親ガチャの哲学(新潮新書)
戸谷洋志(著)
/新潮新書
作品情報
もっと裕福な家庭に、魅力的な容姿に生まれたかった、いっそのこと生まれてこないほうがよかった・・・・・・近年、若者の間で瞬く間に広がった「親ガチャ」という言葉。人は生まれてくる時代も場所も、家庭環境も選ぶことはできない。そうした出生の偶然性に始まる人生を、私たちはどう引き受けるのか。運命論と自己責任論とが交錯するなか、人気漫画からハイデガーやアーレントまで、社会と哲学の両面から読み解く。
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商品情報
- シリーズ
- 親ガチャの哲学(新潮新書)
- 著者
- 戸谷洋志
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮新書
- 書籍発売日
- 2023.12.18
- Reader Store発売日
- 2023.12.18
- ファイルサイズ
- 1.2MB
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この作品のレビュー
平均 4.2 (10件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
読んだきっかけ
レビューの続きを読む
・「親ガチャ」という言葉が話題になり、2021年の流行語大賞トップテンに入ったことが気になっていた。
・2023年度の大学入学倫理の共通テストの出題
・秋葉原殺傷事件の加藤死刑囚のような“無敵の人”のキーワードがあったこと
・目次に『ポケットモンスター』や『進撃の巨人』『ONE PIECE』といった話題のコンテンツを基に、「親ガチャ」「反出生主義」「遺伝子操作」など、生まれの偶然性にまつわるテーマを掲げていたので、わかりやすいのでは?
・菅前総理が「自助、共助、公助、そして絆」といったとき、コロナ禍の混乱期にあり、批判があった。この言葉は別に悪くはないのだが、「自助」で頑張っているのに、「共助」「公助」の仕組みが整っていないではないかと。自己責任論が全面的に押しだされ、よりこの言葉が苦しみの意味で浸透してしまったのかと思った。
政治家がいう言葉のタイミング、政策などいろんな難しい状況があると思うのだが、ただ、「親ガチャ」の言葉を考えると、今この苦しみからなんとかしてほしい、と叫びをあげている人に視点を持てる社会でなければならない、虐待や貧困など自分ではどうすることも出来ない環境にいる子供たちが「もっと良い家庭に……」と考えることは、非常に当たり前のこととだからこそ読んでみようと思った。
・親ガチャ的思考を乗り越え、「自分の人生を自分のものとして引き受ける」この言葉にひかれた。
<内容から>
「親ガチャ的厭世観」とは意志と選択の能力を否定する人間観
社会において「親ガチャ的厭世観」で苦しむ人が救われるためには、傾聴や対話の場があることが重要だと説く。
「親ガチャ的厭世観」を持って苦しんでいる人々は、自分自身と向き合うことすらできないほど力を奪われているし、傷つけられている。自分自身を引き受けるためには、むしろ他者とのかかわり、自分の言葉を受け止めてくれる誰かがいるという信頼が必要である。「責任の分担」という幻想があることが重要。それが人を孤独から守る。切迫した時間を緩めてくれる。そういうつながりの中ではじめて、逆に責任を取れる。
残念ながら、現代社会では地縁や血縁に根ざした伝統的でクローズドな地域コミュニティの喪失が、傾聴をしてくれる他者の喪失につながっているとしている。
ローティの「連帯」やアーレントの「現われの空間」を援用して、連帯の必要性を説き、「新しい中間共同体」の必要性として、哲学対話の場を用いたコミュニティの可能性、「対話の場の創出」を提案していた。
ただ、内にこもった時間的、経済的余裕がないと参加できないのでは?
