日本海海戦とメディア 秋山真之神話批判
木村勲(著)
/講談社選書メチエ
作品情報
極秘海戦史でわかった語られざる真実。連合艦隊司令長官・東郷平八郎とその参謀・秋山真之。この軍神と天才によって敢行された丁字戦法によって、連合艦隊はロシアのバルチック艦隊を撃破――。日本海海戦の勝利は胸のすく快挙として昭和の軍国主義イデオロギーの核心を形成していく。その伝説の影響は今日にも及ぶといって過言ではない。これまで明らかにされることのなかった史実を、第一級史料『極秘明治三十七八年海戦史』を丹念に読み解き、浮き彫りにするとともに、神話を作りあげていったメディアの側をも批判的に検証する。(講談社選書メチエ)
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商品情報
- シリーズ
- 日本海海戦とメディア 秋山真之神話批判
- 著者
- 木村勲
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社選書メチエ
- 書籍発売日
- 2006.05.10
- Reader Store発売日
- 2015.07.24
- ファイルサイズ
- 4.3MB
- ページ数
- 260ページ
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この作品のレビュー
平均 4.5 (2件のレビュー)
-
日本海海戦といえば、丁字戦法であり、敵前大回頭であり、そういった大胆な戦術を駆使した参謀・秋山真之の知略によって、劣勢を跳ね返して大勝利をおさめた日本海軍のレジェンドである。国民作家・司馬遼太郎の『…坂の上の雲』においても、秋山の天才はひろく知られている。
ところが、近年閲覧可能になった極秘資料を読み解いていくと、こういった姿とはまったく違う実像があきらかになっていくというのが、この本。まるでミステリー小説のように、つぎつぎに明かされる真実にぐいぐいと引き込まれていく。いわく
・敵前大回頭とは、要するに、向かい来る敵を逃がさずに並行して砲火を浴びせるために必要となるあたりまえの機動であった。
・天才・秋山の奇をてらった用兵はすべて直前でことごとく却下され、ごく常識的な戦術が採用された。
・のちに軍神とあがめられた東郷率いる第1艦隊は、会戦中に敵の進路を見誤り、あさっての方角でダンスしていて、実際に勝負を決めたのは、命令を無視して独断専行で敵を追った上村彦之丞率いる第2艦隊の奮闘だった。
・そういった事実を隠蔽し、東郷を軍神に祭り上げるために、「会戦30分で勝負が決まった」と秋山は言い続けた。
その他諸々。いやー。すげっすよ。いままでのジョーシキが木っ端みじん。この日本海海戦の「大勝利」が、その後の海軍の隠蔽体質と事実軽視の元凶となったとなれば、史実究明の重要度はいやますというものである。「奇跡の大勝利」を演出したマスコミの役割にまで、筆者の視点はおよんでいる。
やっぱりねぇ。戦後の反省はちゃんとやらんといかんよ。ジーコのやったこと、やらなかったこと、やれなかったことをきちんと教訓にしないで「感動をありがとう」とか表面的なことやって、責任の所在もあいまいになって……つーのは、「帝国海軍」以来の伝統かこりゃ、とか思えてくる。
閑話休題。さて、そういった「伝統」はいつから始まってしまったのだろうか。そもそもの最初から日本海軍が事実軽視・精神主義の体質を持っていたのなら、ロシア海軍を破るというのは無理だったわけで。合理的な準備をし、勝つべくして勝つ、というのが本来の理想であり、日本海海戦の勝利はそういった現実志向が実を結んだ成果だとも言える。
しかし、このとき同時に、「伝統」の芽が吹いていた。決戦に先立って貴重な戦艦を触雷によって失ったことを隠蔽するために、いろいろゆがみがおこってくる。東郷を軍神に祭り上げるために、真実が隠蔽される。しまいには、当事者たる軍そのものが、報道のほうを真実と思いこみ始める……。この本にはそういった過程がわかりやすく書かれていて、戦争報道について考える格好の材料にもなっている。
あらたな史料の発掘で、ここまでダイナミックに「歴史」が変わるというのが実に興味深かった一冊だった。続きを読む投稿日:2014.03.30
日本海海戦の隠された真実。
実は「敵前大回頭」ではなく予定された「大転蛇」だった!
秋山真之が主張した丁字作戦を始めとする数々の作戦は悉く却下された!
すべては東郷を祭り上げるための口裏合わせだった!…
週刊誌の見出し風に書くとこんな感じ。
司馬遼太郎の「坂の上の雲」が成り立たなくなるくらいショッキングな事実のオンパレード。
結果オーライ、勝てば官軍。続きを読む投稿日:2014.09.22
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