高校生が感動した物理の授業
為近和彦(著)
/PHP新書
作品情報
運動の法則を一行で表してしまう、美しき運動方程式。電池とは「電荷」のポンプであり、別に電気が入っているわけではないことを理解するための電磁気学。アインシュタインの常識はずれな発想に驚く「光量子仮説」・・・・・・。物理学の基礎を頭に入れておきたい、でも、物理の勉強は好きになれない。そんなあなたに、ぜひ日本を代表する予備校物理講師、為近和彦先生の授業を受けてもらいたいのです。運動方程式を“和訳”する、ドップラー効果の波面を可視化する、物理学者たちの失敗など印象的なエピソードを紹介するといった手法により多くの高校生を物理に目覚めさせた名講義で、知っておきたい科学の基本がマスターできます。大人が高校課程の物理学を頭に入れるために、また物理が苦手な学生の方が物理に興味を持つために、最適の一冊です!
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商品情報
- シリーズ
- 高校生が感動した物理の授業
- 著者
- 為近和彦
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 数学・物理学・化学
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP新書
- 書籍発売日
- 2014.09.01
- Reader Store発売日
- 2015.04.17
- ファイルサイズ
- 20.4MB
- ページ数
- 288ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (4件のレビュー)
-
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-81964-8
投稿日:2016.04.02
765
為近和彦
1958年生まれ。山口県出身。東京理科大学大学院修士課程修了。私立高校教諭を経て、96年より代々木ゼミナール物理講師となる。物理学者たちの印象的なエピソードを紹介して学生の興味を喚…起し、公式の成り立ちを丁寧に“和訳”する授業で定評を得る。また、問題文からヒントを導くための「解法の必然性」を解説することを重視する。著書に『忘れてしまった高校の物理を復習する本』(中経出版)、『為近の物理ノート』シリーズ(代々木ライブラリー)などがある。
高校生が感動した物理の授業 (PHP新書)
by 為近 和彦
まず、第一に「学ぶ順序」です。 ご存知の通り、物理学には歴史があり、いきなり相対論や量子論ができたわけではありません。長い長い歴史の中で必要とされて生まれてきたのです。なぜ相対論や量子論が必要だったのかを知るためには、それらが生まれるまでの物理を知っておく必要があります。そういう学び方をしないと、何のための相対論、量子論かが見えなくなってしまい、ものの本質を見失うことになります。それまでの物理では解決できない「何か」があったからこそ新しい物理学が生まれてきたのです。その「何か」を知らずして、いきなり最先端の物理を学ぼうとしてもそれは単なる付け焼き刃的な知識だけを身につけたものになってしまいます。
第二に、物理現象に対して「当たり前でしょ!」と言わずに「どうしてかな?」と考えるようにしましょう。 もちろん、日々の生活の中でもです。物理学を学ぶ上で「当たり前」という言葉は結構邪魔になるのです。例えば、ニュートンは、リンゴが落ちるのを見て万有引力を発見した(言い伝えですが)、と言われていますが、もしニュートンが、この現象に対して「当たり前だよ」なんて言ったら物理学は始まっていないことになります。物理学を学び始めるためには、「なぜ? どうして? どうなってるの?」は必要不可欠なのです。
第三(これが最後です)に、数式を怖がらない、嫌わない、面倒くさがらない、無視しない、読み飛ばさないことです。 確かに、物理で用いる数式は 鬱陶しく、できれば避けて通りたいと思われる方は少なくありません。しかし、物理学にとって数式は言語であり、現象を正確に表現する大切なものなのです。いわゆる話し言葉では、 曖昧 さが残ります。読んだ人によって解釈が異なる場合もあります。物理ではこのようなことがあってはならないのです。そのためにも曖昧さのない言語、すなわち数式がどうしても必要となるのです。また数式は、問題解決のための道具となる場合も少なくありません。ですから、数式処理の腕を磨くことも物理を楽しむためには大切なことなのです。道具の手入れを怠ってはいけません。面倒だからといって逃げてばかりでは理解することはおろか、楽しむことなんて到底できません。料理人の修行もまずは道具の手入れから始まります。錆び付いた包丁では美味しい料理を作ることも、楽しむこともできません。ここは、覚悟を決めてください。
