ゴリラの森、言葉の海(新潮文庫)
山極寿一(著)
,小川洋子(著)
/新潮文庫
作品情報
野生のゴリラを知ることは、ヒトが何者か、自らを知ること――アフリカの熱帯雨林でゴリラと暮らした霊長類学者と、その言葉なき世界の気配を感じ取ろうとする小説家。京都大学の山極研究室で、野生のサルやシカが生息する屋久島の原生林の中で、現代に生きるヒトの本性をめぐり、二人の深い対話は続けられた。知のジャングルで、ゴリラから人間の姿がいきいきと浮かび上がる稀有な一冊。
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商品情報
- シリーズ
- ゴリラの森、言葉の海(新潮文庫)
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2021.10.28
- Reader Store発売日
- 2021.10.28
- ファイルサイズ
- 8.7MB
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この作品のレビュー
平均 4.1 (11件のレビュー)
-
人間の独特の能力であるフィクションを駆使して世界の可能性を紡ぎ出す作家と、サルやゴリラを通して人間を理解しようとしている研究者。この対比は、巻末に紹介される両者の往復書簡にて、研究者側が表現したものだ…。本著はまさに、霊長類が保有する物語や現前性について、それを比較探求する事で真理に触れんとする試み、或いは、その探求や比較の楽しさを伝える本だ。
例えば、子殺しの意味について。社会生物学的に解釈すれば、自分の子どもを殺したオスは、自分の子どもを守れなかったオスより強い。だから一層、これから作る子どもを守ってくれるに違いない、とメスが見なす。こうした仮説は、人間側が自らの感性でゴリラ側に当て嵌めた物語だが、その証拠も出てきているとの事。そこには進化論的意義、遺伝子の利己性と共に、種全体の社会的関係性が関与する。メスが抵抗仕切れない肉体的差異とか、殺しが容認される社会形態とか、それでも全滅はしない合理性とか。他にも、オランウータンを除く昼行性の霊長類では、メス単独、メスだけの集団は存在しないが、オスは単独やオスだけの集団は見られるなど。
では人間は。人間ばかりが、自然に反する独自の物語を用いて、その自然状態を意識的、持続的に変更させていく。フィクションはまさしく人工物であり、言葉の意味を組み合わせる事で、複雑な社会形成を可能にした。同じ日々を繰り返す霊長類と、日々の変化を積み重ねる霊長類の差。その原点としての言葉の海という表現は、まるで原始の海がシアノバクテリアから多様性を構築したように、一方では、変わらぬ森と共に生きるゴリラの対比。二つのアプローチによる書。素晴らしい。続きを読む投稿日:2023.05.03
昔、立花隆の「サル学の現在」を読んで、人類の先祖がチンパンジーのように残忍ではなく、ゴリラのように穏やかな性格だったら我々はもっと平和な歴史を刻んだだろうなと思っていた。どうやら、僕の考え違いだったよ…うだ。山際先生は集団間の暴力の理由を言葉、死者の利用、共感性としている。ユヴァル・ノア・ハラリ「サンオピエンス全史」言う処の認知革命が原因なんだな。
山際先生の近親相姦のタブーの起原説に納得した。育てる経験が性的な関心を抑制する。そのインセスト・タブーがあるからこそ娘を他の家に差し出すことができる。また、類人猿のメスは親元を離れて繁殖するとある。
ここでレヴィ・ストロースの云う「女の交換」が発生する。構造主義者は女の交換ありきで考えているけれど、親と子供が過ごす時間、またメスが独立して作る関係性があってのことだと思う。
橋本治「源氏供養」のことも思い出す。紫の上にとって光源氏は父親のような保護者だったはず。とんでもない裏切りだよね。
メスにとっての前のオスの子供を今のオスが殺す子殺しは立花隆の本で知っていた。ゴリラにも見られるという。人間の目から残酷だと考えるのは不遜かもしれない。メスは何故子供を殺したオスを受け入れるのかという見方もそういう風にゴリラは認識しているか判らないともある。しかし、知能の高いゴリラがそう認識しないなんてあるんだろうか。
最後は山際先生と小川さんの屋久島探索。小川さんが森の中を歩くようという作家感が語られる。変なサル、人類はどんどん変なことになっちゃっているなあ。
そんなことを考えさせられる読書だったと思う。続きを読む投稿日:2024.06.12
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