ヒエログリフを解け ロゼッタストーンに挑んだ英仏ふたりの天才と究極の解読レース
エドワード・ドルニック(著)
,杉田七重(訳)
/東京創元社
作品情報
1000年以上、誰も読むことができなかった古代エジプトの謎の文字“ヒエログリフ”。ナポレオンのエジプト遠征でそれが刻まれた黒い石板“ロゼッタストーン”が発見され、イギリスとフランスのふたりの天才学者がその解読に乗り出したとき、国の威信をかけた究極の解読レースの幕が上がった。性格も思考方法も正反対のライバルは、“神々の文字”とも呼ばれた謎の言語に、どのように挑んだのか? アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作家が、壮大な解読劇を新たな視点から、スリリングかつリーダビリティ溢れる筆致で描く、傑作ノンフィクション!
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商品情報
- 著者
- エドワード・ドルニック, 杉田七重
- 出版社
- 東京創元社
- 書籍発売日
- 2023.01.27
- Reader Store発売日
- 2023.01.30
- ファイルサイズ
- 16.7MB
- ページ数
- 362ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (17件のレビュー)
-
【読もうと思った理由】
さいきん歴史に関連する本で、食指をそそられる本がなく、あまり歴史関連書を読んでいなかった。そんな折、ブクログでフォローさせて頂いている方の本棚をザッピングしていると、気になる本…を発見。それがKOROPPYさんの本棚で見かけた本書「ヒエログリフを解け」だ。副題が〈ロゼッタストーンに挑んだ英仏ふたりの天才と究極の解読レース〉であり、副題からも興味関心をそそられる単語しかない。個人的に知的好奇心はそれなりにある方だと思うが、ここまで現在の自分の興味関心にピッタリとハマる本も珍しい。しかもノンフィクションだ。読む前からこんなに興奮する本も滅多にない。
【ヒエログリフとは?】
古代エジプトの象形文字(絵文字)の一つで、神聖な碑文に用いられたので、神聖文字、または聖刻文字と言われる。その書体を簡略化し、パピルスに書けるようにしたのが神官文字(ヒエラティック)で、その筆記体が民用文字(デモティック、民衆文字ともいう。)である。エジプトがペルシア帝国に征服され、さらにヘレニズム時代にギリシア語が公用語とされたことによって、古代エジプト語と共にヒエログリフも使用されなくなり、忘れ去られた。ナポレオンのエジプト遠征の際にロゼッタストーンが発見されたことから、その解読が始まった。
【ロゼッタストーンとは?】
ヒエログリフ解読の鍵となった石碑のことで、発見したのはフランス軍だが、紆余曲折を経てイギリスのものとなり、現在は大英博物館にある。破損しているが、残されている石のサイズは高さ114cm、幅73cm、厚さ28cm、重さ762kgとかなりの大きさ。破損前の高さは推定で150cm~160cmである。材質は黒い玄武岩。
発見は1799年7月で、ナポレオン配下のフランス軍が要塞を築く工事をしている最中に発見された。元その地方にあった神殿の石材を流用していた中に、変わった石があったのに気づいた兵士がいたということだ。下っ端兵士が石の重要さに気づいた幸運に感謝すべきだろう。名称の「ロゼッタ・ストーン」は、発見された地名の「ロゼッタ」(現在はラシッド村)に由来する。のちにフランス軍がエジプトから撤退する際、イギリス軍との条約によりこの石も引渡し対象となってロンドンに持ち去られることになるが、その前にフランス軍が写しをとっていたため、フランスでも解読が進められていた。
【感想】
この本を読んで何より良かったのは、エジプトの歴史や、言語学をもっと深く知りたいと思えたことが何よりも大きい。ヒエログリフやロゼッタストーンについて本書を読む前の知識は、19世紀初めにフランスのシャンポリオンがロゼッタストーンを手がかりに、ヒエログリフを解読した程度の知識しか、恥ずかしながら持ち合わせていなかった。
