Moonshot(ムーンショット)~ファイザー 不可能を可能にする9か月間の闘いの内幕~
アルバート・ブーラ(著)
,柴田さとみ(訳)
/光文社
作品情報
新型コロナワクチン開発の舞台裏を、ファイザー会長兼CEOが自ら語る。著者のビジョンあるリーダーシップのもと、ファイザーの科学者たちとパートナーのビオンテック社が共闘した2020年の濃密な9か月間。それは、彼らが安全で有効な新型コロナワクチンの開発、治験、製造という従来であれば何年もかかるプロセスをわずか9か月で達成し、「不可能を可能にする」までの物語だった。
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平均 3.8 (13件のレビュー)
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ムーンショット(moonshot)とは、元々は月探査ロケットの打ち上げを指していたが、転じて、途方もない計画だが成功すれば大きな成果が収められる試みを指すようになった。この用法自体はそれほど新しくはな…く、1960年代にはすでに拡張した意味で使用されていたようである。
昨今、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、この用語が用いられる例が増えてきた。大規模なパンデミックを収めるには、それに見合う大掛かりな対処が必要となる。例えば英国の1日最大1000万件を目指すウイルス検査計画は、ムーンショット作戦と呼ばれたが、経費は14兆円というから、まさに月を目指すようなものである。
本書は、やはり新型コロナウイルス絡みではあるが、こちらはワクチン開発計画である。新たな感染症に対するワクチンの開発には、早くても数年掛かると見込まれていたが、mRNAワクチンの開発は大方の予想を超えて迅速に進んだ。その陰に、どんな出来事があったのか。立役者であるファイザー会長兼CEO自身が内幕を語ったものである。
実のところ、もう少し技術的な話があるのかと思っていたが、これは「ビジネス」寄りの話が主体である(CEOが語るのだから当然といえば当然だが)。逆に言えば、それだけ、ワクチンや製薬に限らず、ビジネス全般に参考になりうる点が多いのかもしれない。
個人的にはあまり大規模ビジネスには縁がないので、なるほど、大きな話を動かすというのはこういうことなのか、と何だか与太な感想しか出てこないのだが、それでもなかなか興味深くは読んだ。
非常事態にあたっては、大きな選択がいくつもあり、それを迅速に行わなければならなかった。一方で、ことを実際に進めるにあたっては、実働部隊に思いやりを示し、士気を高め続ける必要があった、というのが大枠の流れである。
現在広く使用されている新型コロナウイルスワクチンはmRNAワクチンだが、このタイプが使用されたのは今回が初めてである。そのため、さまざまな風説が流れることにもなったわけだが、mRNAワクチンの研究開発自体は以前から続けられてきており、昨日今日始まったというわけではない。
とはいえ、実際に臨床使用されたことのないタイプのワクチン。パンデミック発生当初、緊急に必要なのはワクチンだ、どのタイプで行くか、となったときに、mRNAワクチンを選ぶのは常識的な選択ではなかった。特に、ファイザーのような大企業は、アデノウイルス、組換えタンパク質、結合型など、多くの選択肢を持っている。その中で、mRNAワクチンで行く、と決めるのがまず1つ大きな選択だった。
ファイザーは、パンデミック発生以前から、mRNA技術に特化したビオンテックと提携を結んでいたが、この結びつきをさらに強固にし、ワクチン開発を全速力で進めることにする。書類上はいろいろと面倒なことがあるのだが、CEOの決断で、ともかくも資金面はファイザーが全面的にバックアップするということで、大筋は合意しておき、細かな点は研究を進めながら詰めていくという形である。
ことを迅速に進めるため、あらゆる工程で時間短縮が可能な点はないかを洗い出す。各担当者から直接(パンデミックで対面が難しくなった際にはオンラインで)話を聞き、尻を叩く。ただ発破をかけるだけではなく、ゴーサインを出したら資金に糸目はつけない。世界の一大事であるのだから、チーム全員使命感を持って当たってほしい。先週より今週、今週より来週、計画をよりよいものにし、ゴールへと近づいていく。
その気迫がすごい。
金に糸目をつけない開発などは、大企業でなければなしえないやり方だろう。とはいえ、大企業と言えども、これが頓挫したら大損害だったろう。その恐れに躊躇することなく、大胆な計画を進め、要所要所で「正しい」決断をするというのが経営センスというものなのかもしれない。
ワクチン自体の開発が進む一方で、超低温での配送や、先進国と途上国での価格設定、どこにどれだけの量を分配するのかといった別の観点での問題が次々に出てくる。そのどれ1つが頓挫しても、ワクチンの普及は進まない。こうした問題に対処するには、当然、各国の政治のトップ、国連やWHOとのやり取りも重要となってくる。
本書には出てこない、きれいごとでは済まない部分というのもある程度あったのだろうとは思う。
いずれにしろ、これがとてつもない計画であり、歴史に残る事柄であったのは確かだろう。続きを読む投稿日:2022.11.07
ファイザーCEOによる新型コロナウイルスワクチン開発物語。開発、臨床、製造、配布、その後の諸々の政治駆引きに至るまでの非常識的なスピード感と二千億ドルの開発資金拠出をできる企業はそうそうない。
ロケッ…トを月に打ち上げるくらいのムーンショットそのものの事例といえる。
見方はいろいろあるだろうけど、アルバートCEOのリーダーシップが光っていた。
■アルバートCEOはギリシア移民の獣医学博士なのだとか。こういう方がCEOになるあたりがアメリカあるいはメガファーマの特徴的なところなのかな。
■開発プロジェクト名はライトスピード。光速ってのがいいね。
■時は命なり、というフレーズが印象に残る。高潔な理想に向かって困難に立ち向かうエンジニアやプロジェクトメンバーの姿はベタだけどアツイ。治験結果発表のシーンがクライマックス。
■CEOからの5つの提言
・医療をうける費用やインフラの改善
・知的所有権保護。創薬ではこれが命だろう。
・テクノロジーとAIによる革新
・患者自らが判斷や選択ができる環境
・改革を止めないこと
続きを読む投稿日:2024.03.09
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