花祭
早川孝太郎(著者)
/角川ソフィア文庫
作品情報
「花(花祭)に入らずば、日本の伝統芸能は語れない」といわれる奥三河の神事芸能・花祭。悪霊を払い、神人和合や五穀豊穣・無病息災のため鎌倉時代末に始まったとされる、太陽の力の復活を願い、冬至の前後に行われる霜月神楽である。花宿の清めに始まり、稚児の舞・鬼の舞、翁などの神々の祝福、湯ばやし、神返し・・・・・・滋味深い挿絵と平易な文章で花祭のすべてを伝える、柳田国男・折口信夫にも衝撃を与えた民俗芸能の代表的古典。
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商品情報
- シリーズ
- 花祭
- 著者
- 早川孝太郎
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川ソフィア文庫
- 書籍発売日
- 2017.10.01
- Reader Store発売日
- 2017.10.27
- ファイルサイズ
- 16.2MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (1件のレビュー)
-
・早川孝太郎「花祭」(角川文 庫)が文庫になつた、といつても、岡書院刊行のあの大冊がそのまま文庫になつたのではない。本書は岩崎美術社の民俗民芸叢書の一冊として出 てゐたダイジェスト版の文庫化である。た…だし、これは講談社学術文庫でも出てゐたから、正確には2度目の文庫化である。ダイジェストといつても文庫で400頁ある。結構な分量である。ダイジェストの事情は三浦佑之氏の解説に詳しい。個人的には、渋沢敬三の前書き「早川さんを偲ぶ」よりも柳田国男や折口信夫の序文、跋文があつた方が良いと思ふのだが、これはその時の編集方針ゆゑに今更どうしやうもない。その方針の中でどの程度省略された部分があるのか私に は分からないが、単純に目次を見る限り、といつても手許のは早川孝太郎全集版だが、花祭部分はほぼ残されてをり、巻頭の口絵なし、巻末の面、祭文、口伝の記述もなしといふことで、細かいことを考へなければ、これで花祭のかなりを知ることができる。だからこれを片手に花祭見物といふのもありかと思ふ。ただ、 花祭以外の後篇はすべて省かれてゐるから、例へば大神楽や田楽について知りたいと思つても、残念ながら本書で知ることはできない。これは原本か全集を見る必要がある。解説にあ つて驚いたのだが、この岡書院版「花祭」は国立国会図書館デジタルコレクションに収められてゐるといふ。見ると確かにある。前後編に分けてある。刊行は昭和5年、1930年である。90年近く前になる。かういふ形で公開されてゐてもをかしくない。そして、かういふ形になるからには、やはり「花祭」が名著である証左なのであらうと思ふ。ダイジェスト版ながら、そのやうな書が文庫で読めるのである。本書は角川ソフィア文庫の一冊、「花祭」 はやはり古典であり名著なのである。さういへばと思ふ。数年前、やはり角川ソフィア文庫から芳賀日出男「日本の民俗 祭りと芸能」が出てゐた。同じく花祭の榊鬼がカバーにあつた。折口の「古代研究」も含めて、これと同じ流れの中に「花祭」もあるのであらう。すると、次はいかなる花祭、あるいは民俗学の古典的名著が文庫になるかと思つてみるのだが……。
・そんなわけで本書の評価は名著と確定してゐる。そこで三浦佑之氏の解説にかう書かれる。「早川のあとを引き継ぐと自負する研究者からすると、それぞれの集落の固有性を大雑把にまとめて論じる早川の方法には批判も出されるが、他に参考にする書もない先駆的な仕事としてみれば、その批判 は無い物ねだりに近いのではないか。」(410頁)たぶんこの評価は正しい。その一方で、かう言はれると「花祭」は批判さるべきではないと言はれてゐるのかとも思ふ。大入系、 振草系といつても、そんなに単純に一つにくくれるものではない。だからこそ、いかに先駆的とはいへ、批判からは免れられないのであ る。その成果や批判の延長線上に最近の花祭硏究がある。「花祭」が古典的名著として読み継がれる理由もまたそこにあるのであらう。ついでに今一つ、「早川は花祭りの行われる奥三河の人ではなく、南三河の出身だが」(407頁)はいかなる意味かと思ふ。要するにまちがひである。早川は現在は新城市に含まれる、 旧南設楽郡鳳来町の生まれ、ここは歴とした奥三河である。奥三河南部なら分からないでもないが、南三河とは普通は言はない。言つたとしても、全く違ふ地域を指す。三浦氏も角川の校閲もこれに気づかなかつた。花祭がいかに有名にならうとも、もしかするとその正確な位置を、他の地方の人は分かつてゐないのだと思ふ。そんなものであらうか。さういへば本書に地図はない。あつてほしかつた。残念。続きを読む投稿日:2017.11.21
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