恋か友情か
富島健夫(著)
/光文社文庫
作品情報
高校1年といっても、まだ幼い体つきの千代は、将来、出産できないのではないかと悩んでいた。そのことを相談された強は、思案したすえ、「実験してみようか?」と言った。千代の返事はイエスでもノーでもない。だが、そのときから、幼なじみの二人は、異性として互いを意識しはじめた・・・・・・。誰もが体験した思春期のセックスを、瑞々(みずみず)しく描いた名作!
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この作品のレビュー
平均 3.5 (2件のレビュー)
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最高賛辞として――本作は、日本の貴重な遺産です
読後の第一印象を記すと、シンプルなタイトルに、千万言の大演説に勝る感動を得た。歴史的傑作というわけではない。ただ、久々に翌日を捨ててでも夜更かししたくなる美しい作品と出会った。
どだい、10年生まれが…遅かったために、青春時代に遭遇しなかった作家である。かえってそれが良かったのかもしれない。自分が、あるいはもっといえば、近代の日本が失ってしまった大切なものを見事なまでに描いている。明日から和装に下駄を履いて出かけたくなった。
たとえば、下駄の音にも人それぞれの癖があり、カロンコロンと耳にしただけで愛しの君が近づいてきたのが分かるのだという。そんな素敵な光景は、長らく目にしていない。
昭和を生きた伝説の作家である。作家としての後期に執筆された官能分野の遺作が多いなか、本作のような青春小説の書き手としても知られていたという。
僭越ながら考察すると、本作を現代文学賞に出稿したら一次選考さえ通らないのではないか。コテコテの青春が発露する描写は、ありきたりと評されるだろうし、現代では禁忌に近い構成を伴っている。作者が物語中に何回も登場し、自叙伝混じりに物語が進行していくのだ。最初は、大きな違和感があったし、この作家は文学の作法も知らないのか、と訝しんだ。
――途中で悟った。この変則的ともいえる文体、構成がいいのだ。視点を変えれば、エッセイとして読める。そして、エッセイとして読むと、不思議なくらい共感が生まれてくる。
察するに、作者が、終戦時に朝鮮半島で生き別れになってしまったという初恋の女性が健在だったら、という前提で執筆されたのではないか。すなわち、彼女へのオマージュとして記されたもの……。そんな深い情愛を感じずにはいられないのである。
――もしも表紙画やタイトルに惹かれるものがあったら、お薦めしたい。貴方の中に本作を渇望しているサムシングが眠っている証左である。続きを読む投稿日:2014.02.10
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高校1年生の竹内強は、幼なじみの谷口千代という少女にほのかな恋心をいだいており、千代もまた彼に思慕を寄せていますが、二人ともそうした自分たちの気持ちをすなおに現わすにはいたっていません。
強は、同級…生の佐藤一元の妹である佐藤佳子という中学生の少女からモーションをかけられます。また彼は、プレイボーイの大垣康安と彼に一途な想いを寄せている青井美津という少女の関係に巻き込まれることになります。さらに千代は、私立高校に通う福山という男から一方的に恋人だといわれてしまいます。強と千代の二人はそうしたエピソードを経て、青少年らしい淡い恋愛関係をはぐくんでいくことになります。
語り手である著者自身がところどころで、若い読者に説教をしているような調子で意見をさしはさむスタイルで書かれているのですが、物語のスムーズな展開をさまたげているように感じてしまいます。続きを読む投稿日:2018.10.18
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