影を呑んだ少女
フランシス・ハーディング(著)
,児玉敦子(訳)
/東京創元社
作品情報
幽霊を憑依させることのできる体質の少女メイクピースは、母亡きあと、父方の一族の屋敷に引きとられる。メイクピースが生まれる前に亡くなった父は、死者の霊をとりこむ能力をもつ古い一族の出だったのだ。一族の不気味さに我慢できなくなったメイクピースは、屋敷を逃げだそうとするが・・・・・・。『嘘の木』でコスタ賞を受賞した著者が、十七世紀英国を舞台に、逞しく生きる少女の姿を描く歴史ファンタジー。
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商品情報
- シリーズ
- 影を呑んだ少女
- 著者
- フランシス・ハーディング, 児玉敦子
- 出版社
- 東京創元社
- 書籍発売日
- 2020.06.19
- Reader Store発売日
- 2020.06.22
- ファイルサイズ
- 1.4MB
- ページ数
- 443ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (12件のレビュー)
-
ピューリタン革命直前の騒然とした英国。10歳の少女メイクピースは、母と二人小さな町に、誰も信じず、ひっそり暮らしていたが、毎晩襲ってくる悪夢に悩まされ、毎月のように母に古い墓地の礼拝堂に置き去りにされ…ることに反抗心を感じていた。ロンドンの暴動に巻き込まれて母を亡くした彼女は、彼女の中に入りたがっている母の霊を引き裂いてしまう。罪悪感を抱いた彼女は、湿地に幽霊が出るという噂を聞き、それは母ではないかと希望を抱く。しかし、そこには旅芸人が捨てた死んだクマがいるだけだった。クマの霊とぶつかり、感情や経験を共有した彼女は、そうとは知らずクマの霊を取り込んでしまい、意識を失っては暴れるようになった。ほどなく父親の実家から迎えが来て、グライズヘイズの大きな屋敷に連れて行かれるが、彼女は、家長フェルモット卿に死者の霊を感じる。同じ婚外子の異母兄ジェイムズと出会った彼女は、一緒に脱走しようと持ちかけられるが、二人の脱走計画は、それから2年以上失敗ばかりだった。満を持して決行を決めた十二夜の夜、彼女は「相続」の場面を目撃する。それは、被相続人が取り込んでいる古い先祖霊を、相続人が取り込むことで、それによって居場所を失った自らの霊が消滅してしまう危険を帯びたものだった。自分が屋敷に留め置かれている理由が、その霊たちの入れ物となるためだったと知り、脱走の必要をそれまで以上に感じていた彼女だったが、ある日、一族の霊を抱えていたサー・アンソニーが戦死し、その場に居合わせたジェイムズがその器となったことを知る。そして、急に具合の悪くなった家長フェルモット卿の持つ霊の器とすべく、一族は彼女への「相続」準備を始める。
ピューリタン革命を背景に、自らの力を精一杯使って、味方を増やし、たくましく生き抜いていく少女の姿を描くファンタジーホラー。
*******ここからはネタバレ*******
時は、カトリックとピューリタンが争い、国王と議会が戦う時代。フェルモット一族には霊を取り込む能力があり、宿した古い霊たちの力を使って強い権力を維持していた。私生児ではありながらその能力を受け継いでいだメイクピースは、一族の入れ物となるために引き取られたが、彼らの禍々しさに耐えられす、脱走を試みるが、そこで役に立ったのが、意図せず取り込んでいたクマで、その後も、その力を使って役に立つ人物を取り込み、頭の中に複数人物を住まわせ、最後には上手に使いこなすことによって危機を脱する……と言うお話です。
序盤、彼女が「相続」を目撃し、自らに霊を取り込まされる番になるあたりまでは、ツッコミどころ満載ながら惹きつけられて読みましたが、他の女スパイと連携して王宮に入ったり、敵地に侵入して裏切り者のシモンドと取引するあたりでは、もう、まだ終わらないの?と苦痛になってきました。
それぐらい長くて(436頁)、複雑で、私には、いきあたりばったり感が強く感じられました。
まず、幽霊についての考え方に東西の差を思い、いろいろと疑問が起こりました。
母の霊が「入れて」と言ったとき、彼女はよろい戸を開けていますが、肉体がなくても扉に阻まれるものなの?
