体育会系~日本を蝕む病~
サンドラ・ヘフェリン(著)
/光文社新書
作品情報
「日本人の根性論なんて昔の話」は大間違い! パワハラ、体罰、過労自殺、組体操事故など至る所で時代錯誤な現象が後を絶たない。全ての元凶は、絶対的な上下関係に基づく不合理な「体育会系の精神」。そのメンタリティは学校教育を通じて養われ、この国の文化を形作る。負の連鎖を断ち切るには、わが子を幼少期から「ブラック」に触れさせぬよう親が警戒すべし。解決策はシンプル、「頭のスイッチ」を切り替えるだけ!
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商品情報
- シリーズ
- 体育会系~日本を蝕む病~
- 著者
- サンドラ・ヘフェリン
- 出版社
- 光文社
- 掲載誌・レーベル
- 光文社新書
- 書籍発売日
- 2020.02.29
- Reader Store発売日
- 2020.02.28
- ファイルサイズ
- 17.4MB
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この作品のレビュー
平均 3.6 (15件のレビュー)
-
以前別著にて著者(日本在住24年目)のことを知ったが、今回は日本社会に蔓延る体育会系精神にメスを入れている。著者の主観が目立ってはいたが、ヘドバン並みの回数で頷いていたかも笑
早速内容を追っていきた…い。
第一章:学校は「ブラック」の始まり
懸念材料の一つが組体操。学校側からの、組体を実施する事への同調圧力や皆で我慢しながら成し遂げるという感動の押売り。ほぼ毎年生徒が事故ろうが、やりがいを重視させる。
また、体育会系は言い換えると軍隊的。以降はブラック校則/部則やアルハラへと形を変え、精神は継承されていく。これじゃ終生、滅私奉公ですやん…
第二章:サンドラが見たヘンな職場
元職場での経験をはじめ飲食店や某大手企業の社員を調査。
パワハラ、外国人技能実習生への不当な扱いと悪影響は幅広く…第一章の歪んだ教育が人格の一部となり、自然とブラックな環境を選ぶ。他者にまで精神論を強要するまでがセット。する方も哀れな社畜なんだ。
第三章:女性に冷た過ぎるこの社会
仕事に出産・育児・PTA・身だしなみに至るまで「女性にラクさせたくない社会」。本章での体育会系精神は「前例」と名前を変えている。
「彼女達が頑張れば頑張るほど、政治家は頑張らなくなる」ー 大丈夫じゃないのに前例に従ってこなしていると見られ、鵜呑みにされてしまう…(そこは見破って欲しいのだが…!)
致死量の気合なんか要らない。
第四章:外国人がカイシャから逃げていく
入社早々能力を活かせない部署に配属させられるから。外国人も同じスタート地点で当然という、「新人は玉拾い」論を日本の"カイシャ"はまんま導入している。
他にも原因はあるが、一貫して言えるのは"平等"を都合良く解釈していること。
第五章:「世代論」から抜け出せない人々
所謂「最近の若い世代は…」発言。「自分のことしか考えていない」と憤る旧世代に対し、むしろ今の若い世代の方が現実的な人生設計を図っていると肯定的な意見があるのは新発見だった。
第六章:ニッポンの明るい話
色々挙がっていたが、体育会系特有の上下関係に「良さ」を見出しているのも意外だった。バッチバチな実力社会よりも、年齢という明確な基準で区切るのは平和な生活の為には悪くない方法だという。それが陰湿でさえなければまだ平和なんだけど。
メスを入れるどころか一刀両断せん勢いだったが、やはり卓越した観察眼をお持ちである。
スポ根上等‼︎な体育会系は苦手なタイプだったが「これも体育会系⁉︎」と本書で思うことが多く、自分も毒されていると考え込んでしまった。
今の自分に違和感を覚える人が一人でも増えるだけで、この本の意味がある。続きを読む投稿日:2022.09.04
ホモソーシャルに関連するかな、と思い手に取った本だったけれど、アカデミックなものではなく、かなり偏った思想から綴られているな、と思った。
そのなかで語られているものもほとんどが既に明らかにされている…ものばかり。ただ、全くこういった現状を知らないまま、あるいは見てみぬふりをしたまま過ごしている人も多くいるんだろうな、と思った。
