大国の掟 「歴史×地理」で解きほぐす
佐藤優(著)
/NHK出版
作品情報
トランプ、習近平、プーチン・・・・・・ 見えざる力を暴く、 佐藤優の集大成!
大統領選後のアメリカはどうなるか? イギリス離脱後のEUのゆくえは? プーチンのユーラシア主義の本質とは? 英米からロシア、中東から中国まで。新旧政治家の比較考察から、各国に特有の論理を読み解く歴史的アプローチ。地理をふまえて各国の戦略に迫るアプローチ。双方の合わせ技で国際情勢の本質を一気に把握する。「分析家・佐藤優」の集大成!
[内容]
序 章 国際情勢への二つのアプローチ
第一章 英米を動かす掟─「トランプ現象」と「英国EU離脱」の共通点
第二章 ドイツを動かす掟─「生存圏」から「EU帝国」へ
第三章 ロシアを動かす掟─スターリンとプーチンの「ユーラシア主義」
第四章 中東を動かす掟─「サイクス・ピコ協定」から「IS」まで
第五章 中国を動かす掟─「海」と「陸」の二兎を追えるか
終 章 「歴史×地理」で考える日本の課題
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商品情報
- シリーズ
- 大国の掟 「歴史×地理」で解きほぐす
- 著者
- 佐藤優
- 出版社
- NHK出版
- 書籍発売日
- 2016.11.10
- Reader Store発売日
- 2016.11.12
- ファイルサイズ
- 6.7MB
- ページ数
- 248ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (18件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
本書の目的は「現下の国際情勢を正確に把握する力を身につける」ことにある。そのためには国際情勢を規定している「歴史」と「地理」を掛け合わせて思考する必要があるという観点から、英米、ドイツ、ロシア、中東、中国といった「大国の掟」を分析している。
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第1章(英米)
トランプ大統領への支持は、新自由主義がもたらした経済格差の拡大、社会的流動性の低下、庶民生活レベルの低下という土壌から生まれたもので、かつてのアメリカ外交の基調であった「孤立主義」への回帰を主張している。
アメリカは、太平洋戦争まで「孤立主義」を基調としていた(モンロー主義)。太平洋戦争開始後はラインホールド・ニーバーによる「光の子」と「闇の子」の二分法がアメリカの世界戦略の基本となる。つまり、敵対国(集団)を「闇の子」と捉えることで、海外での軍事行動を正当化するようになったのだ。しかしトランプ大統領は、アメリカに直接的かつ死活的な問題をもたらさない限り干渉しないという、戦前の「孤立主義」への回帰に過ぎない。
「人種的差別は、米国の民主主義がよって立つ基礎のひとつ」というエマニュエル・トッド氏の説は興味深い。アメリカ民主主義は常に「内部」(白人)に対する「外部」を必要とするという。「外部」は、ピューリタンにとってのネイティブ・アメリカンや奴隷である黒人であり(『United States Declaration of Independence』の「all men are created equal」は、白人のみ対象)、それが時代によって、カトリック、ユダヤ、イタリア系、アジア系、ヒスパニック系、イスラム教徒と変遷して来た。このような「外部」を持たないと、アメリカの民主主義は成立しないのだ。トランプ大統領の「アメリカ(白人)・ファースト」の主張は、アメリカ的伝統の反復現象なのである。
イギリスのEU離脱も、かつての「栄光ある孤立(1896-1902)」(Splendid Isolation)への回帰と読み取れる。海洋国家であるイギリスとアメリカは、必要があるときだけ大陸と関係を結べばよく、必要がないと判断すると「孤立主義」を取ることができる。これが、フランスやドイツとの大きな違いである。
シーパワーを制するとは、世界的なネットワークを維持できることにほかならない。だからそこ、イギリスもアメリカも覇権国家になることができた。ひとたび覇権国家になると、その国は一方的な自由貿易を強要する。自由主義の背後には常にシーパワーを持った覇権国家の存在があるのである。
(第2~5章 略)
終章(日本)
海洋国家の「孤立する」選択肢として、日本の鎖国政策があるが、この間でも、長崎の出島以外に、松前口、対馬口、琉球口という四つの外交窓口があった。つまり、当時の世界最強国オランダやその他の国とのネットワークを有していたのだ。従って、「鎖国」(そもそも幕府は鎖国という言葉は使っていない)というよりは、日本の安全保障上問題のある外国との貿易や宣教活動を遮断していたというほうが適切である。問題のある国としてキリスト教の国が考えられるが、「キリシタン」禁止令の名称から分かるように、幕府はカトリック国との交易を禁止したという方が正しい。現にプロテスタンティズムの「カルヴァン派」だったオランダとの交易は継続している。カルヴァニズムは、人間は生まれる前から「救われる人」が決まっていて(予定説)、人間はそれについて知ることはできない。せいぜい、世俗的な仕事で成功することを通して、神様に選ばれていることを確信するだけであると考える。従って、強引に他人に宗教を強制しようとしない。一方で、カトリシズムは、全世界にキリスト教を布教することを使命とし、場合によっては力で普遍的な価値観を押し付けようとする(南米の例)。そんな宗教が日本に入ってきたら、日本の文化は崩れ、植民地になってしまうかもしれないと、秀吉、家康、家光は考えたのである。
アメリカがメキシコとの戦争に勝って、カリフォルニアを手に入れると(1848年)、清との貿易のため太平洋を航海する船舶や捕鯨船の寄港地として日本に開国を強く求めるようになった(1853年)。ほぼ同時期にロシアの使節プチャーチンも長崎に来て、開国と国境策定を要求する(1853年)。ペリーは、砲艦外交と呼ばれる高圧的な態度で開国を求めたが、プチャーチンはそのような態度を取らなかった。ペリーは、幕府のたらい回し・問題先送りの外交姿勢を事前に学んでいたので、高圧的に交渉するしかないと考えた。一方のプチャーチンは、日本人の気質を考慮して、力づくの説得よりも時間をかけて交渉する方が得策と考えた。もし、日本がロシアに巧妙に取り込まれたとすれば、フィンランドのようにロシア帝国に取り込まれていくというシナリオは否定できないだろう。
しかもアメリカの植民地化を免れた理由に、開国と明治維新との間に南北戦争(1861-65年)が起きたことは、極めて重要である。つまりアメリカは、帝国主義の仲間入りをする1870年代まで、対外的な政策をとる余裕がなかった。1870年代には、富国強兵のもと徴兵制など日本の防衛体制が整いつつあったのだ。
南北戦争で余った大量の新型銃が、明治政府軍に流れたことを考えると(亀山社中、薩長同盟)、日本近代史のうえで、南北戦争が開国と明治維新の間に起きたことは、決定的な重要性を持つ。
歴史に地理と宗教を掛け合わせるだけでも、平面的に感じていた歴史が立体的に見えてくる。「地政学」は、なかなか面白そうな学問だ。投稿日:2017.11.15
2016年に書かれた論考が今起こっているロシアのウクライナ侵攻を理解するために大いに参考になりその必然性すら感じさせられる。ということは、佐藤優はインテリジェンス専門家としてはなかなかの人であるという…ことか。
国際情勢を読み解くために「歴史」のアナロジー的なものの見方と「地理」の動かない要因(国家戦略に活用したものが地政学)を掛け合わせて思考すること。その教養を深めることが必須であるとして、唯一の具体例が「プーチンのユーラシア主義」であることに彼の分析予言能力の凄さを見た。
英米、独、露、中東、中国とそれぞれ明快に分析されている。反芻して頭にインプットしておくべきものと痛感する。続きを読む投稿日:2022.05.15
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