仕事を通して人が成長する会社
中沢孝夫(著)
/PHP新書
作品情報
「間に合わない人(あまり役に立たない人)」を雇って、みんなきちんと働いて辞めない「安田蒲鉾」。信頼関係で技術革新の荒波を常に切り抜ける「IAM電子」。八ミクロンの紙に型抜きする技術を誇る「丸伸製作所」の社長は、四十を過ぎてから数学を勉強し直し、マシニングをマスターした。本書に登場するのは、そんな無名の会社の普通の人たちである。ただ彼らには、仕事を通して身につけたたしかな哲学がある。それこそが彼らの成長の証なのだ。仕事の本質を見つめ続ける著者がつむぐ、ノンエリートたちの物語。
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商品情報
- シリーズ
- 仕事を通して人が成長する会社
- 著者
- 中沢孝夫
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP新書
- 書籍発売日
- 2010.09.15
- Reader Store発売日
- 2014.02.07
- ファイルサイズ
- 6.1MB
- ページ数
- 224ページ
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この作品のレビュー
平均 2.0 (4件のレビュー)
-
本日の一冊は、数多くの新聞や雑誌に20年以上書評を寄稿している
書評の名手、中沢孝夫さんによる、注目の新刊です。
著者は、高校卒業後、郵便局勤務から全逓本部を経て、立教大学法
学部を卒業したという、…いわばノンエリート。
本書は、そんなノンエリートの著者が、「無名の会社の普通の人た
ち」を紹介しながら、仕事の意義や本質を述べた一冊です。
長年、たくさんの本を読んでいると、著者がテーマやターゲットに
どれだけ愛情を持って書いているか、自ずとわかるようになるもの
ですが、本書はそういう意味でじつに「あたたかい」一冊。
「雇用問題の責任の半分は社員にある」と厳しいことを言いながら
も、その社員が希望を持って働けるように、社員から中小企業の社
長になった人物を紹介。
彼らの事例を読み、言葉に触れることで、「仕事を通して人が成長
する」とはどういうことなのか、それを実現させるために会社は何
をなすべきか、おぼろげながら見えてくるはずです。
創業200年の老舗企業から、海外進出して成功した企業、リーマン・
ショック後も二桁の売上上昇を記録している蒲鉾会社まで、さまざ
まな企業が取り上げられています。
筆者は日本は良い国だと思っている。なぜなら本書に登場する人た
ちのように、努力をする人たちが幸せになれるからである
「昔はよかった」と断言できる人は、例外的なエリートである。十
年前も二十年前も、そして三十年前も多数派は恵まれてはいなかった
仕事というものは、「信頼」によって成り立っている。特に「取引
(先)」という、長期にわたって築かれる「顔の見える関係」は、
「強欲」とは異なった「倫理性」が育てられるといってもよい。相
手の期待を裏切ってはならないのだ
「一〇代・二〇代で名を残す名アーティスト、名選手は多い。しか
し一〇代、二〇代で名を馳せた経営者はいない」(江副浩正氏)
これまでできなかったことができるようになると、人は新しい領域
に立つことになる
職場には「困った人」がたくさんいるのである。成長意欲がない。
人の足を引っ張る。人を苛める。みんなでもう少し頑張れば終わる
仕事なのに、いつも一人だけ先に帰ってしまう。突然休む……
「人を大切にする」ということが、「どんな人間の存在も肯定する」
ということであるなら、企業は存続できないだろう
経営者たちと話しているとき、筆者は「経営とは心のなかで鬼を一
匹飼うことである」といつも思っている。九九%の人間を助けるた
めに、一%の人間を「斬る」ことがやはりある。そうでなければ経
営は継続できない
自分の職業人生を好運だったと語れる人間は幸福である
「空洞化」は事実ではなかった。海外への進出を早く進めた企業ほ
ど、日本国内での成長をもたらしたのである
「位の小さな商い」は、まず第一に大資本が参入しない。手っ取り
早く利益につながらないからである
ヒットするものは、これまで世の中になかったもの
時代の変化に対応して、次々と社会に必要とされるものを送り出す
ということは、「企業として生命力をもっている」ということである
良い職場というのは、異質な人間でもいられるところである
取引先が一社あるいは数社だと営業は楽だし開発の対象も決まりや
すい。しかし崩れるときも一蓮托生である
人が働く上で最も大切なことは、「達成感」と「他者による評価」
はじめに 仕事を通して成長すること
序 章 普通の人の物語から学ぶ
第一章 「あと五年、タイにいたい」─ソーデナガノ
第二章 なぜ工場では険悪な顔に出会わないのか─江崎工業
第三章 目標は社長を一〇人生むこと─横浜商工
第四章 世界発信に必要なのは地域性─ボストンクラブ
第五章 海外進出が日本の雇用を守る─東海化成
第六章 地場産業×趣味=高付加価値─シアターハウス
第七章 「頼まれた人」を雇って、みんな辞めない─安田蒲鉾
第八章 本当に社員が幸せな会社─幸伸食品
第九章 技術革新の荒波を、常に乗り越えてゆく─IAM電子
第十章 八ミクロンの紙に型抜きする技術力─丸伸製作所
第十一章 中小企業で働くということ続きを読む投稿日:2010.10.05
本書は、「若者の仕事と生き方」に多くの示唆を与えてくれる本だと思うが、本書の視点は、あくまでもポジテブである。
「努力とその努力が報われる良い国である日本」。調査に基づく「企業経営やそこに働く人た…ちの物語」。「中小企業の現場と人の成長物語」等々。
全て実話なのだから説得力はあるが、果たしてこれは、現実の一面に過ぎないのか、それとも著者が言うように「普遍性」がある実態なのか。
本書で語られるように「普遍性」があるならば、日本企業の海外展開による製造業の空洞化は懸念するに及ばずということになる。
おそらく、本書での「人の成長物語」も一時世間を騒がせた「ネットカフェ難民」ともに実態の一面なのだろう。
ただ、政治としては、たとえ一面だろうとも「就職氷河期」の懸念がある以上、対策を講ずるのは当たり前だし、就職する若者としては、「人の成長物語」を期待し、その心構えを持つ必要があるのも当然と思える。
本書は、製造業の川下の中小企業で何が起きているのかの実態を知ることができる点と、満ち足りた少年・少女時代を卒業したあとの若者が何を目指すべきかを考察できる良書であると思う。
しかし、最終章の「中小企業で働くということ」では、大手企業と非正規社員や中小企業の社員の実態について、「賃金格差はリーズナブルなもの」として、一般に言われているよりも格差は少ないかのようにデータを駆使して主張しているが、どうもこれは納得がいかない思いがした。
筆者の手法は、徹底した実地調査にあると思うが、本書では、個別・個人の視点と社会学的視点が混同しているように思える。
若者が努力する姿は美しいと思うが、それはそれとして企業格差は厳然として存在するのではないだろうか。
「仕事を通して人が成長する会社」は、確かに数多くあるかと思うが、その中で成長し、成功したのは数少ない人間だけかもしれないし、取材は、成長して結果を残した有名な人物のみになされるのだから、本書の、すべての若者が成長できるかのような考察は、「夢」を追う物語としてならばともかく、ちょっと言い過ぎのような思いも持った。続きを読む投稿日:2012.07.04
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