技術屋の王国―ホンダの不思議力
片山修(著)
/東洋経済新報社
作品情報
シビック+翼・・・
空飛ぶ自動車に30年以上前に挑戦したホンダ
ホンダは、じつに不思議な会社である。
なぜ、二輪、F1レースで世界の頂点にのぼりつめたばかりか、「ASIMO」やホンダジェットなど数々の“奇跡”を引き起こすことができたのか。
トヨタ、フォルクスワーゲン、GMのように世界のビッグスリーの一角を占めるわけではない。年間の世界販売台数はおよそ500万台で、1000万台のビッグスリーの半分に過ぎない。当然、研究開発費は、超巨大企業に比べて潤沢とはいえない。であるのに、ホンダには、「世界初」「世界一」「日本初」といった技術、製品が少なくない。
ホンダは、世界の最先端技術分野で、なぜか次々と成果を生み出す「不思議力」を備えた企業である。
数々の奇跡を引き起こす不思議力の源泉に迫る。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
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ホンダが航空機を売り出すまでの歴史を紹介している。
著者は以前よりホンダ担当的な役割で記者をしていたホンダ信者なのだろう。
自分のイメージではホンダジェットの開発は既定路線なのかと思っていたが、紆余…曲折の末だったと知り新鮮に驚きながら読んだ。続きを読む投稿日:2018.01.11
経済ジャーナリストが、20年にわたりホンダを取材した記録を、ホンダジェットやASIMOの開発を中心にまとめたもの。ホンダがトヨタとは違い、突然驚くような製品開発を行う気質を少し理解できたように思う。実…名入りで現場の状況を克明に説明しており、面白く読み進められたし、資料としても役立つものだと思う。
「ホンダは30年もの間、1円の利益もあげない航空機の開発を継続した。ホンダジェットは、長い助走を経て、ようやく離陸したのである」p8
「ホンダは、世界の自動車産業界において、規模からいえば決して大きいとは言えない。そのホンダが、なぜ、CVCCなど世界初の開発ができるのか。そして、なぜ、世界一の規模を誇るトヨタではなく、ホンダがジェット機を開発できたのか。その答えは、強烈な「個」をもつ異能の存在と、その「個」を尊重し、徹底的に生かしきる風土にある」p41
「井上和雄から「さあ飛行機をつくれ」といわれたところで、何から始めればいいのか、誰も見当がつかなかった。大学で飛行機について学んだ彼らも、学んだのは理論だ。実際の飛行機をつくるどころか、触れたことさえなかった。この乱暴さこそが、ホンダの特色である。ホンダでは、挑戦と乱暴は同義語である」p68
「ホンダ4代目社長 川本信彦こそが、ホンダジェットの正真正銘の生みの親である。そしてASIMOも、そうである」p80
「(飛行機の下の)床に転がった(社長の)川本の写真を見て、私は、宗一郎の写真を思い出した。さすが宗一郎チルドレンだけに視線が徹底的に低い。つまり、寝転がるのは、ごく自然で、当たり前の行動なのだ。藤野によると「寝っ転がってまで見てくれたのは、川本さんだけです」という」p83
「あの頃のホンダには、シリコンバレーのベンチャー企業と同じように、何かをしでかす雰囲気があった。日本には、アップルやグーグル、テスラモータースなどをありがたがる傾向があるが、本田宗一郎が築き上げたホンダをもっと研究した方がいいと思う」p88
「研究所では、技術者は、奇人、変人、怪人であるほど評価される。すべてにおいて規格外れの本田宗一郎が技術者の総親分なのだから、不思議ではない」p108
「3Mには、有名な「15%カルチャー」がある。勤務時間の15%を自由な研究開発に使ってよいというルールだ」p132
「ホンダジェットは、事業化を考えなかったことが、決定的によかった。事業化を前提に航空機の研究をスタートしていたら、どうなっていたか。バブル崩壊、リーマンショックなどの経営難をはじめ、さまざまな障害に幾度か直面した時、経営陣は、それでも研究の継続を選択しただろうか。おそらく答えは「ノー」だろう」p207
「芽が生えてくる。枯れてしまったならば「こうしてみろ」と、またやらせる。また枯れる。「次はこれでやってみろ」とまたやらせて、また枯れる。それでも、本人が「まだやります」というなら、さらにやらせる。本人が「もうダメです、私を下してください」というまでは、とにかくやらせておく。権力でもって「もうやめろ」とは、言えない仕組みにしているのだ」p213
「航空機業界は、1つの機体に新しいことを二つ以上取り入れてはならないといわれるほど、コンサーバティブな業界だ。その点、ホンダジェットは、エンジンの配置や層流翼など、画期的な新技術が複数搭載されている。なぜ、このような革新を起こすことができたのかといえば、藤野抜きには考えられないのである」p218
「夜、宴会場に食事に行くと、客は、藤野ら4~5人だけだった。そこへ演歌歌手が現れて、歌い始めた。「それが、あたかも1000人がいるかのような感じで歌うんですね。これがプロなんだなと思いました。たった4人だからといって手を抜くことはしない。その記憶があって、本当のプロなら聴衆が少なくても、あたかも1000人がいるように講演しなきゃいけないという気持ちをもって、全米本土を回ったんですよ」」p230続きを読む投稿日:2018.10.21
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