表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬
若林正恭(著)
/文春文庫
作品情報
第3回斎藤茂太賞受賞! 選考委員の椎名誠氏に「新しい旅文学の誕生」と絶賛された名作紀行文。
飛行機の空席は残り1席――芸人として多忙を極める著者は、5日間の夏休み、何かに背中を押されるように一人キューバへと旅立った。クラシックカーの排ガス、革命、ヘミングウェイ、青いカリブ海・・・・・・「日本と逆のシステム」の風景と、そこに生きる人々との交流に心ほぐされた頃、隠された旅の目的が明らかに――落涙必至のベストセラー紀行文。特別書下ろし3編「モンゴル」「アイスランド」「コロナ後の東京」収録。解説・Creepy Nuts DJ松永。
いざキューバへ!
ぼくは今から5日間だけ、
灰色の街と無関係になる。
ロングセラー傑作紀行文
書下ろし新章
モンゴル/アイスランド/コロナ後の東京
俺は誓いました。
あなたのように
生々しく生きていこうと。
(Creepy Nuts DJ松永「解説」より)
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商品情報
- シリーズ
- 表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬
- 著者
- 若林正恭
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2020.10.07
- Reader Store発売日
- 2020.10.07
- ファイルサイズ
- 16.3MB
- ページ数
- 352ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (477件のレビュー)
-
リトルトゥースである。
彼らのラジオは、いつも、何かしらの違和感を凝りほぐしてくれる。
寝不足の通勤電車で読んだ、DJ松永の解説。思わず嗚咽でも漏れてしまうのではないかと、焦りつつも読むのを止めるこ…とができなかった。だから、くしゃみと咳が同時に出てしまったようなふりをして、その場を乗り切った。自意識過剰である。
違和感と自意識。
そんなものを常に抱えている人、この国で生きづらさを抱えている人にとって、若林さんの表現は救いとなる。
作品の中で、自身を「少数派のくせに一人で立つ勇気を持たず、出る杭のくせに打たれ弱くて、口が悪いのにナイーブで、それなのに多数派に賛同できない」と表現している部分があり、共感しすぎて首がもげそうになるほど頷いた。若林さんは、ご自身の感じ方や価値観を言葉にするだけでなく、自分そのものを表現することにも長けている。
P42「5日間、この国の価値観からぼくを引き離してくれ。同調圧力と自意識過剰が及ばない所までぼくを連れ去ってくれ。」
P61「誰かの顔色をうかがった感情じゃない。お金につながる気持ちじゃない。自分の脳細胞がこの景色を自由に、正直に、感じている。」
組織に所属している以上、上司の言うことは聞かないといけない。逆らうことは「くびにしても構いません」と言っているのと同じこと。理不尽なことを言われても、会社からお給料をいただいて生活をしている以上「わかりました」と笑顔で言って、淡々と仕事をこなさなければならない。言いたいことが言えない。
違和感。
絶対に自分が正しいとは言ってない。でも、いくら会社に所属しているからって、なんでも上司の言うことを聞かないといけないなんて、会社に人質を取られているようなもの。言いたいことが言えない。
違和感。
違和感。
会社を辞めようにも、生活やキャリアを考えると誰しもすぐには今の会社を辞めることができない。それを見透かされ、利用される。搾取。
違和感。
違和感。
違和感。
違和感。
違和感で満たされるわたしの心。
P75(ゲバラの名言)「明日死ぬとしたら、生き方が変わるのですか?あなたの生き方はどれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」
明日死んでも後悔しない生き方をしているつもりでも、きっと目前に死が迫ったら、後悔の念で押しつぶされるだろう。わたしはもっと言いたいことを言いたい。こんな違和感にまみれたまま死にたくない。
表参道のセレブ犬はきれいに手入れをされ、飼いならされている。でも、カバーニャ要塞の野良犬はちょっと汚いけど、自由がある。そう、自由なのだ。
今、わたしがほしいもの。自由と楽。
それは今のわたしを満たしてくれる。
でも、同時にとても大切な何かから目をそらしているのではないか、という気持ちにもさせられる。
大切な人、と呼ぶべきポジションにいる人との関わり。
それは、自分と向き合うことでもあって、自己嫌悪との闘いでもある。
けれど、自由と楽からは得がたいものが、きっとある。
わたしはそこから逃げているような、そんな気がしている。
人と関わることにこんなに疲弊していても、まだそんな風に思う自分がいる。
どうしてこんな風に自分を追いつめる。
周りがみんな結婚して子どもがいて、幸せそうだから?
同じものを、わたしは欲しいのか?
まさか。
本当に?
だってそれではストレスにさらされてばかりになってしまう。
だから楽と自由を選んだのに。
自分の選択に自信がないの?後悔しているの?
楽と自由を選んだのに、一方で選ばなかった人間関係を後悔する。
なんというめんどくさい性格なのだ。
P315「ずっとぐじゅぐじゅしてて、熱くて、抑圧されていて、でもある瞬間、誰もが口を開けてドン引きするぐらい吹き上げて一瞬で空に消えて行っていいならば、ぼくがずっとぐじゅぐじゅして抑圧されて恥ずかしいから熱い部分を隠していることも、これから死ぬまでずっとそうであることも救われる。そして、自分でそれを肯定できる。」
P316「人間は欲張りな生き物だ。安定と安全を求めるくせに、それに飽きると不安定と危険が恋しくなる。死にたくなるけど、生きてるって実感したい。」
よく友達に言われるんだ。「わざと自分で自分を不幸にしているよね」って。そうなのかもしれない。自分の歩いている道がでこぼこの不安定な道だって自覚はある。でも一方で平坦な道では生きてるって実感がない。だから、わたしはこれからもでこぼこ道を選んで生きてくんだろう。生きてる実感がほしいから。人と関わって、違和感を感じて、大切な人と向き合って、傷ついて、絶望して。だから時々逃げるんだろう、自由と楽に。この苦しみを、表現することができるかどうか。人生がその繰り返しであることに、諦観と希望を持って、喜びと感じることができるかどうか。
若林さんがキューバへ行こうと思ったきっかけ、そこで得た日本との違い、日本が大切にしているものへの気付き、自分の価値、結婚願望、父との別れ。
それらについても触れられていて、すごく胸が詰まったのだけれど、それをここに載せると作品の魅力が低減してしまうだろう。若林さんの旅と心の動向はセットになっているので、その流れの中で感じていただきたい部分だ。ここでは割愛する。続きを読む投稿日:2020.11.03
I was pleasantly surprised by this book. I thought it was just a travelogue, but it was much more th…an that.The author, Wakabayashi, uses his journey to explore the conflict and frustration he feels between himself and the world around him. He does this with a delicate sensibility and a pure heart.The book was especially moving when he wrote about his late father. This brought the book full circle for me and made me appreciate Wakabayashi even more. I have always liked him, but now I like him even more.The fact that this book is so appealing is a testament to Wakabayashi's own appeal. It was a pleasure to get a glimpse into his raw, vibrant life.続きを読む
投稿日:2024.04.21
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