エンベデッド・ファイナンスの衝撃―すべての企業は金融サービス企業になる
城田真琴(著)
/東洋経済新報社
作品情報
2015 年ごろから国内でもブームとなったフィンテックでは、数多くのスタートアップが誕生したほか、メガバンクや地銀、大手の証券・保険会社に加え、通信キャリアなども巻き込み、大きなトレンドとなった。
本書のテーマである「エンベッデッド・ファイナンス」は、日本語では「組み込み金融」、「埋め込み金融」、あるいは「モジュラー型金融」などと呼ばれ、「金融以外のサービス提供企業(非金融企業)が、既存サービスに金融サービスを組み込んで金融サービスを提供する」ことを意味する。
代表的なサービスとして、EC サイトが提供する「後払い(決済)」サービスなどが挙げられ、フィンテックの次の一大トレンドとして注目されつつある。エンベッデッド・ファイナンスに対する取り組みはフィンテック同様、欧米企業が進んでいるが、国内企業もメルカリ(メルペイ)の「ふえるお財布」(資産運用サービス)やファミリーマートによる消費者金融事業への参入など、動きが盛んになっており、2021 年以降、金融機関はもちろんのこと、小売・通信・サービス・航空・ITといったさまざまな業界の企業を巻き込み、大きく進展していくと予想される。
本書では、エンベッデッド・ファイナンスの定義、背景などの基本から、国内外の具体的なサービスの紹介、AFA の取り組み、金融/非金融企業それぞれが考えなければならない対応策など、さまざまな観点から世界的に大きな盛り上がりを見せているエンベッデッド・ファイナンスの世界を詳細にレポートする。
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商品情報
- 著者
- 城田真琴
- ジャンル
- コンピュータ・情報 - IT・Eビジネス・資格・読み物
- 出版社
- 東洋経済新報社
- 書籍発売日
- 2021.12.10
- Reader Store発売日
- 2021.12.10
- ファイルサイズ
- 12.7MB
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この作品のレビュー
平均 3.9 (19件のレビュー)
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IT業界で目ざとく流行りのテーマにアプローチするNRIの城田真琴さん。2009年にはクラウド(『クラウドの衝撃』)、2012年にはビッグデータ(『ビッグデータの衝撃』)、2015年にはパーソナルデータ…(『パーソナルデータの衝撃』)、2016年にはFintech (『FinTechの衝撃』)と次々に衝撃を紹介してきた。その後、間に『大予測 次に来るキーテクノロジー 2018-2019』と『デス・バイ・アマゾン』の2冊を挟んで久しぶりに紹介される衝撃が本書となる。
著者はエンベデッド・ファイナンスを「金融以外の事業を展開する非金融企業が、既存サービスに金融サービスを組み込んで提供する」ことと定義する。消費者と日常的に多くの接点を持つ小売や通信企業がフロントとなり、既存の金融事業者や新興フィンテック企業が黒子となってサービスを提供する形となる。黒子となる企業は「BaaS (Bank as a Service)」を提供するために彼らの持つ事業免許やインフラをAPIなどを通して提供しているのだ。
この動きはグローバルなトレンドで、Apple、Amazon、GoogleといったGAFAを始めとしたIT企業から、Tesla、Ford、Walmartなどの既存大企業がこぞって自らの事業と連携した金融サービスの提供を始めている。日本でも、Zホールディング、LINE、メルカリ、KDDIが代表的な事例として挙げられる。また、BaaS事業についても、住銀SBIネット銀行、GMOあおぞら銀行、ふくおかフィナンシャルグループのみんなの銀行、ベンチャとしてはFinatextなどの取り組みが紹介される。消費行動の中で金融サービス(ローン、保険)が必要な段階でエンベデッドされた金融サービスをシームレスにかつ保有するデータを活用して最適化して提供することでコンバージョンを高めることができることから、彼らが同時に金融サービスまで提供することには合理性がある。IT技術と金融領域での規制緩和によってこういったことが可能になったといこともあるが、FinTechの潮流に乗って、ロボアドバイザーやアルゴリズム投資を提供すべく立ち上げられた新興FinTech企業が新たな収益源として注目しているともいえる。もちろん、新興企業だけではなく、大手金融事業者も当然注目している領域となる。