いわゆる”体育会系”の日本文化は、滅びてほしいです。
そうじゃないと、どんどん生きづらい世の中を生み出す悪循環にしかならないと思う。
P.59-
千葉県柏市立柏高校に通っていた高校二年生の男子生徒が部活での過労が原因で自殺した可能性があるとして、医師や弁護士らの第三者委員会が設置されたことが19年12月に報じられました。男子生徒は吹奏楽部に所属していましたが、父親によると部活で平日は7時間、土日祝日は12時間練習しており、高校2年生になってから休みが2日間しかなかったとのことです。
先日、ある人と話していたら「この吹奏楽部には200人いて死んだのは1人だから、彼がただ弱かっただけじゃないか」と言われましたが、これではまるで死んだ人に非があるかのようです。
部活は「思い詰める大人」を作り出す土台になっています。部活は「根性がつく」のは当たっているようで当たっていないのです。「何か物事を始めたときに、それを途中で投げ出さずに最後までやり遂げる」とか、「先輩にしごかれても頑張る」というような意味では忍耐力が身につくかもしれませんが、結局それが人生に不可欠化というと疑わしいです。
(私自身、中学のブラック部活を毎日やめたいと思いながら引退まで耐え、しばらくは”やり遂げた”と思っていたけれど、大人になって振り返ると、心を歪められたというマイナスの経験でしかないことに気付いた)
P.71-
近年の日本社会では、収入が低いのは自己責任、生活保護の人は自己責任、子どもを産んでノイローゼになるのも自己責任、離婚後に子どもの養育費を払わないような人と結婚した女性も自己責任…といった具合に、個人が何か問題に直面すると、即「本人が悪い」と考える人が後を絶ちません。そういう人がいわゆる世論をつくり「生きづらい世の中」にしているのだと思います。そうすると、国や政府にとっては非常に都合が良いのです。
多くの国民が「それは個人の自己責任!」と思ってくれれば、育児をするにあたって家族のワークライフバランスを国が考える必要はありません。たとえば子育てを母親の責任にしてしまえば、本来は政府が担うべき適切なワークライフバランスに基づく子育てしやすい環境づくりという役目からこっそりフェードアウトできそうです。
P.78-
「生活保護者叩き」がたびたび起こるニッポン。
発展途上国で見られるような食べ物にも困る「絶対的貧困」とは違い、先進国で問題になっているのは「相対的貧困」です。しかし相対的貧困について「食べ物は十分あるので、大した問題ではない」と考えるのは間違いです。その国のスタンダードである生活ができないのであれば、貧困としてしっかり認識されるべきです。
P.99-
果たして外資系の会社が「ブラック」と無縁かというと、そうとも言い切れません。確かにニッポン特有の「みんなで団結して会社のために減私奉公!」といった分かりやすい根性論は外資系企業ではあまり見られません。ただ、「操りやすい人材を好む」という傾向に関しては、一部の外国の会社もホメられたものではありません。ある外国の航空会社は世界中から客室乗務員を雇っていますが、クルーをよく見てみると発展途上国出身の人が多いです。規則や価値観の面でブラックな要素が見られるため、発展途上国の人でないと長時間我慢して働くことができません。
先進国出身の人は仕送りすることはありませんし、ブラックな労働条件には不満を持つことも多いのです。会社からしてみれば「面倒くさい人たち」です。
たとえばある社長が「発展途上国の人を優先的に雇う」と発言すれば、日本人はよく「なんて素敵な社長さんなんだろう」という感想を持ちます。でも実際は、「会社に文句を言えない人を雇いたい」が本音である可能性も高いのですから、そこに入社した発展途上国の人が本当に人道的に問題なく働けているのか冷静に観察した方がいいでしょう。
P.118-
私自身も副業は賛成です。たとえば一つの仕事でストレスを抱えていても、他の仕事に向かい、そこでまた違うストレスに見舞われると、以外にも他の仕事のストレスが吹き飛んでしまう、ということは副業をしている当事者からよく聞くのです。
