マクドナルド 失敗の本質―賞味期限切れのビジネスモデル
小川孔輔(著)
/東洋経済新報社
作品情報
外食産業の雄・マクドナルドは永遠か? それとも賞味期限切れ寸前か? 十年追いかけてきたマーケティング業界の第一人者が徹底分析する。
【主な内容】
第1章 迷走するマクドナルド
第2章 マクドナルドはどう誕生し、世界最大の外食チェーンに成長したのか
第3章 マクドナルドのビジネスモデル
第4章 原田マクドナルドの経営改革
第5章 原田マクドナルドの戦略転換
第6章 悪夢の3年:客はどこへ消えたのか?
第7章 マクドナルドに未来はあるのか?
もっとみる
商品情報
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.5 (31件のレビュー)
-
短期的な視点の経営戦略が経営基盤を蝕んでいた
本書は、日本マクドナルドの経営上の失敗の本質を明らかにした本です。
食の安全の問題など、倫理的側面から日本マクドナルドの苦境を語るのは簡単ですが、本書ではそのようなアプローチは取らず、有価証券報告書…や、第3社機関の調査結果など、公知の情報に基づいて、経営の成否が分析されており、読み応えがあります。
タイトルにもある「賞味期限切れのビジネスモデル」とは、FCシステム(フランチャイズチェーンシステム)です。
短期的に収益をあげようとする経営戦略でFC化を進めた結果が、皮肉にも、FC経営を機能させる基盤を失ってしまい、現在の日本マクドナルドの惨状につながっていると本書では分析しています。
FC経営が機能するには、以下の3つの前提条件が必要です。
・商品の差別性
・企業理念の浸透
・現場の自律性
ところが、日本マクドナルドで藤田時代から原田時代に移行する頃に起こったことは、
・低価格路線やプロモーション一辺倒(メガマック、100円コーヒー)の経営戦略が、「米国発のおいしいハンバーガー」という商品の差別性を失わせた
・急速な店舗拡大戦略に伴う、クルーの疲弊やモチベーションの低下が、従業員満足度、顧客満足度の低下をもたらし、その結果、企業理念の浸透を現場で実行できる優秀な人材が減り、現場で自律的に働くことができる意欲的な人材も減った
であることを本書では指摘し、FC経営を機能させる3つの前提条件が失われたことを明らかにしています。
経営戦略は、短期的な視点と、中長期的な視点の複眼が必要です。
もちろん、日本マクドナルドも複眼で経営戦略を実行していたと思います。
しかし、目先の収益を重要視した短期的な視点の経営戦略が、中長期的な経営戦略を実行するための経営基盤を蝕んでいたことにどこまで気づいていたのか、いなかったのか。
続きを読む投稿日:2015.10.25
-
このレビューはネタバレを含みます
マクドナルド 失敗の本質
レビューの続きを読む
賞味期限切れのビジネスモデル
著者 小川孔輔
束洋経済新報社
2015年2月12日発行
ビジネス書の類はつまらないものが多く、読んでいる時は興味をそそられても、読み終わる…と何も残らないものがほとんど。あることで成功した経営者が他の企業の成功や失敗を自分なりに分析したり、ユダヤ人はだからえらいんだみたいな話をしたり。
この本もタイトルだけ見るとそんな本に見えるが、法政大学経営大学院教授でマーケティングの専門家である著者が、マクドナルドがなぜいまピンチなのか、そして未来はあるかについて分析している。
ご存じのように、日本マクドナルドは2014年12月期、上場以来初の赤字で最終損益は218億円、今年は380億円の赤字が見込まれている。そして、米国マクドナルドもまたピンチで、著者の予想では2015年暮れにも深刻な経営危機を迎えそうだとのことである。
さて、この本の前提は下記の通り。
・マクドナルドの現役関係者へのインタビューを意識的に行わなかった。
・執筆のための情報は、一般に公開されている資料とデータに限定。
・マクドナルドに関して議論するときに取り上げられる「倫理的な問題」については、主要な論点としては、原則取り上げないことにした。
