思春期ってなんだろう
金子由美子(著)
/岩波ジュニア新書
作品情報
保健室で思春期を生きる生徒たちの悩みと長年向き合ってきた著者は,教室で「からだ・こころ・性の学習」に取り組んでいます.成長によるからだと心の変化を知ることで,自己肯定感が生まれ,意欲的に生きていく基盤がつくられていきます.本書は,その実践にもとづいて思春期を豊かに生きる知恵や考え方を助言します.
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商品情報
- シリーズ
- 思春期ってなんだろう
- 著者
- 金子由美子
- 出版社
- 岩波書店
- 掲載誌・レーベル
- 岩波ジュニア新書
- 書籍発売日
- 2008.06.20
- Reader Store発売日
- 2020.12.24
- ファイルサイズ
- 3.5MB
- ページ数
- 206ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (5件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
筆者の金子さん、公立学校の先生でありながら、何冊も本を書いていらっしゃるということに驚いた。どんな仕事であれ、自分のメッセージを伝える方法はあるんだなぁと。
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自己肯定感が低い今の子どもたち。それがウツとか、暴力とか、いろいろなところにつながるのでしょうか。いろんな子どもの事件は、メディアでかなりショッキングに取り上げられる。大半の子は、健全なのに。それを私たちは理解して、子どもの目線になって関わっていくべきである。
この一部を切り取って、教材にしたら、子どもたちはものすごく共感しながら、自分の思いを表現したり、自分の中で考えるきっかけになるんじゃないかな。思春期ってとっても不安の中で生きている。追い詰める大人にはなりたくないなと思う。必死に生きている思春期の子どもたちの理解者でいたい。みんな一生懸命なんだから。投稿日:2012.08.11
〇 新書で「学校生活」を読む①
金子由美子『思春期ってなんだろう』(岩波ジュニア新書、2011年〔2版〕)
・分 野:「学校生活」×「自分を読む」
・目 次:
序章 思春期っていつからなんだろう…
1章 からだの変化、こころの変化
2章 だれかとワタシ、ボクとだれか
3章 泣いて、笑って、家族
4章 未来を考える
5章 社会を見る目
6章 自立への階段
おわりに
・総 評
本書は、いわゆる「思春期」における中高生が抱えやすい悩みやその心理を解説した本です。著者は、埼玉県の公立中学校で養護教諭を務め、思春期教育や性教育にも携わってきた人物です。
中高生の言動に対して、大人たちは「思春期だから」とか「難しい年頃だから」という言葉でまとめがちです。ただ、ここで言う“思春期”とは一体どういうものなのか――実は、大人たちもよく分かっていなかったりします。著者は養護教諭として多くの生徒たちの悩みを聞いてきた経験から、思春期における中高生の心理などを解説しています。この本を読んで面白いなと思った点を、以下の3点でまとめます。
【POINT①】カラダの変化がもたらすココロの変化
中高生の時期になると、子どもから大人に向けた体づくりが始まるとともに、第二次性徴を迎え、性的な成熟に必要なホルモン分泌が始まるため、感情が高まったり、落ち込んだりして精神的に不安定な状況になりやすいと言います。また、この時期になると、親からの「自立」という大きな課題にも向き合わなければならず、反抗しながらも常に孤独感を感じるようになります。こうした肉体的にも精神的にも不安定な時期を乗り越え、自立に向けて自分らしい生き方を探求するためには「これまでの自分をゆっくり見つめ直すことのできる時間」や「ひとりだけでゆっくりと過ごす場所」が必要だと、著者は指摘しています。
【POINT②】自分を“評価”するのは誰か?
中高生として「おとなと子ども中間地点」に立った時、今までは「おとなからの評価」を基準としていた子どもたちは、次第に「友だちや仲間からの評価」を気にし始めます。その中で、自分の言動がどう評価されるかが分からず、自分をうまく表現できなくなることもあります。また、親からの自立を目指す中で、精神面での「ひとり立ち」が心細く、それまで依存していた親と同質の、安心できる関係性を「親友」に求めてしまいがちです。しかし、そうした「依存」を軸とした関係は長続きせず、相手との関係性を維持していくには「お互いが精神的に自立したうえで、向きあうこと」が大事だと著者は指摘しています。
【POINT③】“理想”の大人と“現実”の大人の狭間で
思春期を迎え、子どもから大人になる過程で、子どもたちは「自分の理想とするおとなのモデル」を探します。その際、親は最も「身近なおとな」として観察や評価の対象になりますが、実際は日々の仕事に追われる中で「疲れているおとなや、愚痴ばかり言うおとな」が多く、子どもたちが理想とする「生きていることを楽しんでいるおとな」を見つけることは難しいかも知れません。こうした“現実”を前に、子どもたちは親に批判的な態度をとることもありますが、著者は「単純に親を批判するところから一歩ふみだし、どうすれば子どももおとなも暮らしやすい社会になるか」を考えて欲しいと呼びかけています。
著者は、思春期について「自分とはなにかを追求し、自分の特徴や性質を受け入れて、自分の正体を自己肯定していかなくてはならない時期」としています。もちろん、その方法は人それぞれであり、本書にも明確な“正解”は書いていません。ただ、この本には同じような悩みを抱える同世代の“声”が多く掲載されており、自分だけが“孤独”に悩んでいるわけではないと知るだけでも、だいぶ気持ちは軽くなるのではないでしょうか。著者の書きぶりが少し「お説教」っぽく感じるかも知れませんが、いわゆる「思春期」を理解するために――保護者の方も含めて――是非、手に取ってほしい一冊です。
(1454字)続きを読む投稿日:2023.04.13
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