橋を渡る
吉田修一(著)
/文春文庫
この作品のレビュー
平均 3.5 (33件のレビュー)
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吉田修一にハマって読み続けた中の〜一冊。
悪人〜横道世之助、
国宝〜なんてすごい人なんだろう!苦しみ、悲しみ悶えながら読んだ。
吉田リアリズムで説得力抜群
なんせ、あちらこちらのセリフに痺れる
読んだ…のは何年も前
それでもこのくらいのことは思い出す。畏敬の念は拭えない。
好きダァ。
理想は何度も読みたい、現在読書数を目指してるので。
好きな作家ベスト10の一人。続きを読む投稿日:2020.08.06
このレビューはネタバレを含みます
まさに橋を渡るような読書体験だった。春、夏、秋と橋を渡った先には奇妙な冬の景色がある。それは虚構に違いは無いが、我々自身の選択によってはある意味有り得る未来図とも言える。
レビューの続きを読む
初めの三篇は極平凡な純…文学的作品に見える。iPS細胞、東京都議会野次問題、雨傘革命、マララ・ユスフザイ、東京オリンピック等等、当時としてはタイムリーだったのだろう、リアルと地続きの距離感と世界観で物語は展開する。日常に潜む言語化し難いモヤモヤを抉りながら。人間ってこういうところあるよね、みたいな。それぞれの掌編の繋がりは稀薄で、態々一つの作品としてやる意味あるのかな、なんて考えたけれど……。
最終章「そして、冬」に於いて物語は一気に七十年後の未来へと飛躍する。そこはユートピアともディストピアともつかない「不感の湯」のような妙な心地のする世界だった。まるで承前三篇の答え合わせのようだが、果たして正しく解答は導き出せたと言えるだろうか。
文明は発達し、寒暄を忘れ、もはや不感症のようになってしまった冬を抜けると、再び祝福の春が巡ってくる。
善人なおもて往生を遂ぐ。況や悪人をや。独り善がりの正義は時として取り返しのつかない過ちを犯す。然しそんな過ちを回避する為には、自分の信じる正しさを貫き、時に世界すら敵に回して戦う勇気が必要にもなる。正義とは利己や保身ではなく、利他と公共の為に戦う力だ。
而して戦う為に必要な武器は殺意でもミサイルでもない。一冊の本が、或いは一本のペンがあればそれだけで人間は戦える。そうして戦う人は皆、子供も教師も関係無く、一人の気高い兵士だ。
本書を読み了え、今一度橋を渡り、虚構から現実へと帰還を果たせば、橋の向こうには違う景色が見えていることだろう。続きを読む投稿日:2024.04.29
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