連続殺人犯
小野一光(著)
/文春文庫
作品情報
小野さんは殺人犯を描き尽くすことで、我々の内なる「魔」の姿を、闇の中から掘り出してくれた――重松清氏、推薦!
人が人を殺す「その理由」を直接取材しつづけた、傑作ノンフィクション。
21世紀の10大殺人の深い闇に、事件現場と拘置所の面会室で迫る!
CASE 1 北村孝紘 【大牟田連続4人殺人事件】
CASE 2 松永太 【北九州監禁連続殺人事件】
CASE 3 畠山鈴香 【秋田児童連続殺人事件】
CASE 4 鈴木泰徳 【福岡3女性連続強盗殺人事件】
CASE 5 下村早苗 【大阪2児虐待死事件】
CASE 6 山地悠紀夫【大阪姉妹殺人事件】
CASE 7 魏巍 【福岡一家4人殺人事件】
CASE 8 高橋裕子 【中州スナックママ連続保険金殺人事件】
CASE 9 角田美代子【尼崎連続変死事件】
CASE 10 筧千佐子【近畿連続青酸死事件】
解説・重松清
本書は単行本『殺人犯との対話』(2015年11月・文藝春秋刊)を改題、加筆修正のしたものです。
*単行本に収録された〈宇野ひとみ【高槻養子縁組保険金殺人事件】〉は入っておりません。かわりに〈筧千佐子【近畿連続青酸死事件】〉を収録。
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商品情報
- シリーズ
- 連続殺人犯
- 著者
- 小野一光
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2019.02.08
- Reader Store発売日
- 2019.02.08
- ファイルサイズ
- 7.2MB
- ページ数
- 384ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (11件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
10人の連続殺人犯の実態に迫るルポ。
レビューの続きを読む
記憶にある事件も多く、その事件を犯した犯人像が著者の取材によって明らかにされていきます。
全てにおいて辛い事件ではあるが、個人的には特にCASE 2北九州監禁連続殺人事件に心が壊れそうになりました。
人間である以上、ある意味では誰もが殺人犯になり得る可能性はあるのかもしれません。
しかし、連続殺人を犯せる人間はやはり普通の人間ではない。
しかも短期間にそれを繰り返す為には、殺人を行うことに付け加えて、捕まらないことも必要。
連続殺人犯...
読み終えても全くスッキリしないし、理解も出来ない。
だからこそ自分はそちら側の人間ではないのだとホッとしている自分がいます。
説明
内容紹介
残酷にもほどがある!
凶悪殺人犯を取材し続けた男が、もっとも戦慄した10人の肉声とは?
新章 筧千佐子(近畿連続青酸死事件)を増補!『殺人犯との対話』を改題。
誰でも一瞬の激情にかられて人を殺してしまう可能性はある。だが何度も、何人も殺害してきた連続殺人犯は、「悪に選り分けられた者たち」ではないか――?
数多の殺人事件を取材してきた著者が、拘置所の面会室で、現場で、ゾクリと震撼させられた10人の連続殺人犯の声を綴る。
「蚊も人も俺にとっては変わりないと」(北村孝紘・4人殺人)
「私の裁判はね、司法の暴走ですよ。魔女裁判です」(松永太・7人監禁殺人)
「ふざけんなっ。おら、フイルム出せって言ってんだろが」(畠山鈴香・2児殺人)
「頭のなかが真っ白になって、逃げ出したかった」(下村早苗・2児虐待死)
「私の『生』そのものがあるべきではなかった」(山地悠紀夫・姉妹強姦殺人)
「血が汚れている」(角田美代子・8人殺人)
「どこでくらしても、女ですもの。女ですもの……」(筧千佐子・4人殺人)
解説・重松清
CASE 1 北村孝紘 【大牟田連続4人殺人事件】
「きさんか?(貴様か?)つまらん記事ば書いとうとは」。面会室で罵倒してきたのは、金目当てで4人を殺した「史上最凶一家」の次男。だが面会を重ねるうち、暴力団一家に育った男は意外な表情を見せ、ある頼み事をしてきた。
CASE 2 松永太 【北九州監禁連続殺人事件】
「先生、私の裁判はね、司法の暴走ですよ。魔女裁判です」。饒舌に、にこやかに語る男は、自らは手を下さずマインドコントロールで一族7人を監禁し、殺し合わせた。悪魔とは、意外とこんな屈託のない存在なのかもしれない――。
CASE 3 畠山鈴香 【秋田児童連続殺人事件】実の娘と近隣の男児との連続殺害容疑がかかる“被害者の母”は、つめかける警察と報道陣に、「ふざけんなっ」と取り乱した。憑依されたかの如き爆発、沸騰した体温を至近距離で感じて、私はなぜか確信した。これは殺っている――。
CASE 4 鈴木泰徳 【福岡3女性連続強盗殺人事件】
愚かなのか、恐るべき無自覚なのか。男が3人の女性を強姦・強盗目的で殺害したのはトラック配送業務中。しかも被害者の携帯電話を奪い、アダルトサイトに利用したことで犯行が発覚した。尋常でなくキレやすい男の足跡を追う。
CASE 5 下村早苗 【大阪2児虐待死事件】
真夏のマンションに閉じ込められ、脱水と飢餓で2児が死亡。だが風俗嬢の母はその間も遊び歩き、SNSに投稿していた。世間を震撼させた犯人の実父が今ようやく語りはじめる。彼女もネグレクト(育児放棄)を受けていたことを。