著者の視点の秀逸さは、日本マクドナルドを創業した藤田田氏が社長だった最後の10年間、1993年~2002年と、その後、V字回復させてまたダメにした原田泳幸CEOの10年間、2004年~2013年を比較している点。売上グラフを見ると、見事に一致、同じ曲線を描いているのである。どんどんと売上が伸び、8年目にピークを迎え、9年目10年目ですとんと落ちてダメになっている。
では、二人は同じ轍を踏んだかというとそうではない。むしろ対照的だったと分析している。マクドナルドは米国流のマニュアルがびしっと整い、それに厳格に従いながら経営しているように思うが、藤田氏は日本流を取り入れてきた。雇用にしても、フランチャイジー(FC)にしても。FCオーナーと契約を交わす際に、相手によって契約内容を変えていたことが知られているそうだ。一説によると、少なくとも67種類のパターンがあったとのこと。
藤田氏は最後の10年、平日ハンバーガー65円などディスカウント路線と拡大路線で成功し、デフレの勝ち組と言われた。しかし、ディスカウントによるブランド力低下と2001年のBSEさわぎで息の根が止まってしまった。
アップル出身の原田氏は対照的に米国流を推し進め、QSC(品質、サービス、清潔度)の回復を図ることからスタート。店舗改装してMFUという設備で作り置きせずに手早くハンバーガーが作れるようにし、品質の向上とともに作り置きによるロスを減らした。そして、直営をFCへと変えていった。マクドナルドのFCは、土地や店舗をマクドナルドが買ったり借りたりし、それをFCへ再リースする方式。賃料は歩合制でFC売上高の8.5%。これに、3%のロイヤルテイが上乗せされる。ハンバーガー事業と並び、このファイナンス事業が大きな柱で一番多い時には全体の80%だった直営店を次々にFC化していけば、その分、ぐっとファイナンス事業で収益を上げることができる。
また、プロモーションと新製品投入で売上は伸びていった。
しかし、緩やかな値上げでお値打ち感がなくなり、コンビニなど新たな敵の出現もあって急速に勢いをなくし、レジ前メニュー表の撤去や砂時計を使いビッグマックを出すのに1分以上かかったら無料券を配るという悪あがきも実らず、原田辞任。次のカサノバ氏が就任すると鶏肉期限切れ問題が起きて大きな赤字に。
著者は藤田、原田両氏の失敗の原因を共通のものと分析する。
①マーケティングの失敗
②サービスのトライアングルの崩壊
③画期的なイノベーションの不足
①は値下げや新商品投入など小手先のマーケティングに注力しすぎた。②は企業、従業員、顧客の三者がつくるトライアングルが崩れてしまったということ。そして最も深刻な③は米国で創業してから約60年間、抜本的なイノベーションは起こらず、いまやマクドナルドのFCシステムは、古びたモデルになっている。それを目先の価格やプロモーション戦略で切り抜けようとした点。
つまり、マクドナルドの商売は日本もアメリカも賞味期限切れだということだろう。
マクドナルド、もしかしてビジネスとしてもう終わっているのかもしれない。マクドナルドに興味のない私などは、そういう分析を読んでも興味がわかない。もちろん、若い頃は行ったことがある。しかし、私にとって、マクドナルドそのものが何年も前に既に終わっている。
ちょっと興味深い話。
藤田田氏は銀座に1号店を出し、翌年には日商222万円を記録して売上高で世界新記録を達成。その後、順調にビジネスをのばして成功し、自らを「銀座のユダヤ商人」と豪語して「拝金主義者」と思われていた。
ところが、成功して50才も過ぎているのに、新聞配達をしていた。「銀座界隈の100軒ほどに新聞配達をしているよ」とある人に打ち明けたという。実は、新聞配達で得た現金は、そのまま封を切らずに、知り合いの交通遺児に渡していたという。
藤田氏は実は善人だったのではないか、とも言われている。続きを読む投稿日:2021.03.17
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。