誘蛾灯 二つの連続不審死事件
青木理(著)
/講談社+α文庫
作品情報
上田美由紀、35歳。小柄で肥満、鳥取のスナックのホステス。彼女の周りで6人の男が死んだ。この事件の背景には、木嶋佳苗事件とは別の深い闇がある。――美由紀に騙されたのは、あなたかもしれない。筆者は鳥取に通い、美由紀と面会し、彼女に騙された男たちに取材を重ねる。木嶋佳苗が獄中ブログを始めるきっかけとなり、「私の事件を取材してくれていたら…と思い続けたジャーナリスト」と言わしめた一冊が文庫化!
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商品情報
- シリーズ
- 誘蛾灯 二つの連続不審死事件
- 著者
- 青木理
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社+α文庫
- 書籍発売日
- 2016.01.20
- Reader Store発売日
- 2016.01.29
- ファイルサイズ
- 0.5MB
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この作品のレビュー
平均 4.0 (5件のレビュー)
-
2009年、よく似た事件が埼玉県と鳥取県で起きてマスコミの報道は加熱を帯び世間も沸いた。
埼玉県の事件の容疑者は木嶋佳苗。
鳥取県の事件の容疑者は上田美由紀。
ふたりの共通点は、自身の周囲で不審な亡く…なり方をする男性が複数いること、それでいて彼女たちは一見して太った美しいとは言えない到底魅力的とは言えない風貌をしていることだ。
ふたりの相違点は、木嶋佳苗が華やかさを前面に出し自身を演出することに対し、上田美由紀は地味であること。
同じ時期に似たような事件が起きればマスコミも盛り上がるだろうとは思う。そこで東京に近い埼玉県の事件容疑者が飽きさせない演出をしてくれば、当然マスコミの視線は木嶋佳苗に向く。
自分でへそ曲がりと言う青木理さんは、注目される木嶋佳苗には興味はなく、上田美由紀に興味を抱く。そんな青木理さんのルポルタージュを文庫化に際し加筆修正したのが本書。
木嶋佳苗が青木理さんに取材をして欲しかったと口にするジャーナリスト青木理さんの本には、出版された時点で興味を持っていたへそ真っ直ぐなわたし。文庫化されてすぐに購入した。
青木理さんの文章には、駄目なルポルタージュによくある偏重したところが見られない。あくまでも中立を心がけていることが感じられる。
ジャーナリストとして信頼できるひとりだと思う。
鳥取県という地域性に着眼し、鳥取県について詳しく書かれている。
鳥取県と聞いてすぐに頭に浮かぶこと。砂丘。
その他にはイメージがない。名産品もご当地グルメも、砂丘以外の観光地も浮かばない。
鳥取県のかた、ごめんなさい。
青木理さんの本によると、鳥取県は日本で一番人口が少ないらしく、鉄道整備が遅れている。軽自動車保有者が日本一多い。カレールー消費と冷凍食品消費が多く、世帯所得が低いらしい。
ここから想像出来ることは青木理さんと同じく、共働きで夫婦それぞれが比較的安い軽自動車を利用し、簡易に用意出来る冷凍食品や作り置き出来るカレーをよく使用する。
首都東京に近い埼玉県と、鳥取県という地方都市との違いから事件を紐解くというのは面白いと感じた。
上田美由紀の裁判の記述で、一審で上田美由紀が黙秘権を行使したことにも言及している。
やましいところがなければ裁判できちんと言うべきだ、世間もマスコミもそう糾弾したことについて青木理さんは異議を唱える。
被告に与えられた少ない権利が黙秘権であり、そもそも被告には自身の無実を自身で証明する必要はない。被告の有実を証明しなければならないのは検察側である。それを弁明しないのは卑怯だと責めることは法律をわかっておらず、そんなことを言う人間が裁判員として判決に携わることがおかしいと言っている。
わたしも正直言って、何もやっていないのなら裁判で言えばいいのにと思う人間のひとりだったので、何もわかっていなかったのだと恥ずかしく感じた。
結局上田美由紀は何を思ってか、何度となく面会にやって来る青木理さんにも全てを話すことは無かった。勿論、自分は殺していないとは言う。
真実は亡くなったひとと神のみぞ知るというところだが、わたしは報道だけで受けていた印象と本書を読んでからでは随分変わった。
辛辣な言葉も多いが、青木理さんの丁寧な取材によって事件の見え方が拡がり面白く読めた。続きを読む投稿日:2016.03.31
ジャーナリストの青木理氏が、鳥取で起きた連続不審死事件を取材した本。
お世辞にも美人とは言えない肥満体型の女に、何人もの男たちが夢中になり、人生を狂わせていった。同時期に埼玉で起きた木嶋佳苗事件と比…べて注目度は低かったものの、熱狂する木嶋事件報道の「添え物」として取材を開始したらしい。
本書を読み進めていく中で見えてきたのは、鳥取という地域が置かれた厳しい状況。そしてそんな底辺の街にある寂れたスナックで働くホステスに絡め取られていった男たちが抱える心の隙間、闇…。なぜ立場のある男たちが彼女の虜になって堕ちていったのか。最終的には本書の著者までもが、彼女に振り回される結果になっていたのが可笑しみを誘う。
また、日本の司法の問題点についても切り込んでいる。被告は一貫して殺人については否定しているにも関わらず、十分な証拠を持って犯行を立証することもないままに、本書の出版より後になるが、とうとう被告の死刑が確定してしまった。結局、上田美由紀は最後まで真摯に真実を語ることをしなかったから、真相は闇の中だが、彼女一人が死刑になることでこの事件が幕引きとなるのは、非常に後味の悪い感じがした。続きを読む投稿日:2021.12.05
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