沖縄の米軍基地 「県外移設」を考える
高橋哲哉(著)
/集英社新書
作品情報
圧倒的多数が日米安保体制を容認する本土国民に対して、また“本土の平和・護憲運動”と“沖縄への基地封じ込め”の不幸な癒着関係に対して、著者はヤマトの知識人としてはじめて「県外移設」という論争的な問題提起を行う。2014年の沖縄県知事選と衆院選では、本土とは異なる沖縄県民の明確な民意が示され、米軍基地移設問題が争われるなか、「日本よ、在沖米軍基地を引き取れ!」と訴える沖縄の声にアクチュアルに応答した、画期的な論考。【目次】はじめに/第一章 在沖米軍基地の「県外移設」とは何か/第二章 米軍基地沖縄集中の歴史と構造/第三章 県外移設を拒む反戦平和運動/第四章 「県外移設」批判論への応答/終章 差別的政策を終わらせるために/あとがき
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商品情報
- シリーズ
- 沖縄の米軍基地 「県外移設」を考える
- 著者
- 高橋哲哉
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2015.06.22
- Reader Store発売日
- 2015.10.16
- ファイルサイズ
- 1.6MB
- ページ数
- 200ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (7件のレビュー)
-
本を読む際にはある程度(内容によっては相当程度)筆者の気持ちになって、どの様な思想信条考え方を持って一冊の本として何を言いたいのか、自分もそれに賛同できるか否かを考えながら読む。本書は途中までその様な…著者に寄り添い、考え方を拾っていくいつもの読み方になるのだが、中盤以降は他社の著作や意見の引用が大半を占めるので、一々話し手が次々と変わり、一体全体何を言いたかったのかがぼんやりしてくる。後半はただ他人の意見を否定・攻撃しながら覆し、自分の言ってる事の正しさを躍起になって押し付けようとしている様に感じてしまう。読み終わった瞬間に頭の中は多くのはてなマークが並び、どっと疲れてしまう。
前半は沖縄県の基地問題を沖縄県民の心のうちをのぞいている様な分かり易い展開だ。沖縄基地問題と言えば、日本の面積0.6%の沖縄に74%の在日米軍基地が集まり、同じ日本人が享受する平和の負担の不平等について語られる。銃剣とブルドーザーによって、代々守り続けてきた土地を摂取され、次々と作られる米軍基地。日米安保条約によって、日本の平和、アジアの力の均衡を維持するために本土復帰前にはアメリカ施政下・統治下の沖縄へ本土からも基地の移転があった。それだけでなく、本土復帰後も本土の基地変換の代替地として、岩国から沖縄へ移転するなど、普段の集中と不平等は益々拡大する。
女子暴行事件でアメリカが譲歩した際も、日本政府は沖縄からの移転をさせなかった様に、国ぐるみで負担を強いている。正にシランフーナー(知らんふり)の暴力の餌食になっているのが沖縄だ。日本人は沖縄にある事を心のうちをでは望んでいる。何故なら、沖縄の基地には反対する人も、自分の住んでる地域に移転されるのは困るからだ。本土移転が取り沙汰される度に、反対住民に賛同する様に「安心して欲しい(移転はさせませんから)」の言葉は沖縄県民には向けられる事はない。
その背景には日本国民の大半は日米安保条約を支持(傾向は毎年高まる)しており(沖縄に限れば10%切ってるが)、そのくせに基地を負うリスクは回避したいという本音があるから、沖縄からの移転には見て見ぬふりをする。これは単なる押し付けだ。
本土の人間が沖縄の基地反対に連対するなら、本土に基地を持ってこれるよう、受け入れ地を説得をするしか無い。自分のとこは嫌だ、と言っている人間が本当に沖縄に連帯している、とは成り立たないのである。基地反対に参加したからと言って責任を逃れる事は出来ない。沖縄に基地がある前提で参加してるだけであり、それは沖縄を利用した反戦運動に過ぎないという事だ。
沖縄県民は沖縄の反戦運動・基地反対に本土からの共感も感動も求めていない。ただあるのは「基地を(本土に)持ち帰ってくれ」、この言葉は基地のない場所に住んでいる私にも重くのしかかる。
基地があるという事は、それにより生活は大きく影響を受ける。
基地があれば治安に懸念(治安悪化)が生じる
基地があればミサイルから狙われる(危険)
基地があれば(一部の人にとっては)経済は活性化する(カネ)
基地があれば力のアジアの力の均衡が保てる。間接的に安全に暮らせる(リスク回避)
基地があれば騒音や墜落など生活が不便(危険)
こういった様々な影響に加えて、在日米軍にいる兵士たちにも問うべきなのかもしれない。自国から遠く離れて暮らす上に、本土に友人達と分散して暮らす寂しさは?地政学的には問題ないと言えど十分に連携しながら戦えるのか?母国語が通じない片田舎で生活に支障無いのか?など、アメリカ側視点で、自分がもしアメリカ兵ならと言った考え方も加え、前半部分は面白く読める一冊かもしれない。
本書を一貫して主張されている「本土」の責任と負担の「平等」には全く同意できる。然し乍ら日本人だけが、沖縄県民のだけがその答えを出せるものではない。アメリカも中国も北朝鮮もそれぞれの考え方と真の平和実現に向けた具体的なステップがなければ、いつまで経っても状況は変わらず、そして変わらないことに甘んじていては、沖縄県民はもう待てない。
そして筆者の考えをそのまま鵜呑みにするなら、沖縄県民と本土の間の溝は当分埋まる見込みもなく、日本を見限った沖縄県は独立国家として、日本と切り離していく方が、沖縄県民にとっては幸せなのだろう。全ての基地が無くなりアメリカも自衛隊も無い平和な島国になった後の沖縄を見てみたいと思うが、パスポートが必要なら少し面倒だ。続きを読む投稿日:2023.06.23
【「引き取り運動」のバイブル】
2016年からFIRBOの活動に参加した評者にとって、本書は導きの書であり、バイブルである。「日本人よ!今こそ沖縄の基地を引き取れ」との沖縄の声に、「日本人は「本土」に…米軍基地を引き取る」ことによって応答するべきことを宣言した書である。
日米安保条約を約8割という圧倒的多数の「本土」の国民が支持している現状を踏まえれば、「県外移設は基地を日米安保体制下で本来あるべき場所に引き取ることによって、沖縄差別の政策に終止符を打つ行為である」とし、「「平和」や「安保廃棄」を求めるなら、基地を引き取りつつ自分たちの責任でそれを求めるべきである」と、その論旨は明快である。
また、米軍基地の沖縄への集中の歴史と構造が明らかにしているように、「本土」における反米感情と反基地運動の高まりが、結果として米軍基地を沖縄に集中させた。まさに引き取り運動は、米軍基地問題を自分ごととして考える重要な契機となることを示唆してくれている。(吉村/本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会)続きを読む投稿日:2021.07.01
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