歴史から読み解く日本人論
井沢元彦(著)
/PHP文庫
作品情報
罰則がないコロナ対策、敵国だったアメリカとの日米安保条約、一度も改正されたことがない日本国憲法・・・・・・外国人から見ると驚くことが多い日本人の考え方。その行動原理の原点は歴史にあった! 日本人も気づいていない日本特有の思想の歴史的な背景を井沢史観で徹底解説。穢れ、水に流す、尊い犠牲・・・・・・これらの感覚の正体とは? 憲法改正と言うといまだに「改悪でしかない」と血相変えて反対をする人がいます。それは日本人に「多くの人間の犠牲の上に成立したことは絶対に守らなければいけない」という宗教があるからです。その結果成立した日本国憲法は絶対変えてはいけないということになりました。(本書「あとがき」より) ●日本には話し合い絶対主義という宗教がある ●偉大な人間が不幸な死に方をすると怨霊になる ●日本人が考える理想的なリーダーは談合調整型 ●遷都するほど恐ろしい「死穢」 ●“きれい”と“正しい”はイコールになる
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商品情報
- シリーズ
- 歴史から読み解く日本人論
- 著者
- 井沢元彦
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP文庫
- 書籍発売日
- 2022.08.01
- Reader Store発売日
- 2023.11.03
- ファイルサイズ
- 7.1MB
- ページ数
- 240ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (1件のレビュー)
-
逆説の日本史シリーズでお馴染みの井沢氏による本で、最近本屋さんで文庫本化されているのを見つけましたので読みました、単行本は2019年頃に出ている様ですね。
今まで彼の本は何冊も読んできているので、読…んでいて納得することばかりです、やはり日本人というのはこうなのだな、と思ってしまいます。良い面も悪い面もある、これが特徴なのでしょうね。
以下は気になったポイントです。
・聖徳太子の憲法十七条(604年制定)における第一条、「みんなで話し合って物事を決めれば必ず正しい」そして、十七条(最後)には「重大なことながは一人で決定してはならない、必ず多くの人々とともに論議すべきである」と言っている、重大な事柄を論議するに当たっては或いはもしか過失がありはしないかという疑いがある、だから多くの人々とともに論じ是非を弁えてゆくならば、その事柄が道理に叶うようになるのである」と書いてある(p33)
・徳川家康は、わざわざ息子の中で一番おとなしい秀忠を選んだ上、自分の権力をわざわざ複数にばらした、老中5人の合議制にして、将軍は老中が合議で決めたことに対してハンコを押せばいいというシステムにした、必ず全員一致とした、そのためにお互い妥協点を探り合って、皆が納得する形にした、これが日本の民主主義と呼ばれている(p46)一人で決めることは悪だから、将軍にはやらせずに「大老」を置いて、悪いことは大老に泥をかぶってもらう(p49)
・事変とは、社長のいうことを聞かないで部下が勝手に、会社がつぶれるか、潰れないかの社運に関わるようなプロジェクトを実行しているということ、日本においてそれができてしまうのは、本当の意味での絶対権力が存在しないから(p51)
・日本の正当な所有者、支配者がなぜ天皇家なのかというと、それは「オオクニヌシとの話し合いで譲られた」から、戦争で取った訳ではないとされている(p60)
・徳という字を使っているから儒教と思うのではなく、怨霊鎮魂であるという、日本古来の思想である。この始まりは、10世紀の900年代冒頭、菅原道真の怨霊騒動が起きた辺りからと言われるが、もっと遡って、奈良の大仏を建てた理念、今回の憲法17条を大切にするのも怨霊信仰の裏返しである(p68)
・オオクニヌシがアマテラスの子孫であるニニギノミコトに国譲りをしたときの条件として、1)現世の政治(アラワゴト)はアマテラスの子孫である天皇家がやる、オオクニヌシは「カクリゴト)=直接政治に関りのない運命とか宿命を支配すること、2)アマテラスの子孫は、オオクニヌシのために大きな神殿を建ててお祀りをして、お仕えすることであった(p75)
