死ねない時代の哲学
村上陽一郎(著)
/文春新書
作品情報
自分の死に方を自分で決めなければならない。科学史の泰斗が最大の難問を考える。
医療が進歩し、人生の終わりが引き延ばされるようになったことで、私たちは自分の死について具体的に考えなければいけなくなっている。自分の人生をどう終わらせるのか--歴史上はじめて、私たちはこうした問いに答えなければならなくなったのだ。
著者は、まず、私たちが、なぜ死ねなくなったのかを教えてくれる。近代医学の歴史が実は浅いこと。医療の進歩が医者と患者の関係を変えたこと。そして「健康」のあり方が変わってきたこと。その上で、私たちの「死生観」の移り変わりを追う。中世、江戸時代、そして日本と西洋で、死はどう考えられてきたのか。それが、どのように変わってきたのか。に対する考え方はどう変わったのか。
そして安楽死・尊厳死について考える。オランダなどで安楽死が認められるまでに、いくつもの事件があり、社会的な議論があった。日本でも数十年にわたって議論が続いている。そうした経緯を踏まえ、残された人、医療関係者の思いにも目配りしつつ、私たちは死を自己決定することができるのか、考えを深める。
最後に、死を準備するときの心構えについて述べている。死を思えるのは人間だけ。死を選べる社会となったいま、私たちはどのようにして死を考えたらいいのか。心の道しるべを示してくれる。
これまで医療や死について長年、思索を深めてきた著者が、読者と一緒に、人生の終わり方について考えるとき、わきまえておくべきことを、丁寧に伝える一冊。
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商品情報
- シリーズ
- 死ねない時代の哲学
- 著者
- 村上陽一郎
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春新書
- 書籍発売日
- 2020.02.20
- Reader Store発売日
- 2020.02.20
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 232ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
-
日本の死生観の歴史、「遠い親戚症候群」、安楽死の法制化、医療リソース、新生児医療、やまゆり園事件、著者自身の体験などさまざまなことを取り上げ、死や生について書かれている。
国内外のさまざまな安楽死に…関連する事件や事柄が取り上げられている。幅広い話題が拾われており、死をめぐる社会全体の今までの流れをわかりやすく捉えられそうだと思った。
技術が進歩し、分かることや出来ることが増えるたびに本人の決断が求められることとなる。一度決めたら変わらないということではないし、常に予想外はつきまとうと思うが、自分はどう生きてどう死にたいのか、家族はどう思っているのかをタブー視せず、向き合うことが大切だと思った。
引用部分になるが「死は関係のなかで成立し、関係のなかでしか成立しない事柄なのだから、人は死を権利として所有も処分もできない」小松美彦『「自己決定権」という罠』という視点も印象に残った。
続きを読む投稿日:2021.03.16
父は1年半ほど入院して亡くなった。母は入院して2ヶ月でなくなった。父は少しずつ意識が薄らいでいき、母が亡くなったのを聞いて、その2週間後に89歳の誕生日に逝った。母は、病院で何が起こっていたのかよく分…からないまま、2度の転院の後、あっという間に逝ってしまった。それが、およそ1年前の出来事。そしていま、私の夢には母の方がよく現れる。私自身の納得がいっていないのだ。村上先生は私の両親より6歳ほど年下だろうか。前立腺がんを患っていらっしゃるとのこと。前著では確か病名は明かされていなかったはず。義父は60代で胃を摘出し、現在80過ぎで、やはり前立腺がんを患っている。進行が遅いので手術はしないのだとか。本書では死に対する考え方が書かれている。しかし、同時に出生に対する問題点も述べられている。同じ俎上に載せられていることに、はっとさせられた。古市・落合対談についても言及されている。古市さん良かったですね。村上先生が若い人からこういう議論が出てくるのは歓迎すべきことだとおっしゃっていますよ。最後に、村上先生はご自身がカトリック信徒であることに言及されたうえで、それでも、安楽死や尊厳死を否定はしないとおっしゃっている。そして、「寛容」ということばに含まれている価値観が、社会に根付き、効果を発揮すること、それを読者へのメッセ-ジとして残されている。少々脱線しながら本題にもどって行かれるご様子、先生の講義を聴いているような気分を味わうことができた。何度も書いていることだが、私が受けた講義の中で、最も印象深いのが村上先生の「科学思想史」集中講義だった。続きを読む
投稿日:2020.03.26
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