この作品のレビュー
平均 4.1 (41件のレビュー)
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段飾りの雛人形が印象的な表紙。
主人公のようこは、自分と同世代くらいだろうか。
1970年前後に生まれた女の子が、小学生の頃のお話だ。
いわゆるリカちゃん人形が欲しかったのに、おばあちゃんがくれた…のは、日本人形のりかさん。
ちょっとガッカリしたけれど、このりかさん、なんとようこと意思疎通ができるのだ。
雛祭りの頃、大きな蔵のある登美子ちゃんのおうちに、りかさんを連れて遊びに行くと、登美子ちゃんの段飾りの雛人形や古いお人形達の声が聞こえてくる…。
人形たちとその持ち主たちとの思い出が、人形の中に宿っている、ようこは、りかさんを通して人形たちの声を聞き、そこにある障りを解決していく。
りかさんをようこに託したおばあちゃんは、手を出さず、その子の力を信じて見守るところが、「西の魔女が死んだ」のおばあちゃんを思い起こさせる。
「こういうお話大好き」というレビューがおおいのだが、私は『人形モノ』がとても苦手なのだ。
小学生の頃、
美内すずえさんの「妖鬼妃伝」(1981年「なかよし」に連載)
や、
あしべゆうほさんの「悪魔ディモスの花嫁」シリーズ(プリンセスコミック)
を、怖いもの見たさで読んだトラウマが未だに残っていて、落ち着いて読めない。
あの絵柄が脳内に満ちて、背筋がゾクゾクしてしまう。
そして、「リカちゃん」じゃなく、「りかさん」を渡されて、ちょっとガッカリですむようこちゃん、いい子すぎやしませんか⁉︎
「リカちゃん」が売り切れで、誕生日に「ハルミちゃん」を渡され、かなりブーたれたかつての私からすると、とんでもなく良い子である…その時点で感情移入できず…。
それは置いといて。この作品、表紙の雰囲気とは違い、心あたたまるお話というわけではないと思うのだ。
かつては日米友好の証として日本に来た西洋人形が、太平洋戦争のせいで酷い仕打ちにあう物語もあったりするのだから…実際にこういう事があったのだろう。
戦争とは、人間の心をこうも変えてしまうのか…と
ゾクゾクの理由は、トラウマのせいだけではなかったはず。
2022.1.14続きを読む投稿日:2022.01.14
ひな祭りの前に『人形の家』を読んでいたころに知人から勧められ、人形やぬいぐるみと人との関係に興味が尽きないところ。
ゴッテンの人形の家 に出てくる人形たちはエミリーとシャーロットの家に暮らしていたけ…ど、りかさんは外からやってきます。
おばあちゃんから電話で、今度のひな祭りに何が欲しい?と聞かれたようこは、リカちゃん人形が欲しいと答えます。
おばあちゃんは、
「お人形のりかちゃんなら気立てのいい子だ、雛祭りにはぴったりだ…よし。」
怪しいですよね気立てがいいとか…おばあちゃん、知ってるのかな…
で、やって来たのは半紙に『りかちゃん』と筆で書かれて古い箱に入れられた、真っ黒な髪の市松人形だったのです!
あーあーあー。と人ごとなので面白く読んでいたんですが、
このりかちゃんにもちゃんと思いがあるのです。人形の家のトチーのように、願うのとはちょっと違いますが、思いのようなものが、特定の人に伝わるのです。その夜のりかのメランコリックな感情の粒で翌朝目覚めたようこは、いつもと違う部屋の感覚、草原の朝の気持ちよさを感じて、箱に入れたままのりかちゃんを出して声をかけてみる。
おばあちゃんからのりかちゃんの説明書を読むと、ようこがりかを幸せにする責任があるという。毎朝着替えさせ、髪をとかして、箱膳をしつらえて一緒に朝夕の食事をする…など。
ある日りかちゃんからいつもと違う空気を感じ、ようこはりかちゃんと話せるようになる。ようこの家のお雛様たちがもめているのだ。
この時のようこのあまり驚かない感じもとってもおもしろい。
この家のお雛様はりっぱなものだけど、お内裏様に問題があったのです。
ここも、大河ドラマ『光る君へ』を観てる人にはおおお!ってなるエピソード。
りかちゃんからようこはりかさんと呼んでくださらない?と言われるように、とても頼りになるお人形。どうやらおばあちゃんともこうして話してきたようだ。
それからりかさんとおばあちゃんの助けをかりて、この家のお内裏様、
お友だちの登美子ちゃんの家の人形たちの問題にもりかさんがかかわってゆく。
登美子ちゃんのおじい様は相当な人形の収集家で、後半の物語では戦争中の出来事まで遡り、ようこのおばあちゃんの助けを得て人形たちを幸せにしてゆく。
怨霊とも違った、優しい人形と人とのつながりの世界が描かれます。
ようことおばあちゃんの関係がどんどん深まって素敵なものになってゆくのは
『西の魔女が死んだ』にも通ずるものがありました。
おばあちゃんは、ようこが大人のように「ちょっとはなしがあって」なんて言って、大人ぶってかわいいこと。と思っても、そういうことは口にださないセンスがある。(ようこ談)
人形に興味があるあるのかないのか、登美子ちゃんのセリフにもはっとさせられる。
人形たちが昨日と違う場所にいた時、夜中の大冒険から元の場所に戻れず落ちたふりをしている。そういうことを察してからは、人形だけでなく世の中の物はみんなふりしてるだけなのかなぁって思い始めたと言うのです。
なんと哲学的な少女たち!
ご飯はご飯のふり、わたしはわたしのふり、お母さんはおかあさんのふり…
これもまた、児童文学を超えた、大人のお人形を愛したひとたちに響く物語とおもうのです。続きを読む投稿日:2024.03.12
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