海洋資源大国めざす日本プロジェクト! 海底油田探査とメタンハイドレートの実力
石川憲二(著)
/角川SSC新書
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日本は、長いあいだ「資源小国」を自認してきた。だが、状況は変わりつつある。それは、現在の石油埋蔵量1位の国がベネズエラであることからも見て取れるだろう。中東ではなく南米の国がもっとも石油を埋蔵している事実は、これまで取り出せなかった石油が取り出せるようになったことを示している。すべては技術の進歩。探査から採掘まで、資源開発の技術が格段に進化したのである。本書は、こうした技術が日本にも影響を与えている様子を記していく。これまで探し出せなかった海底深くに眠る石油を探せるようになり、島国日本は国をあげてのプロジェクトをいくつも進めているのだ。それは、石油だけでなく、天然ガス、そしてメタンハイドレートなどにも及ぶ。果たして、日本は資源大国になれるのか。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (1件のレビュー)
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地理や歴史の授業を受けた高校時代から30年以上経過し、当時学習したことの多くが陳腐になってきているのを感じるこの頃です。近い将来そうなるだろうと私が願っている一つに「日本にはエネルギー資源がない!」と…いうことがあります。
石炭はまだ眠っているようですが、石油やそれに代わるとされるメタンハイドレードがもしかしたら大量に日本近海にあるかもしれませんね。エネルギーを自国で取り出す技術を持っている国にとっては、エネルギー資源を持つことは、良い意味でのデフレ(生産コストの低減による物価低下)につながり、革命的なことです。
10年以内にそうなるだろうと言われているのが、今、シェールガス・オイルで盛り上がっているアメリカです。エネルギーを大量に使用してよい生活をして寿命を延ばしてきた人間にはエネルギーが、それも安価なエネルギーが必要なようです。
無駄使いは良くないと思いますが、自然から恵まれたエネルギーを上手に使って多くの人が幸せを感じられる世の中になってほしいものです。
私が生きている間にメタンハイドレードが日本のメインのエネルギーになっていることを、また、できれば東京五輪(2020)までに実用化への目途が付いていればいいなと、この本を読んで思いました。
以下は気になったポイントです。
・日本の国内エネルギーの自給率@2010は、4.8%(水力:32、地熱等:17、廃棄物等:31、天然ガス:16、石油:3.5、石炭:ゼロ)である(p9)
・ドイツが日本より高いエネルギー自給率(30%)は、国内産の石炭を火力発電で使っているから、風力・太陽光発電の効果は微々たるもの(p12)
・2013.4-7にかけて新潟県佐渡島沖で行われた海底油田の試掘調査は、中東の中規模並みの油田がある可能性を示した(p15)
・掘削船「ちきゅう」の最終目標は、地球内部のマントルまで到達すること、これは月面到達に匹敵するほどの科学史な快挙になる、「ちきゅう」の建造費は2隻で600億円、イージス艦の約半分(p34)
・メタンハイドレードは水の分子が集まってつくる籠のような構造のなかにメタン分子が1つずつ閉じ込められている物質、氷ではなく、包接水和物(ハイドレード)である(p38)
・加熱法では、吸熱反応のため作業中に熱が奪われて生産効率が落ちるので、2009年からは海洋における減圧法に取り組んだ、そして2013.3に南海トラフからの海洋産出試験に成功した(p44)
・日本周辺にメタンハイドレードがあることは十分に考えられるが、同じような条件の海域は世界中にいくらでもあるので、日本だけが特別ではない(p52)
・商業生産のための開発プロジェクト開始が2024年からなので、私たちが使えるようになるのはさらに10年後の 2030年以降だろう(p57)
・亜炭、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭、無煙炭の順に石炭化の進行度合いがあり黒くなっていく、無煙炭は燃焼時の匂いが少ないという特性があるものの、既発分も失っていて着火性が悪く燃料としては使い勝手がよくない、瀝青炭あたりが良い(p69)
・化石燃料の生成チャート(p73)
・石油可採年数の推移をみると、1980-2006年までは中東が圧倒的に有利であったが、最近は、中南米が中東を抜いている、ベネズエラのオリノコタールが改質技術により原油と同様に利用可能となったため、またブラジルも深海技術を開発してサウジアラビアの生産量を2020年には抜く可
能性あり(p87)
・大水深部にはまだまだ石油、ガスがある、世界全体で600フィールドが発見されている(p91)
・日本の南関東ガス田の地下水にはヨウ素が多く含まれていて、日本のヨウ素生産は世界第二位(p98)
・アメリカ政府が天然ガス輸出に慎重になっていたのは、通常、20年近い長期にわたる取引が一般的だから、一度締結すると供給義務が発生する(p101)
・突如としてシェールガスが産出されるようになったのは、1)水平抗井掘削、2)水圧破砕、3)貯留層評価、による(p104)
・人工的に発生させた亀裂を維持するために、シェール層に圧入する流体(プロパント)には、600種類近い化学物質が混入していて、これがノウハウとなっている、日本のクレハが開発したPGA樹脂が使われているらしい(p106)
・シェールオイルの生産は、プロパントに必要な添加剤をオイルに適したものに代えるという改良はしたが、基本的にはシェールガスと同じ方法で可能となった(p109)
・オイルサンドや海底油田からの石油の生産コストが1バレル40-70ドルなんで、原油価格は現在の1ドル100ドル水準となった(p118)
・天然ガスを大量に利用できるのは、経済力のある先進国くらい、そのなかでもお金をかけてまで購入する国は日本など数か国に限られる、買えない国にとってはシェールガス革命はまったく意味なし(p127)
・静岡県から長野県を通って、新潟県沖に抜ける中央地溝帯(フォッサマグナ)が北米プレート、ユーラシアプレートの境界、そのラインに沿って多くの油・ガス田が開発されてきた(p174)
2013年9月22日作成続きを読む投稿日:2013.09.22
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