「おふくろの味」幻想~誰が郷愁の味をつくったのか~
湯澤規子(著)
/光文社新書
作品情報
肉じゃが、ポテトサラダ、オムライス・・・・・・? 男女の性別によって、あるいは世代によって、「おふくろの味」という言葉に対する認識や意識は異なる。なぜその味は男性にとってはノスタルジーになり、女性にとっては恋や喧嘩の導火線となり得るのか。わかりそうでわからない、正体不明のこの味について、本書は、個人の事情や嗜好というよりもむしろ、社会と時代を丹念に読み解き、その誕生の経緯と実体が何であるかを探る。
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この作品のレビュー
平均 3.3 (6件のレビュー)
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「おふくろの味という実体のないイメージ。メディアによって作り上げられてきたいわば「神話」とも言える。それも時代とともに変化してきた。また、おふくろの味とは、母親の作った味、家庭の味、地域(ふるさと)…の味といった様々な「持ち味」とても使われているそうだ。続きを読む
投稿日:2023.05.11
●=引用
●それは例えば「信濃屋」「近江屋」「磐田屋」「出雲屋」「上総屋」「三河屋」「伊賀屋」といった類の名を持つ食堂である。(略)地名食堂の命名の背景にも旅人の心理をつかまえる、これと同じような原…理があるように思える。店主自身がその地域出身者であるアイデンティティティの表明であるという場合もあるが、地名はそれに親しみのある人が(例えば出身地である)、数ある店舗の中から店名に惹かれて立ち寄ること、彼らがその店の居心地の良さを判断するための一種の「記号」となるからである。
●今では各地で、「その土地でしか食べられない郷土料理」が観光客たちの一つのお目当てになっているが、このさんなみの事例に見るように、1970年代以前には、郷土料理に価値が見出されていなかった。(略)郷里を出て、新しい暮らしへと転換することを目指した人びとが、自ら残してきた郷里に価値を見出さなかったのは、もっともなことだともいえる。郷土料理を「光」だと認識する価値転換には、都市人口が増え、郷里を離れた世代の次の世代が地域の「当たり前」で「平凡」な味に新鮮な驚きと興味を持つ状況を待たなければならなかったからである。これは日本に限った状況ではなく、リゾート文化の歴史が長いヨーロッパなどではもともと、旅先で地元の食をたべることは稀であったという。地元の食、郷土料理が発見されるようになったのは、フランスなどではようやく20世紀に入ってからのことであった。
●コンビニエンスストア、ファミリーマートの総菜ブランド「お母さん食堂」が誕生したのは2017年のことである。おふくろの味の現代版への転換を感じさせるネーミングに「食事を作るのはお母さんだけですか」と批判が集まり、論争になったのは2020年であった。結果的には翌年には「お母さん食堂」という名前は新しいプライベートブランド名「ファミマル」へと転換した。この論争の背景には、現代社会に広がる「味」に対する認識の一つのパターンが垣間見える。つまり、ブランド名を立ち上げ、ジェンダーバランスに配慮しようと割烹着を着た男性芸能人をイメージに掲げた企業側も、性別分業の議論へと結びつけた批判側のいずれもが、食や味がつかさどる世界をかなり限定的に、女性と男性、そして家庭へとつないで描き、評価している点で共通しているのである。
●「おふくろの味」は、人びとが伝統的と思っているものの多くは「創られた伝統」であるというエリック・ホブズボウムらが提唱した概念にも通じるところがある。実際、書籍のタイトルを指標にしてみると、1960年代に初めて料理本に「おふくろの味」と冠されてから、わずか40年の間に増幅し、定着し、錯綜し、減少していった言葉であることがそれを物語っている。
紅白歌合戦と日本人(2013)
郊外の社会学(2012)
盆踊りの戦後史(2023)参照続きを読む投稿日:2024.02.17
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