人と企業はどこで間違えるのか?
John Brooks(著)
,須川綾子(訳)
/ダイヤモンド社
作品情報
ビル・ゲイツとウォーレン・バフェットがともに最高のビジネス書と絶賛した知られざる古典。フォード、GE、ゼロックスなどの経営者たち、ウォール街のブローカー、引退後のビジネスマンなどの10の物語を通して、彼らがその人生やビジネスにおいて「どこで間違えたのか(あるいは間違えなかったのか)」を明らかにする。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 人と企業はどこで間違えるのか?
- 著者
- John Brooks, 須川綾子
- 出版社
- ダイヤモンド社
- 書籍発売日
- 2014.12.18
- Reader Store発売日
- 2015.01.05
- ファイルサイズ
- 1.7MB
- ページ数
- 368ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.4 (30件のレビュー)
-
ウォーレン・バフェットがビル・ゲイツに贈り、ゲイツが「最高の教科書」と称賛した書籍。米国の名だたる大企業・老舗企業・経営者が犯した過ちについて、冷静に淡々と描いている。ほとんどのストーリーが1950年…代から1960年代のものであり、誰もが教訓として知っているはずであるが、なぜか我々は同じ過ちを繰り返す。その本質は「不都合な事実に気づかないふりをすること」「自己中心的に物事を判断すること」の2点に集約されると感じた。続きを読む
投稿日:2015.04.09
訳者あとがき
本書は一九五九年から六九年にかけて執筆されたエッセイのアンソロジーである。二〇一四年の夏になってビル・ゲイツ氏が「最高のビジネス書」として紹介し、しかもウォーレン・バフェット氏から二…〇年以上前に借りて、それ以来何度も読み返している本であるというエピソードがついたことで大きな注目を集めた作品だ。
著者ジョン・ブルックス氏は一九二〇年にニューヨークに生まれ、一九九三年にこの世を去っている。プリンストン大学を卒業後、第二次世界大戦で陸軍の通信部隊に勤務したのち「タイム』誌の編集者の仕事に就いた。その後、優れたルポルタージュや短編小説を掲載することで定評のある『ニューヨーカー』誌のスタッフライターとなり、ストーリーテラーとしての腕に磨きをかけた。一九二九年の大恐慌、六〇年代の黄金期、八〇年代のM&Aブームなどをテーマに多数のノンフィクション作品といくつかの小説作品を残している。
本書の各章で取り上げられているのは、いずれもアメリカ経済史の転機となるような出来事だ。株価大暴落、不祥事、法廷闘争、マーケティングの失敗例といった史実に関する記録だが、四〇年以上の時を経ても、それぞれの物語に時代を超えた普遍性が見られるのは驚くべきことである。たとえば第5章「コミュニケーション不全」では、一九五〇年代の価格カルテルについて、経営トップらが「何も知らなかった」と言い切ることの理不尽さが浮き彫りになる。この章を読むと、全米第七位の売上総額を達成しながら二〇〇一年にあっけなく倒産したエンロンの粉飾決算事件を思い出す。創業者からCEOの職を引き継いだジェフ・スキリング氏は社内弁護士による粉飾に関する報告を受けたとき、問題は対処済みとの説明に安堵し、「われわれは雪のように潔白なんだな」と応じたという。真実から目を背け、正しい道を選ぶ機会を逃した姿は本書の人物たち酷似している。
第4章「もう一つの大事件」は、倒産の淵にあった証券会社の一般顧客を守るため、ニューヨーク証券取引所の旗振りのもとで金融機関が一致団結するという、一九六三年の手に汗握る物語だ。結末はほとんど正反対だが、二〇〇八年九月のリーマンブラザーズ破綻期と重なる。二〇〇八年のケースでは、ヘンリー・ポールソン財務長官の仲介のもとでウォール街の重鎮たちが綱渡りの交渉を重ねたが、民間資金によるリーマン救済は実現しなかった。結局のところ、金融市場の安定化のため巨額の公的資金の投入を余儀なくされたことは記憶に新しい。さまざまな意味で現在と過去に思いを馳せずにはいられない。