著者は、エンベデッド・ファイナンスとは具体的には何であるかについても説明をしている。その機能・領域を次の5つに分類している ― ペイメント(決済)、レンディング(貸付)、インシュアランス(保険)、インベストメント(投資)、バンキング(銀行)だ。この中ではQRコード決済などキャッシュレスの流れの中で決済がもっとも市場規模が大きい。活用する企業にもメリットが大きい領域でもある。また、旅行などの少し大きめの買い物をするときにBNPL (Buy Now Pay Later)を提供するレンディング機能(そういえば、最近アコムのかまいたちのCMが目立つ)やTeslaがやっているように利用データを提供する代わりに最適な保険(消費者にとってはお得)を提供することも浸透していくことになるかもしれない。ShopifyやBASEなどオンラインでの販売を提供するツールが拡がることもエンベデッド・ファイナンスの流れにとっては追い風であろう。
そういった中でもうまく立ち回っている企業としてゴールドマン・サックスが挙げられているのが意外であるが、ほとんどのトレーダーを解雇して今では全従業員の1/3がエンジニアとなっているというので驚きだ。こういった動きは日本企業ではおそらく不可能だろう。
そういえばGoogleによるpringの買収が何を意図したものかわからないが、気になる。GAFAに関してはApple Cardは成功しているが、それほど驚くようなことはしていない。一方、Google Plexの停止発表やFacebookが中心となったLibra改めdiemのプロジェクト終了など大きな取り組みは失敗に終わっている。Amazonも金融サービスに取り組むインセンティブとケイパビリティを十分に持っていることからグローバルな動きについても注視していくことが必要だろう。
また日本では、楽天グループが金融事業を収益の軸にも据えてうまく経済圏を回しているが、Zホールディングも「シナリオ金融」というコンセプトを掲げて対抗しようとしている。「メディア事業」「コマース事業」に次ぐ第三の柱としてPayPayを中心に金融事業を育てることを考えているということだ。LINEとの統合後、それまでに保有していた金融事業体のブランドをPayPayブランドに統合している。PayPayアプリのスーパーアプリ化を中心に、楽天グループその他に対して優位なポジションを築いていく戦略が見える。大手通信事業者もKDDIは三菱UFJ銀行、ソフトバンクはみずほフィナンシャルグループが提携、ドコモも三菱UFJ銀行との提携など大手金融機関との提携を深めている。
もちろん、こういったエンベデッド・ファイナンスが最も進化しているのが中国であることは言うまでもないだろう。TencentやAlibaba(Antグループ)が二大巨頭だが、平安保険グループも相当に存在感を増している。中国の市場実態についてはコラムなどで触れているが、あまりその記述に多くのページを割いていないが、こちらも先行市場として注目である。
ものすごく新しい情報や、奇抜だったり意外だったりするような考察がされているわけではないが、ざっと外観するにとてもよい本だと思う。
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『クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった』(城田真琴)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4492580824
『パーソナルデータの衝撃――一生を丸裸にされる「情報経済」が始まった』(城田真琴)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4478064830続きを読む投稿日:2022.02.13
2024年2月24日読了。銀行など既存大企業が持つ「融資」「外為取引」などのファイナンス機能をフィンテック企業提供のAPIや小売り企業、決済企業などの機能に「組み込む」すでに生まれている流れについて説…明する本。「銀行の機能は必要だが銀行自体は必要ない」とはすでにビル・ゲイツが喝破した観点ということだが、銀行は電力や水道会社と同じようなインフラ企業になり、優位性は「金をいっぱい持っている」ことだけになってしまう・ユーザーに選ばれる存在ではなくなる、ということか…そりゃあ銀行も目の色を変えるわけだ。エンベデッド・ファイナンスの成功例として「アップルカード」に関する記述が多い、私は知らなかったがなるほどこれは徹底的にユーザー志向なプロダクトで、人気が出るわけだわ…。引き続き世の中の流れに注目していきたい。続きを読む
投稿日:2024.02.25
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