世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論
カルロ・ロヴェッリ(著)
,冨永星(訳)
/NHK出版
作品情報
世界の本当の姿とは? 天才物理学者が「真実」を明かす
「ホーキングの再来」と評される天才物理学者が「真実」を明かす
イタリアで12万部を売り上げ、世界20か国で刊行予定の話題作!
科学界最大の発見であり、最大の謎とされる量子論。
はたして量子論の核心とは何か、それはどんな新しい世界像をもたらしたのかを、研ぎ澄まされた言葉で明快に綴る。
量子は私たちの直感に反した奇妙な振る舞いをする。
著者によれば、この量子現象を理解するためには、世界が実体ではなく、関係にもとづいて構成されていると考えなくてはならないという。
さらにこの考え方を踏まえれば、現実や意識の本質は何か、といった哲学的な問いにも手がかりが得られるのだ――。
深い洞察と詩情豊かな表現にいろどられ、私たちを「真実」をめぐる旅へといざなう興奮の書!
竹内薫氏の解説付き。
7万部突破の『時間は存在しない』著者の最新作!
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商品情報
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 数学・物理学・化学
- 出版社
- NHK出版
- 書籍発売日
- 2021.10.29
- Reader Store発売日
- 2021.10.29
- ファイルサイズ
- 10.7MB
- ページ数
- 240ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (38件のレビュー)
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【まとめ】
1 行列力学
ハイゼンベルクの理論は、電子の運動を記述するのは諦めて、自分たちが観察し測定できるものだけ、つまり、電子が放つ光だけを記述する。すべての基礎に、オブザーバブル(観測可能量)を…据える。
原子内部の電子に関してわたしたちに観察できるのは、電子が放つ光――ポーアの仮説によれば電子がある軌道から別の軌道へ飛躍するときに出す光である。一つの飛躍には、電子が飛び出す軌道と飛び込む軌道の二つの軌道が関係している。したがって、一つ一つの観察結果を、飛び出す軌道を行とし、飛び込む軌道を列とする表の各項に対応させることができる。
位置、速度、エネルギーといった電子の運動を記述するすべての量を、数ではなく数の表で表す、というのがハイゼンベルクの着想だった。電子の位置は、xというただ一つの値ではなく、Xというあり得るすべての位置からなる表で表されており、表の項が示すそれぞれの位置が、あり得る飛躍に対応している。使う方程式はこれまでと同じで、(位置、速度、軌道のエネルギー振動数などの)通常の量をこのような表で置き換えればよい、というのがこの新しい理論の考え方なのだ。
ハイゼンベルクの発見に続き、シュレーディンガーが電子は「粒子ではなく波である」という理論を発表する。ψ(波動関数)の発見である。
しかし、ハイゼンベルクはその理論に齟齬があることに気づく。波は、遅かれ早かれ広がって空間に拡散する。しかし電子は広がらない。どこかに到達するときは、必ず丸ごと一点に到達する。原子から電子が一つ放たれたとしよう。シュレーディンガーの方程式によれば、ψという波は空間の至るところに一様に拡散するはずだ。しかし、現実は一点に到着している。
ここに新たな理論を付け加えたのがボルンだ。
ボルンの理解によると、空間の一点におけるシュレーディンガーの波動関数ψの値は、その点で電子が観測される確率と関係がある。ある原子が粒子検知器に取り囲まれていて、その原子が電子を一つ放出したとすると、検知器がある場所における値は、ほかならぬその検知器が電子を探知する確率を規定する。つまりシュレーディンガーの波動関数は、実体ある何かを表しているのではなく、実際に何かが起きる確率を与える計算手段、ちょうど明日の天気を告げる天気予報のようなものなのだ。
じきに明らかになったのだが、ゲッチンゲンの行列力学についても、これと同じことがいえる。行列の数学はあくまで確率を予測するのであって、正確な数値を与えるわけではない。ハイゼンベルクの形にしろ、シュレーディンガーの形にしろ、量子論は確実に起きることではなく、確率を予測するのである。
観測、確率に続く量子論の第三の着想は、「粒状性」である。わたしたちが暮らすこの物理的な空間は、きわめて小さな規模では粒状であって、プランク定数が、基本的な「空間の量子」の寸法を決めている。
XP-PX = ih
Xという文字は粒子の位置を表し、Pという文字はその速度と質量をかけたもの(専門用語では運動量)を表している。iという文字は-1の平方根を表す数学の記号で、hはプランク定数を2πで割った値である。
2 量子の世界の奇妙な振る舞い
・量子重ね合わせ