本書の素晴らしい点は、半世紀近くたったいま読んでも、単に歴史的事実の記録にとどまらず、それぞれの出来事の裏側にある人間的な側面が鮮やかに伝わってくることにある。著者は丁寧に取材を重ね、成功と失敗の物語に隠された苦悩や葛藤に斬り込み、また一方で、有能であるはずの各界のリーダーたちがどうして道を誤ったのか多くの示唆を与えてくれる。ブルックス氏の文章はあくまでも抑制されたものであり、お説教めいたことを書き連ねたり、声高に何かを主張したりするわけではない。登場人物たちの心の機微を感じ取るのは読者の役割であり、それが本書を読むことの一つの醍醐味にもなっているように思う。
また、時代を経た作品であるがゆえの楽しみとして、一九五〇年代から六〇年代にかけての視点に立った著者が折に触れて、「未来の社会」について示唆しているのが興味深い。なかでも、第3章「ゼロックス、ゼロックス、ゼロックス、ゼロックス」にある「六〇年代後半に未来の図書館にもっとも近づいていたのは、ゼロックス傘下のユニバーシティ・マイクロフィルムズだ」という一文は印象的だ。私たちはすでに、デジタル技術により世界中の情報を手元に手繰り寄せることができる時代にいる。一九六〇年代、急成長期にあったゼロックス社はコピー機市場での競争優位は永続しないと判断し、異業種に参入する先見性を持っていた。ところが七〇年代以降、同社はパロアルト研究所でコンピューターのグラフィカル・インターフェースやマウスを開発しながらその果実を手にすることなく、アップルやマイクロソフト、IBMに豊かな市場を明け渡した。高い企業倫理と好業績のなかでも自戒するバランス感覚を備えた組織さえ、安泰ではないのがビジネスの世界なのだろう。
本書には個性的な人物が続々と登場するが、なかでも異彩を放っているのが第6章「最後の買占め」の主人公であるクラレンス・ソーンダーズだ。伝説の相場師リヴァモアを引き込んでウォール街に勝負を挑んだ逸話はそれだけでもドラマチックだが、事業家ソーンダーズが描いた未来図は革新的なアイディアに満ちている。彼は晩年にKeedoozle(キードゥーズル)という実験的全自動式スーパーを立ち上げているが、その名は"key does all" (鍵一つで買い物ができる)
に由来すると言われる。時代が少しちがったら、彼こそがワン・クリックのオンライン・ショッ ピングモール第一号を創業していたのではないか。そんな想像をしながら本書を読み進めるの もじつに楽しい。
時代は変わる。しかし、人間の本質はそれほど変わらない。ブルックス氏は一七世紀のユダヤ人商人の著作を引用したり、シェイクスピアをはじめとするエリザベス朝演劇のモチーフを引き合いに出したりしているが、そんなところにも人の普遍性を見つめる著者の姿勢が表れているように思われる。本書に記された歴史的な成功や失敗の経験には、ビジネスという冒険に踏み出す誰にとっても貴重な教訓があるはずだ。本書はこのめまぐるしい現代においてしばし立ち止まり、よりよい方向に進路を取るための助けになるのではないだろうか。
なお、原書は『ニューヨーカー』誌に掲載されたエッセイを編纂した一二の物語から構成されているが、アメリカ連邦税法、および金本位制をテーマとした二つの章を割愛し、「一〇の物語」としたことをお断りしておく。
最後に、本書に出会うことができたのはダイヤモンド社の横田大樹氏のおかげである。横田氏とのやりとりのなかで本書への理解を深められたことはかけがえのない経験だった。この場をお借りして心よりお礼申し上げます。続きを読む投稿日:2023.07.08
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。