情報弱者や孤独に陥っている人にどう手を差し伸べることができるのかということ。
課題は残る。
「私」がそこにいてもいいと思える場所。
「私」が他者とともにそこに帰属することが許される場所。
他者ととともに居場所を持つことで、はじめて自己像を健全な仕方で作り上げることができる。
学校をはじめ、図書館など公的機関でのそういった「居場所」としての機能性がもっと柔軟に求められるし、実際活動しているところも増えている。
・対話の中で相手の言葉を聴くこと。何より言語化することの重要性をあらためて確認。
・ケア=傾聴には共同体が必要で、人為的に対話の場を創出すること。
・もっとも弱い立場の人から社会を考えること。
・連帯を実現するために不可欠なのは想像力
ブクログで感想を書く、その行為も私にとっては言語化することである意味ケアしてもらっているのだなあと思いながら読み終えた。
<本文で気になった個所>
・「親ガチャ的厭世観」意志と選択の能力を否定する人間観
p.15
・「不運であり、苦境に陥った人が、自分の置かれている状況を、あるいはその人生を理解するための概念である」(と捉える。
pp.15-6
・「この言葉が流行する背景には、そう考えでもしないと生きていくことさえままならないような、苦境に陥っている人々が存在する」
p.180
・「自分の言葉が他者に届いているという感覚……は、苦境に陥っている人に不思議な力を与える」
p.181
「自分の人生を引き受けるために、私たちは他者に耳を傾けてもらう、そうしたケアをしてもらうことを必要とする」
P.220
「私たちは、自分のできる場所で、自分のできる範囲で、他者と対話する機会を、この世に創り出していくべきです。……誰かに話すことが許されること、誰かが自分の話を聴いてくれることを信じられること──それが、現代社会のニヒリズムへの、根本的な抵抗」投稿日:2024.04.30
『親ガチャの哲学』
2024年5月23日読了
昨今よく聞くようになった「親ガチャ」という言葉。
「子どもは親を選べず、親によって子の人生が変わること」を端的に示した言葉である。この言葉は俗にいう「ハ…ズレ」を引いた人が使用することが多く、本書の中でこの概念は悲観的とも厭世的ともされる。
本書は「現代社会は親ガチャ的厭世感に覆われている」ということを出発点とし、「無敵の人」や「反出生主義」などのキーワードに思考を膨らませながら進んでいく。『ワンピース』や『進撃の巨人』といった人気漫画やポケモンなど、具体的に想像しやすい例えを用いながら話が進むので、大変わかりやすく一気に読むことができた。
本書がおもしろいのは、「あなたが苦しんでいるのは、あなたの努力が足りなかったから」などという安易な「自己責任論」を持ち込まない点だ。苦境に陥り思考停止せざるを得ない人、自分自身から逃避しなければならない人が、どうしたら自分の生を引き受けられるかを、主にハイデガーの思想を用いて以下のように述べている。
「私」が「私」であることは、誰のせいにもできないのです。だからこそ、私たちは思うままにならない人生であっても、その人生が自分のものだと思うことができる。
(中略)このように自分自身を引き受けることの真価は、自分の人生をよりよいものにしようと配慮すること、自分を尊重しようとする態度を可能にする、という点にあるのではないでしょうか。
「自分の人生を引き受ける」とは、「自分を知り、自分の幸福を追い求める」ということだと思う。
SNSが急速に発展した現代。他者と自分の人生を容易に比較できるようになってしまった。だからこそ、わかりやすい成功への諦めがつかなくなり、自分が思い描く幸福を追うことが難しくなったのではないだろうか。だれかと同じ成功を求めすぎるがために、自分の幸福がわからなくなってしまい、だれかの成功とは程遠い自分の人生を、引き受けらなくなっているのかもしれない。
また本書では、自分自身と向き合うためには、他者との対話が必要と説く。私たちは誰かが自分のことを受け止めてくれるという信頼感の中で、はじめて自分と向き合えるとしている。
やはり「誰のせいにもできない人生」を歩むというのは、不安で恐ろしいことだと思う。だからこそ一時であっても自分の話を聞いてくれる(=自分の存在を認めてくれる)他者や共同体の存在は心強い。ここでは現代における実例として「哲学カフェ」が上がっていた。つながりの少ない現代社会において、なにかしらの共同体に(一時的でもいいから)属し、話を聞いてもらうというのは、今を生きていくコツなのかもしれない。続きを読む投稿日:2024.06.07
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