昭和天皇の終戦史
吉田裕(著)
/岩波新書
この作品のレビュー
平均 4.5 (12件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
[ 内容 ]
レビューの続きを読む
戦争責任ははたして軍部だけにあったのか?
天皇と側近たちの「国体護持」のシナリオとは何であったか?
近年、社会的反響を呼んだ「昭和天皇独白録」を徹底的に検証し、また東京裁判・国際検察局の尋問調書など膨大な史料を調査・検討した著者は、水面下で錯綜しつつ展開された、終戦工作の全容を初めて浮き彫りにする。
[ 目次 ]
序 「天皇独白録」とは何か
1 太平洋戦争時の宮中グループ
2 近衛の戦後構想
3 宮中の対GHQ工作
4 「天皇独白録」の成立事情
5 天皇は何を語ったか
6 東京裁判尋問調書を読む
7 行動原理としての「国体護持」
結 再び戦争責任を考える
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]投稿日:2011.04.24
誰しも責任を人に押し付けたがる傾向は多少なりとも持っている。中には明らかに責任逃れをしている大人達を見ると殴り倒してやりたい気持ちよりも憐れみを覚えることさえある。斯くいう私だって、仕事の不手際(自分…ならまだしも部下の大きな失敗など)について、言い訳をしたい気持ちになる事は多い。後からその様な気持ちを抱いた事にまた自己嫌悪にも陥るのだが。
ご存知の様にポーツマス条約により中国に権益を得たのち、日本が中国侵攻を見据えて仕掛けた満州事変、そして太平洋戦争の敗戦へと続く時代を振り返りながら、戦争責任がどこに存在するかを追いかけていく無い様となっている。
確かに当初は陸軍の暴走の様にも映るが実際にはそれを止める事が出来なかった政治体制、そして陸海軍の統帥権を含む最高度の権限を有していた昭和天皇と、実際の責任が誰にあるか特定する事は出来ない。強いて言うなら、陸軍の進撃に酔った国民も、礼賛した経済界も含めて全員であると感じる。それこそ一億総懺悔が相応しく思う。
戦後行われた極東軍事裁判の記録や裁いた側のアメリカの公文書が期限切れにより次々と明らかになっていく中、つまりは「共産主義の防波堤」として日本を利用したかったアメリカと「国体護持」が絶対であった日本との間に奇妙な共通利益が生まれた事で状況は決定してしまったと言える。
戦後の占領軍が来るまでに時間的に余裕があった軍部は国内の公文書を徹底的に焼却処分してしまった。だから裁判自体はアメリカの先入観に始まり、国内は聞き取り調査が主になったことから、軍部、政治家、天皇すらも参加した責任なすりつけ合いの様相を呈する。軍部に至っては承知の通り陸軍と海軍の間には元々ライバル心、敵対心があるから当然のごとく醜いなすりつけ合いとなる。結論は知英米派に属する海軍の勝利は、A級戦犯処刑者が海軍からは誰も出ていない結果からも明らかだ。だが本当にそうだったのだろうか。
人は強い信念を持っていても、環境や周囲との関係性、本人の性格(優しさもその一つ)で空気に飲まれてしまい、例えば反対出来ない様な経験は誰しも持っているのではないか。あまりに強い意見に出くわすと、反論する事自体を諦めてしまい、尚且つ「俺は言ったんだけど、知らん」という態度で逃げようとする。心の内ではもうその時点で責任逃れに陥ってしまってるのは言うまでもない。実際はその様なケースの方が多いだろう。既に責任放棄してるそのくせ、後から後から反対だったという立場を誇示する人は見るに耐えない。
太平洋戦争時も結局は時期的に反対の立場をとった者や、喜んで推進した者、喜ばずとも何か目的があって推進せざるを得なかった者、終始反対の立場をとりながら地位を守り切った者。いったい誰が一番悪いかという議論はしても無駄だ。
本書はあくまで歴史的事実を元に背景から各自がどの様な立場にあったと考えられるか、そこから始まっていく。特定の誰が悪いか、そうで無いかを判断するのはあくまで読者側に委ねられる。
しかしながら、読んでいると誰もが情けなく感じると同時に、その立場・状況に完全に身を置く事などあり得ない傍観者として見ている自分が、勝手にそれら当事者を批判する事は出来ないという焦ったさが付き纏う。
天皇も東條も病没した松岡でさえも、大きな歴史の渦に飲み込まれ、なるべくしてその様な結果になってしまったとしか言えない。唯一期待したいのは彼らが書籍に残すと残さないとに関わらず、その瞬間にどこまで平和を望み、何をしたか言ったかだと感じる。松岡でさえ国益が国民を幸せに出来ると考えていただろうし、最終的に天皇を守るために全責任を背負った東條も安堵の中で最後の仕事を終えた充実感の中で逝ったかもしれない。
結局人間一人、一国家だけではどうにもならない大きな渦の中に人は飲み込まれていく。せめて、生き残った人々はそれを背負いながら生きて欲しいものだ。
明日も会社で誰かの言い訳を聞く。誰かが言い訳を言うなら、その様な心を改善できない自分の責任と逆らえない会社方針などの状況がそうしたものを生み出しているのだと、優しく接してあげたい。続きを読む投稿日:2023.05.30
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。