十五夜のススキとお団子、お餅をつくウサギ、これらは日本のすばらしい文化です。いつまでも伝えていきたいものです。しかし、あえてそれを避けて通るのが物理です。月食で月が欠けていく姿を見て、「あれは地球の影が映っているんだ」と言う、これが物理なのです。月の美しさを愛でながらも、月の姿から物理を見る。何だか格好いいではありませんか。
物体の運度を議論する上で、最初に考えなければならないことは、 「物体の位置の変化をどのように表せばよいか?」 ということです。これを正確に表現するためには、まず最初に、物体が『いつ』、『どこ』にあるのかを表さなくてはなりません。『いつ』については時計またはストップウォッチなどで知ることができますが、『どこ』はどのように表現すればよいでしょうか? ここで重要になるのが座標です。数学でおなじみの座標を用いるのが最も正確に物体の位置を表すことができるのです。この座標は、哲学者として有名なフランスのデカルトが発見したことから「デカルト座標」と呼ばれることもあります。デカルトが寝ていた部屋に、一匹のハエが入ってきたとき、デカルトは、「あのハエはどこにいると言えばいいのか?」と考え、部屋の隅を原点とする座標に気付いたという逸話が残っています。
そして、そのときの力の単位を自らの名前である[N(ニュートン)]としたのです。なんだか、強引な感じがしますが、もう少しだけ落ち着いて読み進めてくださいね。力の単位は、ニュートン以前は、[kgW(キログラム重)]という単位で、地球による重力を基準としていました。
ここで大切なのは、単に疲れたことではなく、「物体を移動させたことによる疲れの度合い」と考えなければならないことです。 どんなに力を加えても、この物体が全く動かなければ、どんなに疲れてもその仕事は0なのです。物理では、物体に力を加えて移動させたとき仕事を考えることができるのです。ですから、先に述べた「今日の仕事は疲れたなあ」の場合、荷物を運ぶ仕事で疲れたのであれば仕事は0ではありませんが、会議の連続で疲れた場合は物理学上仕事は0となります。
簡単に言えば、エネルギーとは、「仕事をする能力」のことをいいます。 仕事とは、物体を移動させるなどして、実際に何らかのことをしなければ評価されないものです。しかし、「能力」は、今実際にしなくても(例えば潜在的に持っていれば)評価されるものです。すなわち、仕事をする能力を持っていることを物理学では、「エネルギーを持っている」というのです。
占星術師でデンマーク王に仕えたティコ・ブラーエは、1576年に天体観測所を建設します。この観測所は望遠鏡のない当時としては、ずば抜けて精密に天体を観測できるもので、彼は多くの正確な観測データを残します。20年間、毎晩のように天体を観測し、彗星や新星の発見、惑星や恒星の位置の測定などを行いました。
古代ギリシャ時代の天文学から始まり、占星術師まで登場します。さらに計算処理の天才ケプラーがあらわれ、何十年にもわたって計算し続けることで膨大なデータから法則を見出しました。また、ニュートンは、その法則に基づいて、万有引力の式を見出したのです。このとき、常識では考えられない「月は地球に向かって落ちている」を実証したのです。落ち続けているのに地球にぶつからない月を想像することは天才にしかできない考え方です。
そして、その流れの中で上記に示したような円運動の様々な式が生まれ、現在の物理学を支えているのです。新幹線がスムーズにカーブを曲がれるのも、人工衛星が常に地球を見続け、GPSや気象情報を送ることが可能になったのもこれらの基礎研究があるからなのです。
日常会話の中に「熱」という言葉は頻繁に出てきます。 「今夜は熱帯夜だね!」 「熱があるからお風呂はやめておくよ」 「あの二人は熱々だね」 例を挙げだしたらきりがないほどですね。しかし、物理学で「熱」という言葉を使う以上、明確に定義する必要があります。その熱の定義を考える上で熱に関する歴史を追いかけることによりその本性を探ってみましょう。