光子からなる光線をプリズムによって2つに分割(左経路と右経路)し、それを一つにし、また分かれて2つの検知器(上検知器と下検知器)に到達するような実験器具をつくる。2つある経路のうちのいずれか(左か右)を手で遮ると、光子の半数は下の検知器に到達し、残りの半数は上の検知器に達する。ところが二本の経路をともに開放しておくと、すべての光子が下の検知器に到達し、上の検知器には一つも引っかからない。
これが「量子重ね合わせ」で、一つの光子が「左も右も両方」通っている。いわば、左を通るという状況(配位)と右を通るという状況(配位)、これら二つの配位の量子的な重ね合わせなのだ。そしてその結果、光子はもはや上の検知器に向かわなくなる。二つある経路のいずれか片方だけを通っていたときは、上にも向かっていたのにだ。
しかもそれだけでなく、光子が二本の経路のどちらかを辿るか「観察」するだけで、干渉が消え、上と下両方の検知器に検知されるのだ。
3 実体は存在せず、そこには「関係」があるのみ
観測者は、測定機器と同じように自然の一部である。そのとき量子論は、自然の一部が別の一部に対してどのように立ち現れるかを記述する。光子、石、木、人間といったさまざまな物体は、絶えず相互に作用しあい、一つ一つの対象物は、その相互作用のありようそのものである。
したがって、対象物の属性と、それらの属性が発現する際の相互作用、さらにはそれらの属性が発現する相手とを分離することはできない。さらに、対象物が相互作用していないときにもその属性が備わっていると考えることは余計であって、誤った印象を与えかねない。なぜなら、存在しないものについて語ることになるからだ。
相互作用なくして、属性はない。すべてのものは、なにか別のものへの作用の仕方だけで成り立っている。
では、観測者とは違う、対象者自身についてはどうだろうか?
みなさん自身がシュレディンガーの猫であったとする。みなさんにとっては、毒ガスは発せられたか発せられなかったかであり、自分自身は生きているか死んでいるかのどちらかだ。わたしにとっては、みなさんは生きても死んでもいない。つまり「量子的重ね合わせが存在する」。
関係論的な視点から見ると、この二つはともに正しいといえる。なぜならそれぞれの状態は、みなさんとわたしという異なる観察者との相互作用に関係しているからだ。
ここから導かれるのは、ある対象物にとって現実であるような事実が、常にほかの対象物にとっても現実では限らないということだ。
そこにあるのは、明確な属性を持つ互いに独立した実体ではなく、ほかとの関係においてのみ、さらには相互作用したときに限って属性や特徴を持つ存在だ。
量子論は、物理的な世界を確固たる属性を持つ対象物の集まりと捉える視点から、関係の網と捉える視点へと私たちを誘う。対象物は、その関係の網の結び目なのである。
4 量子もつれ
量子的な重ね合わせの状態にある一対のもつれた光子をウィーンと北京に一つずつ送ると、奇妙なことが起きる。たとえば二つの光子は、両方とも赤であるような状態と、両方とも青であるような状態の重ね合わせになっているかもしれない。さらにそれぞれの光子は、観察された瞬間に、赤か青かが判明する。ところが片方が青だということがわかると、遠くにあるもう片方もまた青なのだ。なぜ、両方とも同じ色になるのか。そこが問題だ。
その答えを知るには、対象物の属性は別の対象物との関係においてのみ存在する、ということを思い出せばよい。北京で光子の色を測定すると、北京との関係での色が決まる。しかしそれは、ウィーンとの関係での色ではない。そしてまた、その逆も正しい。二ヶ所で測定が行われるその瞬間に二つの光子の色を目にする物理的な対象物は存在しないのだから、その二つの結果が同じかどうかを問うことには意味がない。二つの光子の色が同じであるという現象が発現する(つまり二つの光子と同時に相互作用する)相手が存在しない以上、無意味なのだ。
二つの対象物が相関しているという言いまわしは、三つ目の対象物に関する事柄を表しているのだ。相関は、相関する二つの対象物が、いずれも第三の対象物と相互作用するときに発現するのであって、第三の対象物はそれを確認することができる。
何ものもそれ自体では存在しないとすると、あらゆるものは別の何かに依存する形で、別の何かとの関係においてのみ存在することになる。ナーガールジュナは、独立した存在があり得ないということを、「空」(シューニャター)という専門用語で表している。事物は、自立的な存在でないという意味で「空」なのだ。事物はほかのもののおかげで、ほかのものの働きとして、ほかのものとの関係で、ほかのものの視点から、存在する。続きを読む投稿日:2022.09.12
すべてはタイトルに集約されるように、物事は関係において成立し、私が生きているか死んでいるかそれ自体はわからない。相手との関係においてのみ成立するということ。
また、今この瞬間の私の行動がこの世界、今後…の時代に少なからず影響を与えている。続きを読む投稿日:2024.04.08
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