外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD
フレッド・ピアス(著)
,藤井留美(著)
/草思社
作品情報
よそ者、嫌われ者の生き物たちが失われた生態系を元気にしている! ?
生態系を破壊すると言われる外来種だが、実際には、環境になじめず死滅するケースが多い。定着したものも、むしろ、受粉や種子の伝播を手助けしたり、イタドリやホテイアオイなど、人間が破壊した生態系を再生した例もある。
著者は、孤軍奮闘する外来種の“活躍”例を、世界中から集めた。
「手つかずの自然」が失われている昨今、自然の摂理のもとで外来種が果たす役割を「新しい生(ニュー・ワイルド)」としてあえて評価する。
外来種のイメージを根底から覆す、著名科学ジャーナリストによる知的興奮にみちたサイエンス・ノンフィクション。
R・ドーキンス『利己的な遺伝子』共訳者で進化生態学者の岸由二氏による解説付き。
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この作品のレビュー
平均 3.4 (24件のレビュー)
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原題は"The New Wild"、「新しい野生」(邦題の副題)である。
外来種に留まらず、生態学やその成立背景自体に斬り込んでいくような、ラジカルでスリリングな1冊。
外来生物というと、とかく「悪…者」というイメージが強い。
しかし本当にそうだろうか?
地球上の生物たちは、ごく単純なものから進化し、多種多様なものが生まれてきた。けれどもすべての種が生き残ってきたわけではない。環境に順応できず、うまく集団を維持できなかったものもいる。ある程度は適応していたが、ライバルとの競争に負け、次第に減っていったものもいる。気温や地形などの環境の急激な変化により、絶滅してしまったものもいる。
地球が大きな環境変化を繰り返す中、生き残る運と力のあるものが生き延び、生物は連綿と続いてきた。
火山灰に覆われ、あるいは氷に閉ざされ、あるいは隕石で一帯がなぎ払われ、すべてのものが死に絶えた後であっても、時が経てば、周囲から生物が入り込み、また生命活動が営まれるようになった。その際、やってくるものはすべて「新参者」=外来種だ。
長いスパンで見たとき、「在来種」と「外来種」の違いはどれだけ明確にできるのか、いや、そもそもそんな区別はできないのではないか。その点がまず1つ本書の要である。
外来種は生物多様性にとってマイナスであるという主張もよく見られるものである。
著者はこれにも疑問を呈する。
外来種はむしろ、生態系に多様性を生んできた。多様な植物が入り込むことで、その植物を餌にする他の動物も入り込み、生態系はより「豊か」になる。
とかく侵略性の高い外来種が槍玉に挙げられるが、多くの場合、外来種はむしろ「平和裡」に入り込んでいる。フランス原産のスノードロップ、バルカン半島原産のセイヨウトチノキは、イギリスでは一般に在来種と思われているが、元は外来種である。
しかし、そうはいってもものすごい勢いではびこる外来種はいるではないかという声も上がろう。
これに対する著者の反論の柱は2つである。1つは、外来種の害を恣意的に水増しする傾向があること。もう1つは、外来種がはびこる環境は、そもそも環境自体に問題があることである。
外来種の害は、往々にして、局地的である。一番被害の大きな部分をクローズアップして、その値を全地域に当てはめるといった乱暴な試算がなされがちだという。例えば、イギリスでは日本原産のイタドリは建物の基礎部分を破壊するとして忌み嫌われている。だが、実際に被害が出るほどイタドリが多いのは南部の町のごく限られた地域である。この地域では、家を建てる前に、敷地内にイタドリが見つかったら駆除しなければならないという決まりがある(よその地域にはない)。つまり、掛かる費用は実際の被害額というより予防対策費である。さらには、この地域の駆除費から、単純に比例計算して、プラスαを水増しし、イギリス全土の被害額を算出している。こうして実態よりも著しく多い額が被害額とされる。
一方、外来種がはびこる環境は、そもそも環境自体がバランスを崩していることが多い。みんなが平和に仲良く暮らしていたところに1人の乱暴者がずかずか入り込んでやりたい放題やるわけではない。例えば都市部で、基盤の脆弱なところにたまたまその環境に適応しやすいものがわっと広がる。そうした場合は、その種が山野にまで広がっていくことは少ないという。場合によっては、「外来種」が、荒れた環境を豊かに戻すことに一役買うこともあるとも考えられる。
人々の中には、「太古の自然」とか「手つかずの自然」という漠然としたイメージがあるが、これも実は根拠が薄い。
アフリカのサバンナはいかにも大自然というイメージがあるが、著者によるとこれはごく最近生まれた風景である。19世紀までは、アフリカ大陸では広く放牧が行われ、これが経済的な基盤ともなっていた。19世紀終盤、列強の進出に伴って、牛疫ウイルスが持ち込まれた。ウシが全滅状態となり、飢饉が広がった。草を食べるウシがいなくなったため、草が生い茂り、灌木の茂みも出来た。そこへ、野生動物たちが戻ってきた。
サバンナの風景は、太古からずっと続いてきたわけではなかったのである。
著者は、外来種が実態以上に叩かれる原因として、よそ者排除の傾向を挙げている。移民を排斥しようとする意識と根は同じだ。「既得権益」を守ろうとする旧勢力。だが、歴史の長さに長短はあれ、所詮は皆、よそ者だったとしたら、いったい何を根拠に新参者を排除するのか。
諸々を受け、著者の結論は、端的に、「自然に委ねよ」である。外来種を除こうと徒に努めることなく、自然の浄化作用に任せ、入るものは拒まず、バランスが落ち着くまで待てばよいではないか、というわけである。それこそが「新しい野生」になるだろう。
無為無策に過ごせ、というわけではない。その心構えで当たれ、ということだろう。
全般に非常におもしろく、説得力もあるとは感じたのだが、引っかかる点は2点。
1つは、外来種排除派も極端だとするなら、著者の論もまた、都合のよい各論しか取り上げていないのではないかということ。
もう1つは、無策ではないというが、ではどうするのかという具体的な提案が見えてこないこと。
人の行き来が昔とは比べものにならないほど活発になり、それに伴い、移動する生物種も増える。急激すぎる外来種の蔓延はやはりあるのではないかと思う。人為的に生じた移動には、人為的な対策もある程度は必要ではないのか。
とはいえ、外来種対策が一般にあまりうまくいっていないのは確かなように思われる。
旧態依然の対策に一考を促す点で、本書の意義は大きいと思う。続きを読む投稿日:2016.09.29
「研究者、ひいては世界は外来種を悪者としてしか見てない」って決めつけてる文体。
自分の前提を疑うという科学にあるべき基本的な視線が欠如した状態で捲し立てる事に反発を覚えた。投稿日:2023.06.29
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