・信玄と謙信が5回も戦って決着がつかなかったのは、双方が名将というのが定説だが、決着できる余裕がなかったのが真相だろう。戦争は旧暦10月から初雪までなので、1年のうち2ヶ月程度、さらには、無茶な戦術は取れない。2割も兵士を失ったら戦闘に勝ったとしても実は敗北である、その分の農作業労働者が失われて生産性が落ちるので(p91)
・信長と秀吉が、信玄と違って本拠地を移動できたのは、彼らの軍団は一年中稼働できる兵士であったから、だから信長は天下を取れた(p92)
・リーダーシップを取るのが上手な人は、ガス抜きというか、みんなで話し合ったという形を取る様にする、最悪なのは自分たちが無視されていると感じさせること(p101)
・外国の差別というのは、お互いに違いがあって、その違いを認めないということ。ところが日本の場合は、差別する側と差別される側に、人種的な違いがない、宗教的な違いも少なくともある様には外国人の学者には見えない。差別としては一番悪質ということになる(p122)
・タブーには2種類ある、1)神聖なものだから汚してはいけない、2)汚いから触ってはいけない、その汚さが伝染するから、という意味がある。「穢れ」はどちらかといえば汚いということ。清浄の「浄」とは、前は汚かったけれど今は綺麗になった、綺麗になっていないものが「穢れ」ということ(p129)これを消すには、石鹸では落ちない、水に流せば落ちる。このことを「禊(みそぎ)」という(p131)
・藤原京は平城京の時代になって、親が使っていた宮殿をまた息子が使う様になった、死穢の問題はどうやって解決したかというと、持統天皇から火葬にするようにした(p138)
・日本には70%が山地であるおかげで、保水力があるので、山からじわじわと綺麗な水(=天然で濾過された非常に美味しい水)が伏流水として流れ出てくる。だから日本ではお茶は、嗜好品であったが、外国では昔はお茶は「必需品」であった、煮沸した水にお茶を入れ、さらに葉緑素とカテキンで消毒作用することで、やっと飲めた(p166)イタリアにはいい温泉は若干あるが、水はまずい。日本は温泉に恵まれている上に、飲水も美味しい(p170)
・菅原道真の正式な神様としての名前は「火雷天神」とされ、これを祀った神社のことを「天満宮」という、地方にある神社は、天神社、天神様という(p200)
・今、戦争絶対反対という人がいるのは、第二次世界大戦で約300万人の日本人が死んだからだろう、それ以前は戦争に勝つことで、日本の国権や国益が増大していったのは紛れもない事実であった(p205)
・昭和天皇はみだりに戦争をすることは反対、東條英機も戦争はしないように、と言っていたが、この言葉に背いて戦うことを決意した。その理由は「英霊に申し訳ないから撤兵できない」ということ、中国から完全撤兵したら、日清・日露戦争で倒れた十数万の兵士たちが、全員「怨霊」になってしまう(p208)
・朝廷がなぜ権力を幕府に奪われたか、国家の要である軍事警察権を放棄したから、それを拾い上げたのが鎌倉幕府である(p216)日本の封建時代の政治は、軍事警察権を朝廷から預かっていた、という形式で成り立っていた。最初は軍事官僚に任せていたが、彼らも次第にそれを嫌がる様になったので、結局、自警団である武士たちがそれを担う様になった(p217)
・幕府というのは、中国語で元々は皇帝のいる都から遠く離れた土地に設けられた臨時の前進基地のことをいう、そこにいるのが軍団長の将軍で、軍団は異民族と戦っている(p218)鎌倉幕府とは、形の上では、最初は関東以北の東北地方を監視する軍団の長である、征夷大将軍が、臨時に駐屯している場所であった。なので、天皇から正式に任命された征夷大将軍は、税金をとっても良いし、徴兵しても良いという形であった(p218)
2022年9月19日作成続きを読む投稿日:2022.09.19
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