教養としての神道―生きのびる神々
島薗進(著)
/東洋経済新報社
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神道1300年の歴史は日本人の必須教養。「神道」研究の第一人者がその起源から解き明かす。ビジネスエリート必読書。
明治以降の近代化で、「国家総動員」の精神的装置となった「神道」。近年、「右傾化」とも言われる流れの中で、「日本会議」に象徴されるような「国家」の装置として「神道」を取り戻そうとする勢力も生まれている。
では、そもそも神道とは何か。
神道は古来より天皇とともにあった。神道は古代におけるその成り立ちより「宗教性」と「国家」を伴い、中心に「天皇」の存在を考えずには語れない。
しかし「神道」および日本の宗教は、その誕生以降「神仏習合」の長い歴史も持っている。いわば土着的なもの、アニミズム的なものに拡張していった。そのうえで神祇信仰が有力だった中世から、近世になると神道が自立していく傾向が目立ち、明治維新期、ついに神道はそのあり方を大きく変えていく。「国家神道」が古代律令制以来、社会にふたたび登場する。神聖天皇崇敬のシステムを社会に埋め込み、戦争へ向かっていく。
近代日本社会の精神文化形成に「神道」がいかに関わったか、現代に連なるテーマをその源流から仔細に論じる。同時に、「国家」と直接結びついた明治以降の「神道」は「異形の形態」であったことを、宗教学の権威で、神道研究の第一人者が明らかにする。
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近代日本社会の精神文化形成に「神道」がいかに関わったか、現代に連なるテーマをその源流から仔細に論じられている。
神道は、古くから存在する日本固有の宗教。
一般的な宗教には教祖や経典が存在するが、神道…は教祖や経典が存在しないことも大きな特徴。
「古事記」や「日本書紀」にも神道という言葉は出現するが、現在のような体系的な宗教としての神道のかたちができていたわけではない。
原始的な神話信仰や、山や岩などの自然を神聖なものとする精霊信仰が徐々に融合し、外来文化、先祖崇拝なども取り入れながら、日本人に親しみやすいように変容してきた宗教が神道。
◯天皇と神道
「祖先崇拝」や「自然崇拝」が基本で、「八百万(やおよろず)の神」と呼ばれる多数の神を崇拝する。
仏教やキリスト教など、世界宗教の多くが「一神教」であるのに対し、神道は「多神教」の考えを基としている。
神道を語る上で欠かせないのが天皇の存在。
天皇は、八百万の神の中でも最高の神格を有する「天照大神(あまてらすおおみかみ)」の末裔と考えられている。
皇室の儀式が、神式(しんしき)でおこなわれているのはこのため。
◯神道の種類
神道も時代や政治利用等によって少しずつ意味や内容が異なるものを分類できる。
・神社神道
現在も神社を中心に信仰されている、一般的にイメージされる神道のこと。
・皇室神道
皇室による大嘗祭や新嘗祭を始めとした祭祀をおこなう神道。
・教派神道
伊勢神宮や出雲大社など古くから続く神社から生まれた神道や、金光教など教祖の神秘的体験から生まれた神道のこと。
・復古神道(江戸時代中期から明治時代まで)
外来宗教の影響を排除し、日本固有の信仰の在り方を復活させようとした神道のこと。
・国家神道(明治から第二次世界大戦終戦まで)
天皇統治体制強化のために、国家が国民に信仰するよう働きかけた神道のこと。
◯その他
神社ふつうにいってるけど、あれは神道の拠点。神社の原形は、神様が降臨すると考えられた木や岩の所に仮設された建築物
◯神道の歴史
仏教が日本にやってきたのは6世紀半ば。
それ以降、神道と仏教は、どちらかがとちらかに取り込まれてしまうというようなことはなく、江戸時代に至るまで延々とバランスよく融合・共存して日本人の宗教性を支えてきた。
これを「神仏習合」と呼ぶ。
しかし、明治に入ると天皇を頂点とした神道を基盤にする近代国家が目指された。国家神道を目指すということ。
神仏習合は明治新政府によって無理矢理に分離されられる(神仏分離)。
寺や仏像、経典を破壊する「廃仏毀釈」という黒い歴史が日本史に刻まれたのもこの時。るろうに剣心ででてきたやつですね。二重の極み。
国家神道は第二次世界大戦の終焉とともに廃止に。その後、神社や寺院はそれぞれに宗教法人となり今日に至る。
大日本帝国憲法が制定され、信教の自由も認められていた。
神道が他の宗教と区別されたのは、宗教の枠から外すことで、国民道徳として国民全体に神道の儀礼への参加を強制するためだった。
天皇は宮中三殿において皇祖神や皇霊、そして天神地祇(てんじんちぎ、全ての神々)を祀る神主の役割を果たす。
国民は、神々を祀るとともに、その祀り手である天皇をも崇拝する。そうした体制が明治時代に確立されたのである。
◯象徴としての行為を支える信仰
現在の天皇は宮中祭祀に熱心であると言われる。これは、天皇の生前退位をめぐる議論のなかで浮上したことだが、有識者のなかには、天皇はこうした祭祀さえ行っていればよいのであって、それ以外の行為は不要であると主張する人もいる。
だが、近代の社会において、代々の天皇は宮中祭祀だけを行ってきたわけではない。大正天皇は病のため十分な活動はできなかったものの、他の天皇は行幸を重ね、戦後の昭和天皇ともなれば、一般の国民とも積極的に関わってきた。現在の天皇は、被災者の見舞いや、かつての戦地を訪れる慰霊の旅を繰り返している。
そして、大日本帝国憲法下では、「天皇大権」と呼ばれる権能を果たし、日本国憲法下では、多様な国事行為を果たしてきた。天皇が果たすべき責務は重い。
日本国憲法においては、天皇は国の象徴、ないしは国民統合の象徴と位置づけられている。た
だ、象徴とは何かということについて、憲法には格別の規定が存在しない。
現在の天皇は、退位をめぐる国民に対するメッセージの中で、「象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を日々模索」してきたと述べていた。
憲法が象徴とは何かを具体的に規定していない以上、天皇自身がそれを自ら考え続けなければならなかったというわけである。メッセージの中で、天皇は、その具体例として「日本の各地とりわけ遠隔の地や島々への旅」を挙げていた。
つまり、天皇が模索してきた象徴としての行為は、仏教の「菩薩(ぼさつ)行」、あるいは「利他行」に当たるのではないかと考えた。それは、自己を犠牲にしてでも他者を救うために行動することである。
現在の天皇は国政に対する権能を持たない。だが、国家を象徴する存在である以上、自らの行動の支えになるものを必要とする。そこに信仰の役割がある。
神道を通すことで、自然的に天皇は信仰の象徴となり、その頂上として君臨できる構造となっている。続きを読む投稿日:2022.06.11
古代から中世にかけては、各地のアミニズム的な信仰が錯綜して、本書での解説を読んでも中々理解に苦労する。
明治維新以降は、尊王思想を纏って国策感が出て来るところから、終戦までの時代の空気を色濃く感じる。投稿日:2022.06.30
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