石油の帝国
スティーブ・コール(著)
,森義雅(訳)
/ダイヤモンド社
この作品のレビュー
平均 3.7 (14件のレビュー)
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例えば、テレビ局がこの本のどれか一つの章を取り上げたとしたら、それだけで少なくとも一時間の特別番組を制作できる筈だと思う。もしそんな番組が制作されるのなら、出来ればそれを会計帳簿上の数字や組織の上に立…つ人々の視点からではなく、現場で働く者たちの視点から描いて欲しい。この本に描かれている世界の一部に身を置いて来た者としては切にそう願う。この業界が米国のみならず日本でも人々から好意を持って受け止められていないと認識しつつ、それでも国内のエネルギー供給の一助になればと思いながら、文字通り汗と泥にまみれて働いているもののことを身近に知るものとしては。オイルショックの記憶のない世代、それは居間の照明が裸電球であったことも、集合住宅の最上階に住む友達をコンクリートむき出しの階段を登って訪ねたこともない世代、更に言えばテレビに色が着いたときの感動を知らぬ世代だとも言える世代が、居心地の良い部屋のソファーでぬくぬくとテレビを観ながら好き勝手言えるのも日本にエネルギーを届けたいという気持ちがある人々がいるからなのだということを、ほんの少しでも解ってもらいたい。
もちろんジャーナリストとして対象を批判的な立場で眺め取り組むことは重要であると思う。けれど、エクソンモービルの本当の凄さは、この本の中心で描かれているテキサスやワシントンの大物たちの中だけにあるのではなく、過酷な現場で働く人々の中にこそあるのだということが、石油のことを余り知らない人々にも伝わるようにも描かれていたなら、と少し残念に思う。例えば、ダニエル・ヤーギンの「石油の世紀」は、本書以上の大部な上に取り扱っていた時代も広範囲だったけれど、視野が多角的で躍動感があり、初めての海外赴任で石油開発の前線に携わり始めた頃に読んだせいもあるが、身に沁み始めたこの業界の巨大さを噛み締めつつ、わくわくしながら読んだ記憶がある。けれど、残念ながら、本書は、これを読んでこの業界で働いてやろうと思う人々を沢山生み出すとは思えない。山崎豊子の「不毛地帯」を読んでやりがいを感じた記憶が、執拗に本書に対して批判的な感情を喚起する。
とは言え、本書のような大部の石油業界にまつわる本が出版されるということは良いことだと素直に思うし、次々とこのような本が世に出てくるアメリカという国は、やはり石油に対する一般市民の関心が高い国なのだなとも思う。日本における石油会社のイメージは実に偏っていて、今は横文字の名前の会社ばかりになった日本の石油会社だって、利益の大半はガソリンを売ることではなく、掘って探し当てた石油を生産して販売する部門が支えていることを知っている人の数は少ないだろう。例えばエクソンという会社がガソリンを売る以外に何をしている会社であるかを知る人の割合は、日本では極端に小さいだろうけれど、アメリカでは石油を生産して儲けていることはもう少し知られているからこそ、原油高の恩恵を受けている石油会社からもっと税金を取れという議論にもなるのだろう。それでもこのような啓蒙書のようなものが出版されるということは、やはり石油会社の実態というのは謎めいているものだなと改めて認識する。あからさまに言及されてはいないが、ロックフェラーという名前が喚起する陰謀めいたイメージが、拭い去り難く存在するのだろう。
確かに、エクソンという会社は昔から何か得体の知れない会社であるというのが業界での一般的な印象で、そこに働く従業員たちも決して楽しげな人々ばかりではないことも事実だと思うけれど、このスケールでプロフェショナリズムを徹底している組織が稀有であることもまた事実だと思うし、そこのところは素直に称賛されて然るべきだと思う。本書でも、ある一面での彼らの徹底ぶりは描かれているとは思うけれど、もう少し負の印象に結びつかない部分の彼らの凄さが描かれても良かったのにとも思う。もっとも、本書に描かれているエクソンモービルという恐るべき規模の会社の徹底ぶりは、想像していた以上のものであったこともまた事実だけれども。続きを読む投稿日:2015.02.02
スティーブ・コール子の著作ということで手にした本書。
中東以外全くの門外漢の私には、読み進めるのに少し時間を要してしまった。
訳者は長年石油業界に身を置いていらっしゃった方ということで、技術用語や業…界常識をふまえて訳されていたことは伝わってきた。一方で、日本語としての完成度はもう少しだったように感じられ、意図を理解するのに何回か読み直さなければいけない部分も結構あった。続きを読む投稿日:2022.05.07
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