説を書くので、こんな時代の有名人をストーリーとして、どのように組み立てていくかに興味がありました。そして思いました。ピアノで言うと、バイエルを弾くわたしと、リストを弾く五木氏の違い。バイエルを習ったことで、リストを弾く作家の凄さが分かり。よくぞこんな物語を紡げるなあと…ため息。
続きを読む投稿日:2013.09.27
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いじめと探偵
阿部泰尚 / 幻冬舎
いじめの根源は、案外子育ての基本を失った家庭にあるのでは…
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著者・安部泰尚氏は探偵社の人です。
【使いっ走り、カツアゲ、万引きの強要、度重なる暴力、そしてクラスメイトによる集団レイプまで、いじめは様々だが、ほとんどの被告生徒は、いじめを必死に隠し周囲に相談しな…い。仮に子どもが告白し、親が学校に相談しても、多くの学校は調査すらしない。そればかりか「証拠を持ってこい」と言う。そこで調査・尾行・録音・録画に秀でた探偵の出番となる】と書いてあります。
、数々の具体例が書いてあります。唖然とばかりもしていられないと、わたしも考えました。どうして命にを関わるような酷いことをするようになっているのか?
①戦後、食うや食わずで生きたころには「アトピー」なんてなかった。
②貧乏で食べるものがないような家に育った子は「親孝行」者が多かった。
③昔は、親が生活に苦労する姿が身近にあった。
何の脈絡もないように見えるこれらですが、案外根っこの部分は今回の問題と共通項を持っているのでは…。 続きを読む投稿日:2013.09.27
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蜜蜂乱舞
吉村昭 / 新潮社
凛とした人の生き方とは…
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「蜂蜜乱舞」を読んで、氏の沈着な筆致と同じく、人の生き方もまた、そのようであったことを尊いと感じました。
私自身が、人生の最終段階に入った今は、まわりの人間を傷めつけない生き方…言いかえれば、人として…のありようを大事にした生き方をしたいと考えるようになりました。そんな考えに寄り添ってくれる本です。
内容は、養蜂家の話。毎年鹿児島から出発して花を求めて日本縦断をします。①花の咲く時季は長くない。②トラックでの運搬は生き物を運ぶために、管理が考えられないほど難しい。そんな中でも「ちゃんとした生き方」をしていく人々が描かれた作品です。
続きを読む投稿日:2013.09.27
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うたかた/サンクチュアリ
吉本ばなな / 幻冬舎
育ちの良さ
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吉本ばななという作家は、育ちがいいなあ~そう思いながら読みました。本人のどこにも偏屈がないように思えたからです。
「うたかた」は家族と言えるかどうか分からない、それこそ偏屈な4人について書いています。…父・父と一緒に暮らしている嵐。母・母と暮らしている人魚。2組は別々の家に暮らしています。
この父と母がカトマンズへ旅をし、後から嵐も行く。そしてみんな帰国する。これに日常の嵐と人魚のやりとり、こんなストーリーです。
わたしの書く小説など、現実味を出すために、サイフの辻褄を合わせながら書きますか、そんなのは吹っ飛んで、若い二人の会話で成り立っている本ですが、読んでいてイヤではありません。むしろうまいなあ~こういう書き方もあるんだと納得させられます。
「幸せっていうのはな、死ぬまで走り続けることなんだぞ」また「それに家族はどこにいてもひとつだけれど、人は死ぬまでひとりだ。わかったか」そう、父に言わせています。
続きを読む投稿日:2013.12.01