教養としての「ローマ史」の読み方
本村凌二(著)
/PHP研究所
作品情報
なぜ、ローマは帝国になり得たのか。なぜ、ローマ帝国は滅びたのか。王政から共和政を経て帝政へ、多神教世界帝国から一神教世界帝国へ。古代ローマ史研究の第一人者が、長きにわたって古代を生き延びたローマの歴史とその新しい「読み方」を語り尽くす。建国時の混乱、強敵との戦い、国家の再建、跡継ぎ問題、異民族の侵入、文明の変質・・・・・・。ありとあらゆることを経験したローマの長い歴史は、現代を考える上での大きな羅針盤となり、混迷する現代を生きる我々に多くの示唆を与えてくれる。ローマ史のみならず、世界史や現代社会の理解をより深めることにも繋がる一冊。 【目次より】1. なぜ、ローマは世界帝国へと発展したのか/2. 勝者の混迷、カエサルという経験/3. 「世界帝国ローマ」の平和と失われた遺風/4. ローマはなぜ滅びたのか 佐藤優氏、推薦! 「ローマ史の中に人間の英知のすべてが詰まっていることがよくわかる。」
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商品情報
- シリーズ
- 教養としての「ローマ史」の読み方
- 著者
- 本村凌二
- 出版社
- PHP研究所
- 書籍発売日
- 2018.03.16
- Reader Store発売日
- 2018.04.27
- ファイルサイズ
- 30.2MB
- ページ数
- 384ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (17件のレビュー)
-
世界史の面白さが詰まっているローマ史。その大きな流れを捉える
●本の概要・感想
ローマの誕生から滅亡までのストーリーを追って説明する。教科書的な記述だけでなく、著者の意見や価値観を表してくれるので…面白い。例えば「カエサルのカリスマ性は世界史の中でも5本の指に入るに違いない」「キリスト教の迫害を行ったためか、ディオクレティアヌス帝の評価が不当に低くなっている。彼は優秀な統治者であったし、自ら在位を譲った後にも先にも最後の皇帝だった。」「ローマ人の強みは寛容さだった。それを失い、国としても瓦解し始めた」などなど。歴史は事実だけ追っていてもなかなか面白がれないため、詳しい人に解釈の仕方を教えてもらうのが一番だなぁ。
本の帯にあるような「現代人必読の教養」ではないけれど。歴史を面白がり、歴史に学ぶには良い本ではないでしょうか。
●本の面白かった点、学びになった点
*ローマの終わりと始まりを明確に定義するのは難しいが。古代ローマは紀元前5世紀ころから始まり、ローマの東西分裂は4世紀に起きた。
→1000年近く続いた国家?であった
*パックスロマーナ時代の皇帝は、皆世襲でなかった。幸いなことに、皆息子がいなかったのだ。しかし、最後の五賢帝の息子であるコンモドゥスが帝位に就くと、ローマの平和な時代は終わりを迎えた..。やっぱ、無能な子どもに託してもうまくいきませんね
*ローマの繁栄と農業を支えたのは奴隷と捨て子
*皇帝の資質でその国の明暗が分かれる
国のトップである皇帝がよければ、国も反映する。一方、馬鹿な皇帝の時代は国の調子も悪くなる
*ローマの皇帝の座を巡って、何度も権力闘争、暗殺などがくりかえされた
人の本質は変わらない。皇帝が自然死することは非常に少なかった。戦死することもあったが、同じローマの民から暗殺されることも少なくなかった。悪目立ちを嫌い、自ら身を引く者もいた
●学んだことをどうアクションに生かす
*人間の本質である「嫉妬、妬み」を買わないように気を付ける。どれだけ志が高くても、悪目立ちすれば、カエサルのように殺されてしまうだろう..
●タグを設定しよう(evernoteにもね)続きを読む投稿日:2020.04.10
以前も本村氏の本を読みました。もう内容も覚えていないのですが、おぼろげに面白かったことを覚えています。
今回、改めてローマ史について読みましたが、これは実に面白かった。忘れないうちに備忘として記録に…残したいと思います。
・・・
本作、ローマの歴史1,200年を通史として紐解いています。で、実に面白い。
それはやはり、人にフォーカスしているからだと思います。紀元前8世紀から共和制を経て、そして賢帝たち、続いて軍人皇帝時代を経ています。
賢帝でも愚かな息子を次の帝位につける、反抗した軍でも恭順を示せば許す、気前の良いことを言って約束し財政を悪化させる、反乱に諦めかけるところを妻の一言でやる気を出す等々。
良いことも悪いことも、すべて感情をもった人が行うこと。1,200年もあれば大概の事例が出てきてもおかしくはないわけです。こうした人間ドラマという切り口で政治史を読み解く巧みさにより、すんなりと文章が読めたと思います。
例えれば、NHKの大河ドラマでしょうか。
歴史の古臭い物語ながら、多少の脚色はあろうとは思いますが、そこに描かれるのは人間ドラマ。だから面白い、と。
ただ、本作の場合、皇帝の数がまあ多いです。ですからもう瞬間瞬間は読んでいて面白いのですがもう皇帝の名前とかは覚えきれません。。。すみません。
・・・
次に白眉であったのは、「なぜローマは衰退したのか」ということへの解説です。世にいう説はどうやら三つほどあるそうで、「衰亡説」「異民族問題」「変質説」に解説されています。
「衰亡説」は経済的に衰えていったと。栄枯盛衰ではないですが、ピークを保つのは難しいですし、上がれば下がりますね。具体的にはかつては貴族が出していたインフラへの投資。老朽化していくとメンテナンス代がかかりますが、政府(というか皇帝)はここまで面倒を見るつもりがない。多少のメンテナンスはあっても根本的に古くなっていくと。となると非効率なインフラが非効率な生活につながり、あとは応じて国力も落ちてゆくということなのでしょうか。
「異民族問題」は民族大移動とも関連しています。寒冷期が始まり、ゲルマンがより温かい南に進出してきた。でも実はその前にフン族によりゲルマンが押し出されてもいた。またゲルマンを取り込んで親衛隊等に組み込むことで爾後軍人皇帝時代の混沌を呼んだといってもよいでしょう。これは良い悪いではなく結果からみてそういう原因に見える、ということなのだと理解しました。
最後に「変質」説ですが、これは本村先生が押しているように見えます。端的に言えば「寛容さ」を失った、というものです。かつては許す・受け入れるという文化が広まっていたものの、そのような文化が消えていったということのようです。またギリシア・ローマ的な万神論的な思考から、キリスト教的一神教が国教となったことも大きいようです。
このあたりは非常に興味深くて、キリスト教が偏狭であると言っているのではないのですが、他の宗教を認めないという司教(アンブロシウス)が力を持ったり、皇帝へのプレッシャーをかけたことなどが大きいようです
・・・
ということで、本村先生の著作でした。
非常に読みやすいにも関わらず格式高く歴史を謳い上げている佳作でありました。タイトルにある通り、教養としてこういうのがさらっとしゃべれるとちょっと素敵ですね。
世界史が好きな方にはおすすめできます。続きを読む投稿日:2024.02.02
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