ものづくりからの復活―円高・震災に現場は負けない
藤本隆宏(著)
/日本経済新聞出版
作品情報
極端な円高対応による工場の海外移転、過剰な震災リスク対応による効率の低下――。日本のものづくりの強みを殺す経営を黙認は出来ない! ものづくり経営研究の第一人者が危機の時代に選択すべき戦略を大胆に提示。製造業経営の名著とされるロングセラー『日本のもの造り哲学』以来の単著。ものづくり経営に関する俗説を覆す内容で、意外性に満ちています。
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商品情報
- 著者
- 藤本隆宏
- 出版社
- 日経BP
- 掲載誌・レーベル
- 日本経済新聞出版
- 書籍発売日
- 2012.07.25
- Reader Store発売日
- 2020.10.05
- ファイルサイズ
- 3.6MB
- ページ数
- 504ページ
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この作品のレビュー
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-
引き続き藤本氏の著書。
「…今回の大震災からの復旧局面では、被災した民間企業の本社と現場の間で、見事な連係プレーが見られ、目覚ましい復旧が多くの被災現場で実現した。工場も、鉄道や道路の幹線も、そして送…電網も、である。要するに『復旧』という目標は、現場にとっても本社にとっても明瞭であるから、このところ本社と現場の間がギクシャクしていた会社であっても、久しぶりに両者の見事なチームプレーが見られたのである。
このように、日本の組織は、概して復旧・復興の局面には強い。再建の目標が定まれば、互いの配慮と幅広い分業が、高い調整能力をもたらすからだ。過去、戦災後・災害後の再建の速さで世界を驚かせてきた。今回もそうした現場の統合型の組織能力が発揮され、本社・本部の力がそれに合流すれば、震災直後にあった日本への世界の同情や好意は、長期的には世界からの信頼に転化しうる。被災地のみならず、日本全体の組織体にとって、今が正念場であると同時に、チャンスでもあるのだ。」
著者は徹底して「日本の良い現場を残そう」と主張している。その視点で、震災後の復旧で組織能力が発揮されたというのは、説得力がある。
その他、以下に引用。
「要するに、よく言われるところの円高も震災も税金も電力供給も、産業空洞化の直接の原因ではない。仮にマクロレベルの『産業空洞化』を『自然な産業構造転換を超えたペースで国内現場の消失が進み、国民の生活水準を必要以上に低下させること』と規定するなら、その直接の原因は、円高などの客観要因でなく、円高による空洞化を不可避と考える経営者の心理の中にこそある。」
「企業の現場の組織能力は、その現場がたどった歴史的経路と、企業間・現場間の能力構築競争を通じた組織的な努力によって錬成される。一方、製品のアーキテクチャも、技術や市場ニーズの特性の影響を受ける形で進化する。そして、ある企業の現場の組織能力と、当該製品・工程のアーキテクチャとのフィット(相性)が良い場合に、その現場の競争力(生産性、原価、リードタイム、不良率など「裏の競争力」)が高まり、それが市場におけるその製品の競争力(価格や商品力など「表の競争力」)につながる。」
「たしかに、これまでの日本のサプライチェーンは、今回のような広域の激甚災害はあまり想定しておらず、その意味では競争力に偏していたかもしれない。しかし、とくに円高や不況に直面する近年の日本の貿易財産業では、国内の現場や製品の競争力を低下させながら、ひたすら災害に対する頑健性を強化したのでは、日々のグローバル競争で劣勢となり、次の大災害を待たずに衰退・消滅する危険さえある。つまり、競争力強化の視野を欠いた頑健性の追求は、長期的には得策ではない。」
「シンプルなモジュラー型製品の比重が急拡大したため、世界中の製品設計は平均すればシンプル化の方向へ向かったわけであるが、その反面、個々の顧客の機能要求や、製品に対する環境・エネルギー・安全制約などは、所得の上昇により高まる傾向がある。日本の時代がまた来るとまでは言わないが、少なくとも直近の悪材料に引きずられて、日本の『複雑なインテグラル型製品』に対する極端な逆風が、未来永劫続くと考えるべきではなかろう。」続きを読む投稿日:2018.10.08
・ものづくりとは、設計情報(顧客にとっての付加価値)をものに作り込み(媒体に転写し)、市場までの「設計情報の流れを」を作り、「良い設計・良い流れ」で顧客や社会を満足させ、結果として売上げを得る経済活動…のこと。続きを読む
投稿日:2015.01.18
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