紀元前4世紀ごろ、古代ギリシャ時代に活躍したアリストテレス(序章にも登場しています)は、この世界が4つの元素から構成されていると提唱します。その4元素とは「土」、「水」、「空気」、「火」であり、これらの元素から全ての物体ができていると考えました。現在の物理学や化学を知っている我々からすると滑稽に感じられる考え方ですが、これが、現在の周期律表の始まりでもあります。「様々な物質が、基本となる元素からできあがっている」という考え方が紀元前4世紀に確立していることは感嘆に値することではないでしょうか? この4元素のうち「火」の中に熱や光の概念が入っています。
一方、「熱の運動説」も細々ではありますが当時から考えられていました。古くから火を起こすのに、物体を擦り合わせ摩擦熱を利用する方法が使われていました。また、物体を何度も打撃すると衝突熱が発生することも知られていました。これらを根拠にして熱は物質ではなく、物質を構成する分子や原子の運動が熱なのではないかと考えられたのです。しかし、確実な成果を上げていく「熱の物質説」の前に 霞んでいたのです。
議論は少し面倒でしたが、このように明暗の縞がスクリーン上で観測されることを説明しようとすると、光は波でなくてはなりません。当時、光は粒子か? 波か? を迷っていた時代には決定的な実験だったのです。そういう意味でヤングの干渉実験は大切なのです。ちなみにヤングの本業は医者(今で言う耳鼻咽喉科が専門)で、音が聞こえることと、目でものが見えることは同じ現象なのではないかと考えていたようです。すごい発想力ですね。 また、ヤングは語学の天才でもあり、ロゼッタストーンの解読をしたことでも有名なのです。
以上より、オームの法則の正当性が示されたと同時に、導線の中の電子の動きが、落ちてくる雨滴の運動に酷似していることも示されたことになります。目に見える自然現象のアナロジーから、目に見えない現象を分析することも物理の醍醐味の一つですね。
1897年、イギリスの物理学者J.J.トムソンによって電子が発見されます。まずはその経緯からお話しましょう。 真空管の両端に高電圧をかけると紫色に光る放射線が見えます(真空放電という)。この放射線は陰極から発せられていたので「陰極線」と名付けられました。多くの物理学者たちはこの陰極線の正体が何であるかの研究に没頭します。ドイツ系の科学者の多くは、「陰極線の正体は光ではないか?」と考え、イギリス系の科学者の多くは、「陰極線の正体は電荷を持った粒子ではないか?」と考えました。
レントゲン線といえば現在の医療には欠かせないものですが、発見されたのは100年以上前の1895年なのです。ドイツの物理学者レントゲンは、多くの科学者と同様に陰極線の実験に明け暮れていました。このとき、陰極線の実験装置の陽極から写真を感光させる未知の放射線が出ていることを見つけ出します。もともと数学者だったこともありレントゲンはこの放射線を未知であるが故に「X線」と名付けました(数学者は未知数をXとおく癖があるのです)。後にX線の性質が詳しく調べられ強い透過性を持つことも見いだされました。
以上述べてきたように、ミクロの世界では我々が容易に想像できないようなことが起こっていることが次々に発見、証明されていきました。波動と粒子という互いに相反するものと考えられていたことが、波動性と粒子性という二面性(二重性)を持つと考えられるようになったのです。やはり、最初に言い出したアインシュタインは類い 希 な天才だったのでしょう。
電子の発見をしたJ.J.トムソンは、原子全体が正に帯電しており、その中に電子が存在しているのではないかと考えました。簡単に言えば、正に帯電したパンの中に、負に帯電した 葡萄 がちりばめられた葡萄パンのような模型でした。しかし、全体が正に帯電した(ここでいうパンの部分)ものが何なのかが明確ではありません。日本の長岡半太郎は、原子の中心に正に帯電した球があり、その周りを電子が回っているという長岡模型(土星型模型)を提唱し、現在考えられている形に近づきました。続きを読む投稿日:2024.04.08
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