「害虫駆除」の名の下、死者の霊が弄ばれ、「追いかけまわして、幽霊が力尽きるのを待っている」とありますが、幽霊って疲れるの?
霊には「潜入者」と他の霊があるようだけど、潜入者は健康で無傷、他の霊は締め付けられて変形している。でも、潜入者は殻を突き破らないといけないから、時々核が流れ出るという危険がある。霊に形や大きさ、核があるんだ???そして、その一部は、損なわれることがあるっていうことなの?
メイクピースに取り込まれた霊は、彼女と生死をともにするものだと思われていたが、同居人の一人のリヴウェルが「おれは精いっぱい、自分の魂に磨きをかけたからな」「長くとどまれば、また傷がつくじゃないか」と言っている。どうやって磨き、どうやって傷がつくのか???
物語の運びも、彼女が屋敷を脱出してからは都合よく進みます。
レディ・エイプリルのフード付きの外套を奪って彼女のふりをしたメイクピースは、帽子なんてかぶっていなかった筈なのに、髪を帽子の中に押し込むとか、屋敷の外の世界や貴族のことを殆ど知らない彼女が、女スパイのヘレンとうまく渡り合って協力を得ることができたり、しまいにはヘレンのほうがリードしてくれたり、勅許状をさがすために手当り次第壊されていたホワイトハロウで、結婚式のため舞踏室が掃除されるとか、ジェイムズとメイクピースが、まだ古い幽霊を宿していると勘違いさせたまま屋敷に戻った時、ちょうどあと1時間程度で家長が死ぬところだったり、潜入者で一族側だったレディ・モーガンが、最後にはメイクピースの味方になってくれ、必殺技を繰り出して古い幽霊をひきさき「この技が使えるのは一度きり」と言ったり、レディ・モーガンが体をのっとって、霊保持者のふりをしてくれているのにメイクピースはうっかり足で犬をなでていたり、他の霊保持者が死んだときには棲家とされるべく襲われているのに、最後の一人、レディ・エイプリルのときには、なにも起きなかったり。
難しい表現もありました。
「メイクピースの心には山のごとき希望があった。それは、気力もくじけそうなほど暗く立ちはだかっていて、とても登れそうには思えなかったが、ようやく正面から見すえてみた」この希望、英語では何なんだろうと好奇心。
日英翻訳の難しいところもありました。
300頁、「助かるのか?おれは人殺しじゃないんだよな?」「ちがうよ」
きっとこれが直訳なら、英語ではYesとNo。日本語だと両方Yesですよね?
本作で、著者の邦訳作品3つを全部読んだことになりますが、私の一番のおすすめは「嘘の木」です。続きを読む投稿日:2020.07.21
「嘘の木」が面白かったので、引き続きフランシス・ハーディングの小説を読んでみた。今回の小説はミステリではなく、ゴシックファンタジーと言うべきか。よくこんな設定が思いつくなあ。舞台は17世紀の英国、ピュ…ーリタン革命が起こった内乱の最中、死者の霊を取り込む事ができる一族の末端に生まれた少女の生き様を描いたもの。ほとんど知らないチャールズ1世の統治時代、wikiでちょっと調べてみたり。前回の小説と同様、たくましく、真っ直ぐな少女メイクピースが良い。児童文学というカテゴリだが、ホラーな箇所もたくさんあって、私が児童であった時にこの小説を読んだら、トラウマになりそうだ。特に、死に間際の霊の移動が怖い。にも関わらず、絶体絶命な事態に負けじと立ち向かうメイクピースに引き込まれて読んでしまった。正直、好みではなかったけど面白かったです。続きを読む
投稿日:2023.08.28
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