本書の構成としては、ノンフィクションなので、解読に至るまでの苦悩やライバルとの熾烈な解読レースなどが書かれているのは当然だが、エジプトの歴史や言語学についても本書で初めて知ったことも多くあった。
例えば、アルファベットの起源はヒエログリフであることや、紀元前2400年のエッセイには既に「上司とうまくやっていくためのアドバイス」として「上司と同じテーブルに着いた時には、上司が笑う時には自分も笑う。そうすれば上司に受け入れてもらえるだろう」などと書かれている。現在でも十分通用する処世訓が書かれているのには、ビックリした。ちなみに日本では、初代の神武天皇が紀元前660年に即位したが、その更に1800年も前に既に上記処世訓が書き記されていたのは、驚愕に値する。
また自分の無知を晒すようで恥ずかしいのだが、ライプニッツのことも本書で初めて知った。ライプニッツは、「百科全書」を編んだデニス・ディドロをして「ライプニッツの才能に比べられたら、まずもって自著を放り出し、どこか暗い隅の奥深くで安らかに死にたくなる」と言わしめたらしい。またライプニッツは世界共通の言語を編み出すという夢に、死ぬまで取り憑かれていたという。
そもそもヒエログリフは3,000年も続いた古代エジプトで用いられていた文字であり、紀元前3,000年頃には使用されていた形跡がある。一般的に考えると、そんなに長期にわたって使用されたなら、記録もたくさん残っていてもおかしくなさそうに思える。しかし、そうはならずにヒエログリフは一度滅び、千年以上に渡って読めない言語であり、世界の謎だったんだそう。
その決定的な要因には、キリスト教の台頭が関わっている。例えば、紀元後の300年代初頭にローマ帝国のコンスタンティヌス大帝がキリスト教に改宗した。これによってキリスト教はローマの国教になり、その後エジプトのあらゆる神殿はキリスト教を侮辱するものだとしてひとつ残らず壊されてしまった。多神教が当たり前だった時代は他の神々は併合されていったが、一神教にはその余地はなく、古い神々は排除された。ヒエログリフは、過去の悪習の象徴として徹底的に排除され、一度忘れ去られてしまったのだ。無論のこと、それ以外の地で痕跡を手にヒエログリフ解読を目指した人は多くいたが、誰も成功することはなかった。事態が大きく動き出すのは、ロゼッタストーンが発見されてからだ。そこから熾烈な解読レースが始まる。
【今回得た気づき】
西洋史上、もっとも優れた知性を持つと本書で紹介されたアイザック・ニュートンが万有引力の理論をどうやって見出したのか?の問いに対して、即答した答えが以下だ。
「絶えず考え続けたのです」
これって文章で表すと、一文で非常に端的であるが、なかなか一つの命題に対して考え続けることは、現実的に相当に困難だ。本書では、「ニュートンがもっとも傑出していたのは、問題を頭の中にずっととどめておく力であり、強靭な洞察力にある」と書いている。本書でシャンポリオンも若かりし頃から、興味があることはエジプトに特化しており、他のことには一切興味を示さなかったらしい。アインシュタインの名言でもあるが、「私は、それほど賢くはありません。ただ、人より長く一つのことと付き合ってきただけなのです。」と。
やはり歴史に名を残すような偉人は、一つの事柄に対して10年でも20年でも興味を失わず、考え続けられることにあるんだと改めて感じた。なので自分も長年興味が尽きない、対人関係におけるコミュニケーションや、人間が持つ根源的な欲求などに関して、本の力を借りながら自分なりに今後も思考し続けていきたいと思う。
【雑感】
次は、平野啓一郎氏が著者の「三島由紀夫論」を読みます。この本から三島由紀夫氏のことを深く知ったその後に、以前から読みたかった「金閣寺」を読もうと思ってます。
また今回、非常に良い本をお教えいただいたKOROPPYさん、心よりお礼申し上げます、ありがとうございました!続きを読む投稿日:2023.06.10
古代エジプトの保守性、ナポレオンのひどさなど枝葉が面白かった。乾燥した砂の国の巨大建造物文明だからこそ謎として残ることができたのなら、世界には痕跡を残すことのできなかった文化が無数にあるのかもしれない…。続きを読む
投稿日:2024.06.02
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