ウクライナ戦争をどうみるか
塩原俊彦(著)
/花伝社
作品情報
ほんとうにロシアだけが悪なのか?ウクライナ戦争がはじまった理由、そして「なぜいまだに停戦することができないのか」を、西側諸国の視点から距離を置きつつ多角的・総合的に解説。フェイクニュースのはびこる「情報戦」としてのウクライナ戦争に光を当て、「情報リテラシー」の視点からこの戦争の真相=「米・NATO代理戦争」の姿、そして「第三次世界大戦」の可能性を占う。意図的な誤報=「ディスインフォメーション」に騙されないために
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この作品のレビュー
平均 3.5 (2件のレビュー)
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このレビューはネタバレを含みます
帯にある、「ほんとうにロシアだけが悪なのか?」(わざわざ、「だけ」をさらに強調している)に目を惹かれた。書店に並ぶ数多のウクライナ、ロシア関連本で、めずらしく異彩を放っていたので手に取ってみた。
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副題にあるように、「情報リテラシー」の視点から読み解くロシア・ウクライナの実態だが、序盤は情報とはなんたるや、ディスインフォメーションとは、メディアの実態云々と、むしろ、ロシア・ウクライナで読み解く「情報リテラシー」と、語りたい主眼は逆じゃないのかと思うほどの内容ではある。
が、それくらいで良いと思う。
それくらい、今の日本、いや西側の報道は偏っていることが良く判る。というか、事情は、あちら(東側?ロシア側)も同じだろうから、要は、情報をいかに捉え、自分として理解するかの指南の書と思えばよい。
なので、本書の終盤にかけてのまとめも、
「経営悪化で矜持さえ失いかけているテレビや新聞であっても、その忖度まみれの情報がいまでも影響力をもち、権力者を喜ばせている結果につながっている。」
とメディアのテイタラクを嘆き、返す刀で、伊丹万作の著作を引いて、
「そしてだまされるものの罪は、ただ単にだまされたという事実そのものの中にあるのではなく、あんなにも造作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになってしまっていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである。」
と、受け手側の、まさに受け身の姿勢に喝を入れる。
そして、無気力、無自覚、無反省とならんために、
「そこで必要となるのは、考えること、すなわち思考である。情報の「良き受信者」になるには、心のなかでもう一人の自分と会話する訓練を積むことが求められているのだ。」
と指摘し、その訓練を積む手段として、
「おそらく作文を書くことがもっとも有効だと、私は考えている。だれに作文を読んでもらうかを想定したうえで、読み手が書き手である自分に好感を寄せてくれるようにするにはどんな風に内容を書けばいいかをじっくりと考えるなかで、いろいろ考えるのだ。」
と、自省力の養成を促す。 このあたりは、近藤康太郎の一連の著作とも相通じる(『三行で撃つ』『百冊で耕す』)。野にある人物に一家言あり、というところか。
ロシア、ウクライナに関する情報としては、やはり、確りと歴史を、時の流れを認識しろと訴える点は、まさしく御意。少なくとも、クリミア半島進攻をロシアが行った2014年以前の、ウクライナでのマイダン革命の前からの流れを認識しておくこと。歴史的流れが理解できれば、「ロシアだけが」という発想にはならない。とはいえ、ロシアは善、正しいとも著者は、もちろん言わない。
「プーチンの悪はあまりにも明らかだ。それに対して、侵攻を受けたウクライナや米国が善ということには決してならないことにくれぐれも注意してほしい。」
ロシア関係者は当然分かっていること、著者と思いを同じすることも多く、ロシア・ウクライナの近年の事態の振り返りにもなり、もう少し世論も、バランスよく対応してもらいたいと、本書を読んで改めて思うところだ。
また、ウクライナ侵攻後の、欧州の動きについても(日本ではほとんど報道されない)、著者なりの分析と今後の予想も記してあるところも興味深い。欧州も、一枚岩ではない(当然のことだ)。
とはいえ、そんな、本書からの情報も、鵜呑みすることなく、自分なりのフィルターを通して咀嚼した上で、よく理解し、考えてゆきたい。それが、本書のなによりの教えでもある。投稿日:2023.04.21
過去の塩原さんの著作より分かりやすく書かれていた印象です。
ウクライナ戦争はそれぞれの見方がありますが、塩原さんの見解は突出している印象です。
ウクライナが善でロシアが悪というのは完全なプロパガンダで…あり、ウクライナもロシア、そしてアメリカを中心とした西側諸国も悪だということが分かります。続きを読む投稿日:2023.09.08
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