「つながり」の創りかた 新時代の収益化戦略 リカーリングモデル
川上昌直(著)
/東洋経済新報社
作品情報
サブスクリプション、フリーミアム、レーザーブレード、リース、リピーター、・・・・・・。企業と顧客との「つながり」方が大きな変貌を遂げている。顧客の価値観が「所有から利用へ」と変化し、ものづくり企業にも、もの売り企業にとっても、ビジネスの常識が根本から覆る。本書では、リカーリング(継続収益)を生み出す、ユーザーとのつながりの創りかたを提案する。現在、最注目の「サブスクリプション」をマネタイズ研究の第一人者が説き明かした決定版!
【本書より】
今、勝ち残るビジネスモデルとして注目されているのが、「サブスクリプション」です。実は、サブスクリプションは、「リカーリング」というビジネスモデルの1つです。
私は、実業で役立つビジネスモデルを研究しているので、企業の悩みを聞く場面が多々あります。その中で、リカーリングモデルに変えようとして失敗した話も見聞きしてきました。なぜ失敗するのか。その答えは明白です。「つながり」という視点が圧倒的に欠けているからです。
「つながりが不可欠な時代」に、どうしたら収益を生み出すビジネスモデルをつくれるのか。本書は、その理論を示すことが目的です。
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この作品のレビュー
平均 3.8 (13件のレビュー)
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ユーザーに寄り添い、継続収益を生み出す新しいビジネスモデルを俯瞰し、これに対応する経営のあり方を示す書籍
■リカーリングモデルとは
・十分に利益を得て、しかも利益が継続する。そんな理想的なビジネスモ…デルが「リカーリングモデル」。
リカーリングモデルは収益化の仕組みで、その前提にはユーザーへの価値提案がある。これはプロダクト(製品)の提案では不十分で、ユーザーのジョブ(用事)の達成に寄り添う必要がある。こうした継続的な「つながり」が、収益を継続させる。
■バリエーション
リカーリングモデルには、次のような様々な形態がある。
・サブスクリプション:ユーザーと契約し、月額や年額で課金する定額制や、利用量に応じて課金する従量制などの課金形式で継続収益を得る。
・リピーター:ユーザーに自社のプロダクトを繰り返し利用し続けてもらうことで、継続収益を得る。
・レーザーブレイド:安価な本体を提供した後、利幅の大きい付属品を継続的に購入してもらうことで利益を得る。(本体に課金がある。髭剃り、プリンター)
・リース:ユーザーは、対象となる資産の所有権を持たずに、サービス提供企業に利用対価を支払う。サブスクとの違いは、途中解約ができないこと。
・フリーミアム:無料でベースのプロダクトを提供し、有料アイテムで利益を得る。(スマホゲーム)
■つながりの強化→ニーズではなくジョブへ
リカーリングモデルは、ユーザーとの「つながり」が欠かせない。つながりが強い企業には、次のような特徴がある。
・プロダクトの「販売」ではなく「利用」を重視する。
・ユーザーに対し、生活のアップデートを提案する。
・ニーズではなく、ユーザーのジョブ(片づけるべき用事)を捉えている。
・継続的にユーザーの利用状況を把握し、どんな小さな問題にも対応する。
→カスタマーサクセスの登場続きを読む投稿日:2021.01.09
サブスクリプション、そしてバリューキャプチャー(価値獲得)について勉強したいと思い本書を手に取りましたが違和感を感じる箇所がいくつかありました。まず良かった点を述べます。第1章で紹介されている「リカー…リングマップ」は、なるほどこういう切り分けはあるかもしれないと思いました。そしてリカーリングモデルは単なるマネタイズの手法ではなく価値創造の仕方を変えるものだ、という主張も納得できました。
しかし第3章あたりから怪しくなってきます。この章では、リカーリングモデルでは必要利益を最低限のハードルとして生み出す必要があるという議論が始まりますが、事業存続に必要なのは利益ではなくキャッシュです。また必要利益の中には「リスクへのバッファー」も含まれていますが、これも利益で議論するのではなくキャッシュの多寡で議論すべきでしょう(でなければ黒字倒産なんてことは存在しません。倒産を恐れている事業主は利益ではなく盤石なキャッシュがあるかの方が大事なのです)。多少なりとも財務の経験がある読者はこの章でフラストレーションが溜まると思います。財務の観点については別の本ですが「サブスクリプション」ティエン・ツォ、で主張されている新たな財務指標提案が面白く納得性がありました。
また全般的に本書はプロダクト(あるいはサービス)を軽視しすぎという印象を持ちました。これまで日本企業はプロダクトばかり重視してきたけれども、今の世の中ではその振り子を真逆のユーザー目線に振るべきだ、という論調ですが、私は本当の正解は「両方ともとても大事」なんだと思います。ユーザーの課題解決型だけでなく、人々が思いもよらない価値提案の製品・サービスがあってもいいはずです。財務の世界では「良い財務によって悪い製品を売ることはできないけれど、悪い財務は良い製品を殺すことができる(Good finance cannot sell the bad products, but bad finance can kill the good products)」という言葉がありますが、これを本書に当てはめるなら、素晴らしいビジネスモデル(本書のいうリカーリングモデル)があってもひどい製品・サービスを売ることはできないのです。アップルも、ジョブズ時代ほどプロダクト志向はないのかもしれませんが、依然として「めちゃくちゃ素晴らしい製品」と秀逸なマーケティング、ブランディング戦略が掛け算されてユーザーを引きつける、そして本書が大事だと述べている「つながり」を作っていると捉える方が自然でしょう。
また最終章に「マネタイズは資産を消耗する」という記述がありましたがこれもわかりづらい。マネタイズしようがしまいが設備や建物などは老朽化しますし、土地に至っては減価償却がありませんので一切消耗しません。フェイスブックを例に、マネタイズよりもアセタイズ(資産の蓄積?)を重視せよという記述があることから、おそらく言わんとしていることは、ビジネス初期はとにかく顧客ベース(資産)の拡大を最優先せよ、ユーザーからお金を取ろうとすると顧客ベースが拡大しないぞ(あるいは縮小するぞ)」ということでしょうか。用語の使い方など全般的に気になる箇所が多かったです。続きを読む投稿日:2023.05.02
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