パラレルキャリアとは、あることをするためにある仕事を諦めるという考え方の全く逆をいくもので、可能な範囲で二つの異なるキャリアを同時に進めることです。
P.136-
ニッポンではどうしたことか、「痛いから無痛分娩にして」と言えないような雰囲気があるのです。
医療において「自然であること」がそんなに素晴らしいことであるならば、「虫歯の治療は麻酔なしで行われるべき」という声ももっと聞こえてきてもおかしくなさそうです。
「お腹を痛めて産んだ我が子だからこそかわいがることができる」という発言も、残念ながらまだよく聞かれます。しかしこの主張は矛盾しているのです。この論理でいくと、自分で出産も痛みも経験しない男性は、子どもを「ちゃんとかわいがることができない」ことになってしまいます。
P.170-
18年2月、毎日新聞に掲載された名古屋市在住のある男性の投書が物議を醸しました。保育士の妻が勤務する保育園についての文章です。そこでは、結婚の時期と妊娠の順番を園長が決めていて、その「掟」を破って予定外の妊娠をしたため、男性は妻と園長に「妊娠してすみません」と謝罪したとのことでした。
体育会系の国・ニッポンでは「なんでもかんでも仕事が優先」なので、部下の夫婦生活に口を出すことを「へんてこりん」だと思わない感覚の人も多く、本当に世も末だと思います。
周囲との仕事の兼ね合いの問題はもちろんありますが、人間は機械ではないので、「いつ妊娠するか」についてはコントロールできないことのほうが多いです。妊娠はどんなタイミングでも「おめでとう」と自然に祝福できる社会でないと、少子化は進む一方でしょう。
(新井恵理那アナの妊娠・結婚に対してバッシングの嵐があり、SNSのコメント欄が閉じられたことが記憶に新しいけれど、そのコメント欄は本当に吐き気がするほど陰湿だった。可愛らしいアナウンサーだな、とたまたまインスタをみたら、セクハラの嵐で世も末だと思った。笑って祝福できないなら、せめて何も言うな、というのができない人間が多すぎてしんど…)
P.198-
「出勤ぶりっ子」とは、「こんな悪い条件の中でも仕事のことを考えて会社に来ている私・僕って偉いでしょ?」というアピールをする人のことです。そんな意図はない場合も多いですが、無意識のうちについ「会社に良かれと思って」という判断をしてしまうのがニッポンのぶりっ子社員の性です。
令和元年10月13日に日本列島を襲った台風の日、ツイッターには「#台風だけど出社させられた企業」というハッシュタグがあふれていました。
「台風なのに出社を命ずる会社がある」こと自体、日本の闇を物語っているようです。大規模な台風が来ると会社も予め分かっているにもかかわらず、社員に出勤させることで命の危機が及ぶかもしれないことには知らん顔。このことだけでも相当闇が深いのですが、さらに闇が深いのは、上記のように「#台風だけど出社させた企業」というハッシュタグのもと、社員だと思われる人が出社させられた自分の体験を書きつつも、企業名も伏せているツイートも目立ったことです。企業名を明かしてしまうと、会社側に誰がツイートしたのかバレてしまう可能性があり、そうすると解雇される可能性があるからだと思われます。
P.290-
19年9月1日の時点の公立小中学校のエアコンの設置状況を見てみると、補助金が出ている公立の小学校、中学校、高校、特別支援学級のうち、普通教室(全42万7187室)で33万4936室にエアコンが設置され、パーセンテージにすると設置率78.4%です。
(ここでの、”補助金が出ている公立の小学校~”というのはなんだろう。北海道でも夏は30度越えは当たり前、35度近くになる日もたびたびあるというのに、私はすくなくとも1校もエアコンのついた公立学校を道内で見たことがない。東京に次いで2番目に学校数が多いにもかかわらずだ。情報に踊らされていないか?温暖化の影響で、本州よりも暑い日を観測する日もたびたびある中で、大至急環境を改善すべきだと思う、切実に…)続きを読む投稿日:2023.05.26
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