CASE 6 山地悠紀夫【大阪姉妹殺人事件】
「母親を殺したときのことが楽しくて、忘れられなかった」「死刑でいいです」。無辜の姉妹を強姦殺人した22歳の男が主張したのは「快楽殺人」だった。それは本心なのか。少年審判時の弁護士と精神科医が無念とともに語る、その実像。
CASE 7 魏巍 【福岡一家4人殺人事件】
面会室に現れたのは、小柄で色白な青年だった。わずかな金銭のために一家4人を惨殺し、海に遺棄した中国人留学生グループの一人だ。両親に「悔」一字を大書した手紙を送った彼と対話を重ね、中国へも取材し、心のうちを追う。
CASE 8 高橋裕子 【中州スナックママ連続保険金殺人事件】
かつて「白雪姫」と呼ばれたお嬢様音大生は、美貌のスナックママになり、いつしか、交際した男を恐喝し、保険金目当てで二人の夫を連続で殺害する「魔女」へと変わっていた。なにが彼女をそうさせたのか。その“魔性”の証言。
CASE 9 角田美代子【尼崎連続変死事件】
小さなトラブルから家庭に入り込み、財を吸いとり、犠牲者ファミリーを拡大する――死者は事件化されただけで8名、「鬼女」「モンスター」と言われたその手口を、家族を「被害者」と「加害者」に分断された父が苦渋とともに語る。
CASE 10 筧千佐子【近畿連続青酸死事件】
〈どこでくらしても、女ですもの、女ですもの……〉拘置所からの手紙で、面会室で、筆者に秋波を送ってきた〝後妻業の女〟。彼女の周囲では20年間に10人以上の高齢男性が死去していた。「あの人は殺めました」と告白する虚無に迫る。
内容(「BOOK」データベースより)
誰でも一瞬の激情にかられて人を殺してしまう可能性はある。だが何度も、何人も殺害してきた連続殺人犯は、「悪に選り分けられた者たち」ではないか―?数多の殺人事件を取材してきた著者が、拘置所の面会室で、現場で、ゾクリと震撼させられた十人の連続殺人犯の声を綴る。文庫化にあたり新章を大幅増補。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
小野/一光
1966年生まれ。福岡県北九州市出身。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーライターに。「戦場から風俗まで」をテーマに数々の殺人事件のほか、アフガニスタン内戦、東日本大震災などを取材(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)投稿日:2022.08.22
個人的には中国人留学生が起こした福岡一家四人殺人事件の項が印象的だった。故郷の家族の期待を背負ってはるばる日本にやって来た、かつては優等生であった青年。生活資金を遊興費に注ぎ込んでしまい、困った彼は悪…い誘いを受け入れて大罪を犯すが、それと引き換えに手に入れたのはたったの一万円と、自らの死を持って罪を償うという結末。筆者は面会を通しての犯人との直接の対話を行うのは勿論、彼の母国にも足を運び、実父への取材を行っている。
「お前の犯した罪が少しでも軽かったのなら、私たちは受け入れることもできる。子どもが可愛くない親などいない。お前の母さんと私はことさらにお前を愛している。どうして事件を起こすとき、私たちのことを思い出さなかったのか……」
筆者に託された、覆るべくもない死刑判決を待つ、海の向こうにいる息子宛の手紙。そこからは「罪を犯す前に、子どもに何かしてやれることはなかったか……」という父親が抱く深い悔悟の念と同時に、子どもへの変わらない愛情が感じられた。それだけに、なんとも言えない気持ちになる。
後書にも書かれているように、読後けして爽やかな気持ちになる本ではない。この本に出てくる十人の『連続殺人犯』は、性別も年齢も違えば、その生い立ちも性格も、そして犯した罪も様々である。
筆者はとある被告人と面会した際、初対面にも拘らず、常に明るく人懐こく話しかけてくるその様子に、「悪魔とは、意外とこのような屈託のない存在なのかもしれない」と書き記している。また、別の被告人と対峙した際は、事件の話を振った瞬間、雑談時の明るい表情や口調とは打って変わって浮かべられた鵺のような昏い表情に、底知れぬ虚無の深さを感じたと言う。
ヒトは自身にとって未知のもの、また理解の及ばないものへの潜在的な恐怖があるように思うが、凶悪事件の犯罪者に対して感じる畏れも、そのようなものに近いのだろう。どの被告人も罪状を知れば、同じヒトというよりも、なんだか得体の知れない怪物のように感じる。怖い。けれど、怖いからこそ、少し離れた安全地帯からなら、そっと……。少しだけなら……。
『深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている』という有名なフレーズがあるが、この本を手に取った我々も、筆者の眼差しを借りて「底知れぬ人間の暗部」を覗くことが出来る。しかし願わくば今後も、彼らが犯した"許されざる一線"には触れることのないまま、この境界線の側で留まっていたいものである。続きを読む投稿日:2023.12.09
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